<第十二足>お弁当は個性の象徴
昼休み。
キーンコーンカーンコーン──。
昼休みのチャイムが鳴る。
「夢玖ちゃん!」
突然、仁愛に手を引かれた。
「愛ちゃーん! 夢玖ちゃん連れてきたよ!」
「ちょ、ちょっと……仁愛ちゃんっ」
連れて来られたのは、四階の空き教室。
中には愛先生と、一人の女子生徒が待っていた。
「夢玖ちゃんだよね?私、影食夜海。よろしくね」
茶色いロングヘアに、澄んだ銀色の瞳。
どこか大人びた雰囲気に、思わず見とれてしまう。
「まあまあ、みんな座って」
愛先生に促され、四人で机を囲んだ。
それぞれがお弁当を広げる。
「あれ?」
仁愛が目を丸くした。
「夢玖ちゃんと愛ちゃん、お弁当一緒!」
私も隣を見る。
確かに、おかずもおにぎりもほとんど同じだった。
愛先生は少し照れくさそうに笑う。
「実はね、夢玖ちゃんは今、私たち家族と一緒に暮らしてるの」
「えぇっ!?」
仁愛と夜海が同時に声を上げる。
「事情があって大阪から転校してきたの。今は煌星家の家族として生活してるのよ」
「そうだったんだ……」
夜海は優しく微笑んだ。
「夢玖ちゃん、大変だったね」
私は少し照れながら笑う。
「……色々あってん」
それ以上は聞かれなかった。
その優しさが、少し嬉しかった。
「それにしても愛ちゃん、お弁当ストイックだね」
夜海が笑う。
愛先生のお弁当には、
ゆで卵、皮なし鶏胸肉、ブロッコリー、人参とほうれん草の胡麻和え、トマト、チーズと塩昆布のおにぎりが綺麗に並んでいた。
「肌も身体も食べた物から作られるもの。栄養バランス第一よ」
「さすが愛ちゃんだぁ」
「妹の方が料理上手なの」
仁愛が感心したように頷く。
私は思わず聞いた。
「学校では先生やけど……家では、お姉ちゃん?」
愛先生は優しく笑う。
「学校では先生。家ではお姉ちゃん。それでお願いね」
「うん」
仁愛が首をかしげる。
「そういえば愛ちゃんって妹いたんだ?」
「えぇ。一つ下で、看護学生をしてる舞姫っていうの」
愛先生は嬉しそうに続ける。
「料理が上手で、とっても優しくて、本当に自慢の妹なの」
その熱量に、
私たちは思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
「仲良しなんやなぁ」
「もちろん!」
愛先生は胸を張った。
「夢玖ちゃんも、今では私の大切な妹よ」
その言葉に、胸が少しだけ温かくなる。
「さて、今度は二人のお弁当も見せて?」
まずは夜海。
蓋を開けると、
だし巻き玉子、枝豆、唐揚げ、竹輪の磯辺揚げ。
どこか居酒屋を思わせるようなおかずが並んでいた。
「夜海ちゃんのお弁当、お酒に合いそう……」
「ふふっ、よく言われる」
夜海は少し照れながら笑う。
「実は私ね、二年間休学してたの。だからみんなより二つ年上なんだ」
「そうやったんや……」
「最近ようやく復学できたの」
夜海は穏やかに微笑んだ。
続いて仁愛。
「じゃーん♡」
勢いよく蓋を開けた瞬間──
「……っ!?」
思わず目を見開く。
真っ赤……いや、黒い。
麻婆豆腐一面に、黒く染まるほど大量の唐辛子がかかっていた。
「仁愛ちゃん……それ、お弁当?」
「麻婆豆腐だよ♡」
「辛そうとかいう次元ちゃうやん!」
思わずツッコミが出る。
「全然平気♡ むしろもっと辛くてもいいくらい」
「仁愛ちゃん、大の激辛好きなのよ」
愛先生が苦笑する。
私は仁愛のお弁当と本人を交互に見た。
「……嘘やろ」
教室に笑い声が広がる。
気付けば、昼休みが始まる前まで感じていた不安は、少しだけ小さくなっていた。
この人たちとなら。
もしかしたら──
高校生活も、悪くないのかもしれない。
……To be continued
第十二足(第十二話)を読んでくださりありがとうございます。
今回から、新しいキャラクター二人が登場しました。
あと三話ぐらい夢玖達の高校生活を書いてから、夢玖のアルバイトな一面をお見せしようと思っておりますので、引き続き応援頂けますと幸いです!
それでは次回またお会いしましょう。




