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オル・トア ―精霊の往く先―  作者: 流留架
蒼の季 初夏 ―陽の街―
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蒼の季-26.都下

 見事に澄んで高くなった空は、降る陽射しをそのまま届ける。

 雲すらもないのが、少し恨めしくなるくらいだ。


 

 昨日の会議で、今後しばらくは忙しくなることを痛感した。

 離れを空けることも多くなるだろう。


 ずっと気にかかっているのは、フェンのことだった。

 森にいる間は何をするにもずっと一緒で、常に隣にフェンがいた。

 ルティナにとってフェンが唯一だったように、フェンにもそれは同じだと思う。


 会議が終わり、今後のことを冷静に考えると、一番に浮かんだのがフェンのことだった。

 勝手な都合で王都に連れて来て、一緒にいられない時間ばかりが増えていく。

 離れの厩でひとり過ごすフェンを考えると、どうにも心が落ち着かない。


 それをレイランに話したのが、昨日の帰り道だ。

 彼は、昼間はリズやアウリスと同じ場所に連れて来たらどうかと言ってくれた。

 ルティナにとっては、それは何よりも安心できる提案だった。



 離れから本邸を挟んだ反対側に、アベリス家の厩がある。

 肌に熱を感じながら、整えられた緑の芝を歩く。

 離れから厩まで、庭の中だけのほんの短い散歩だ。

 それだけの時間でも、隣を歩くフェンは嬉しそうだ。



「おはようございます」


 厩で待っていてくれたのはセラだ。

 朝に平原へ水やりに行き、離れで朝食を済ませた後、フェンを厩へ連れてくる。

 これが、これからしばらくの朝になりそうだ。


「フェン、夕方に迎えに来るからね」


 小さく鼻を鳴らし、セラに連れられて奥へ入っていく。

 アベリスの厩は、10頭ほどが過ごせる大きさだ。

 一番奥にリズ、その向かいにはアウリスがいる。

 リズの隣が、フェンの過ごす定位置になるようだ。


 フェンは2頭に視線を向けながら、ゆっくりとそこに入った。

 落ち着かないのはリズの方だ。

 リズにとっては久しぶりのフェンとの時間だ。

 間に柵があるのが気に入らないのか、身を乗り出そうとしている。

 フェンはそれを鼻先で受けて、リズをなだめているように見える。

 大人になったものだ。



「この後、ナヴァン様とお話し合い。その後に、都下の治療院などをご覧いただきたいとのことです。今日は一日、ミオル様もご一緒です」


 セラはどうやら、レスティアとの連絡係も兼ねるようだ。

 レスティアが優先度の高い予定を余裕を持って組み、空いた時間は今まで通り自由に過ごす。

 詰め込み過ぎて息苦しくならないように、しっかり楽しんで過ごして欲しいと、ナーシャからも釘を刺された。


 どうやら2人は、もうルティナのことを理解しているようだ。

 先日の会議で、ナーシャがレスティアを紹介したのも、このためだったのではないだろうか。


 レスティアは王家を含む内部の調整役……といった役割なのかもしれない。

 確かに、適任だ。

 ユアンの兄弟たち全員に会って思うのは、みんな個性が強いということだ。


 アルヴィンは、大きく方向を決める。

 その力はとても強く、少し動きが進み過ぎる気配がする。

 

 ウィランは言うまでもなく、あの気質だ。

 

 ナヴァンは、アルデニアを実際に動かす立場にいる人だろう。

 レスティアが“忙しすぎる”という言葉を使っていたあたり、相当な仕事を抱えていそうだ。


 ユアンはアベリスにいるが、実際の役割は王家と半々の立場だそうだ。

 忙しすぎるナヴァンと一緒に、この国を動かす側にいる。


 そんな人だと知っても、あまり実感がない。

 一緒に森で過ごした時間のせいかもしれない。

 ルティナにとって、ユアンはユアンでしかなかった。


 その考えを改めるべきかもしれないと、会議に参加しながら思ったのは事実だ。




 セラに付き添われて王城の敷地へ入り、右側に逸れて実務区画へと向かう。

 実務区画への入口は、正面入り口とは別に用意されていた。

 先日訪れたウィランの研究棟は、ここから更に奥にある。

 実質、この国を動かしているものは、王城の右側に集まっているのかもしれない。


 入口には、出迎えが待っていた。

 ナヴァンの後ろに控えていた、足音の軽い笑顔の人だ。

 名前は……思い出せない。


「ルティナ様、ご足労いただき感謝いたします。ナヴァン様のお側におります、ディノと申します」


 美しい翡翠色の髪と瞳が、この人の静かな軽やかさを象徴している。

 ロイと同じくらい若い。

 ナヴァンの後ろで、ずっと淡い笑顔だったのをよく覚えている。

 その様子が、ナヴァンと対照的で印象深かったのだ。


「ご挨拶ありがとうございます。お待たせしてしまいましたか?」


 丁寧にお辞儀をすると、ディノは春風のように笑う。

 この人の風も独特だ。

 アルデニアの人は、皆とても個性がある。

 顔と名前を覚えるよりも、魔素の雰囲気の方が覚えやすい。


「とんでもありません。ナヴァン様は首を長くしておられましたが、のんびりで良いのです。ルティナ様もあまり気を張らずにお越しください。あの方は固そうに見えますが、とても真摯で心の深い方ですので」


 ルティナを入口まで案内すると、セラは反対の内務区画へと向かう。

 レスティアに呼ばれて、今後の話をするそうだ。


 セラの立場も、あまり普通ではないように思う。

 護衛と言う割にはある程度自由に動き、皆がセラを知っている。

 何か特別な役割があるような……そんな気さえしている。




 ディノについて実務区画に入ると、中の空気は目まぐるしかった。

 不快に感じないのが不思議なくらいだ。

 多方向へと速やかに動く風。

 入り乱れず、淀まず、寸分違わず流れる無数の風だ。

 これはきっと、ナヴァンの思考そのものなのだろう。

 人の感情を感じ取るのはいつものことだが、ここまで整頓されているのは初めてだ。


「少し騒がしく感じるかもしれませんが、上はもう少し静かです。とにかくお忙しい方で、色んなことを同時に進めているので……言葉や接し方が簡潔になってしまいますが、決して不機嫌なわけではないのでご安心ください」


 この人は、緩衝材のような人なのかもしれない。

 何より、ナヴァンのことをとても好いているのを感じる。

 尊敬と心配が混ざったような温かい感情が、言葉と表情から滲んでいる。

 ロイのミオルに対する接し方が、尊敬8に、心配2だとするなら、その逆だろうか。

 ディノは心配の方が勝っている気がする。


「それはとても伝わってきました。そして、とても効率的な捉え方をするのも……」

「そのことを理解して下さっているのなら安心です」



 3階の執務室の前で、ディノは中へ声を掛けた。

 簡潔な返事は、扉の外へと抜けてくる。

 その声を聞くと、ナヴァンも風属性の人だというのが分かる。

 響きが柔らかいのだ。


「こちらから伺うべきところを、お呼び立てして申し訳ない」


 立ったまま机の書類を見ている姿は、整っているがどこか不安定だ。

 初めて会ったときのミオルを思い出した。

 頭の巡りが異様に速く、身体とバランスが取れていない感じだ。



「ちょうど良かったようですね」


 ルティナが部屋に入ってすぐに、ミオルとロイもやって来た。

 ミオルは顔色も良く、瞳も澄んでいる。

 巡りも穏やかになり、バランスが崩れることも少なくなった。

 ナヴァンにも、そうあって欲しいと思うのは傲慢だろうか。


「どうかしましたか?」

「いえ……」


 ミオルをじっと見過ぎてしまった。

 眼鏡の向こうの瞳はナヴァンを見て、何かを察したようだった。


「あとで、ぼくが声をかけてみましょう」


 何を考えたのか、本当に分かったのだろうか。

 にこやかな笑みを浮かべ、ミオルは長椅子へ腰掛けた。



 ナヴァンが説明する都下の不調は、思ったよりも広がっていた。

 雨がまったく降らず、街の温度が下がらないのも大きい。

 薄く広く、なんとなくの不調を感じる人がたくさんいるという状況だ。


「ひとりでは起き上がれないほどの重度の方は、どのくらいいらっしゃいますか?」

「今朝の報告では6名です。症状が強く出ている者が数十名、少し不調を感じる程度の者が多数おります」


 ……6名。

 ぎりぎり、ひとりでもなんとかなる数だろう。


「重度の方は、わたしが直接診た方が良いと思います。中度の方にはお薬と共に食事や水分の管理を、軽い症状の方には日々の生活で注意してもらうことを伝えましょう」


 ルティナは頭の中を整理する。

 軽度の人、中度の人、重度の人。

 それぞれ必要なものを手に入れなければならない。

 持って来ている薬草では到底足りない。

 手に入るものを探さなくては、薬を作ることもできない。


「まずは、大量の清水が必要です。基本的に不調が出ている方の飲み水は清水にして下さい。合わせて、レモリアは手に入りますか?」

「今の時期なら市場に出回っていると思います」

「では、それもできるだけ用意して下さい」

「レモリア……をどう使うのですか?」


 ナヴァンの後ろでメモを取っているディノが、不思議そうにこちらを見る。


 気が急いている。

 ここには自分だけではない。

 きちんと理解してもらわなければ、自分がいなくなったときに対処できなくなる。

 

 父の言葉を思い出した。

 自分にしかできないことを、知識として渡すのは無責任だ。

 自分がいなくても、変わらず巡るように整える。


 ルティナは心を置きなおす。


「レモリアは、陰性の強い果実です。清水にレモリアの果汁を加えたものを、喉が渇いたと感じる前に飲むように心がければ、軽度の方は2、3日ほどで症状が改善すると思います」

「薬もいらないのですか?」

「ほとんどの場合は必要ないと思います。それで改善しない場合、薬を使うことを考えれば充分です」


 ナヴァンは資料を見つめたまま、何かを考えているようだ。


「ディノ、相当の量のレモリアが必要だ。掻き集めて一括管理を。最初の内は説明と指導が必要だ。その人員も確保してくれ」

「清水の確保も必要ですね。一箇所抑えて構いませんか?」

「ああ、東の方が良いだろう」


 ディノとナヴァンのやり取りは、とても簡潔でテンポが速い。

 ルティナにはそれがとても心地よく感じる。


 ミオルは眼鏡を押し上げながら、後ろへと声を向ける。


「ロイ、都下の治療院にも伝達しましょう。治療院から広げる方が早いかもしれません」

「人も増やした方が良さそうですね。調薬師を数名ずつでよろしいですか?」

「そうですね。薬を作る手も必要になりそうですから」


 この2人を見ると、不思議と気持ちが落ち着いてくる。

 王都に来てから、かなりの時間を一緒に過ごしているのではないか。

 慣れている人がいるのは、とても心強い。



「あと……、王都で手に入る薬草、採取できるものでも構いません。詳しい方をご存じありませんか? 手持ちだけでは足りないと思います」


 ミオルは視線を落とし、ナヴァンは首を横に振る。


 森に探しに行くしかないかもしれない。

 見つかるかも分からないのに、やみくもに探すにも限度がある。


 ――ルティナは思い出した。

 なぜ今まで思いつかなかったのか。


「ミオル様、シルヴァンという名前の治癒師をご存じありませんか?」

「……シルヴァン……聞いた覚えがあります。確か調薬の方にいる方だったと記憶していますが……」


 胸の奥に光が沸いた。

 その人ならば、きっと力になってくれるはずだ。


「その方にお目にかかれませんか? 父が交流のあった方のはずです」

「お父様……ですか」

「父は年に数回、王都に滞在していました。その際に、王都の治癒師に耳を傾けてくれる人がいて、薬草のことを伝えていると言っていました。シルヴァン様の名前は父から聞いたのです」


 自分の瞳は、きっと懇願している。

 ミオルはそれを受け止めて、わずかに目を細めた。


「ロイ、探してお連れして下さい」

「行ってまいります」

「都下の東の治療院だったはずだ。数日前に話した覚えがある」


 ナヴァンが、ロイの背中に声を投げた。


「ボクも一度行ってきます」


 ロイの背中を追いかけるように、ディノも軽い足取りで走って行く。

 この若い2人は、空気は違うのにとても似ている。

 ナヴァンとミオルに対する、それぞれの気持ちを感じるからだ。




「ナヴァン、ちゃんと寝ていますか?」


 ミオルは声を落とした。

 咎めているわけではないが、視線はしっかりナヴァンを捉えている。


「……最近少し、立て込んでいまして」


 その反応になるとは……思わなかった。


 ナヴァンの瞳はミオルに向かない。

 書類からも目を離し、何もない斜め下へと滑る。

 もしかしたら、ミオルのことが苦手……なのかもしれない。


「顔色が良くないのはいつものことですが、目が赤いのはどうでしょうか。あなたが倒れたら、何も動かなくなりますよ」

「今はユアンが戻っていますから、多少は……」

「彼だけでは無理でしょう。アルヴィンをもっと動かせばよいのです。ひとりで抱えていては、いずれ潰れてしまいますよ」


 言い返さないナヴァンは、小さくため息を吐いた。

 おそらく、彼を止められる人はあまり多くない。

 止めたくても、代わりになる人がいないのだろう。


「頭が重いのではないですか? 首も、肩もですか?」


 ミオルの立て続けの言葉にたじろぐ姿は、彼を年相応に見せる。

 首を回しながら肩に手を当て、困ったように眉を寄せる。


「耳……ではないでしょうか?」


 ルティナは小さく言葉を繋いだ。

 明らかに、両耳付近が滞っている。

 聞こえないことはないと思うが、耳鳴りは気持ちをざわつかせるものだ。


「よく……わかりますね」


 ここに来てから、初めて視線がこちらに向いた。


 ナヴァンとはほとんど視線が合わない。

 そういう人というよりも、他に見なければいけないものがあるという印象だ。

 彼の瞳は、疲れからか少し濁って見える。

 魔素も多く、気素も豊富だ。

 だからこそ、上手く噛み合ってないのが違和感を大きくする。

 ルティナの目には、それがとても痛々しく映る。


「耳鳴りと……頭痛もありますか? 視界も少しぼやけていそうです。首と肩はそのまま頭に繋がっているので……上半身が全体的にお辛そうに見えます」

「2人が戻ってくる前に、一度ルティナ殿に施術をしてもらってはどうですか? わたしも体験しましたが、嘘のように身体が楽になりますよ」


 断られると思ったが、むしろとても興味がありそうだ。

 目がふらふらとして、どう返事をしたらよいか分からないのかもしれない。

 それほど身体が辛いのだ。


「一度緩めましょうか。重症の方に施術する前に、どんなものかを知っていただく方が良いかもしれません」


 ルティナが立ち上がると、ナヴァンは大げさに目を逸らす。

 こちらに向いている耳が……少し赤くなっている気がする。 


「戻りました……」


 勢いよく部屋に飛び込んできたのは、ディノだった。

 思った以上に戻って来るのが早い。


 ナヴァンの表情を見て止まっている。

 そして、すぐに口元が上がった。


「ディノ様、お手数ですがお水を1杯いただけませんか? ナヴァン様に少し水分を摂っていただきたいのです」

「お持ちいたします」


 よく動く人だ。

 あっという間に階段を駆け下りる音が遠ざかる。

 これだけ動くのに、まったく暑苦しさを感じない。



 ナヴァンは、ディノの持って来た水を一気に飲み干し、ひと息ついた。


「人に触れられるのは苦手ですか? 苦手であれば、触れないまま行います」

「いえ……分かっていれば、大丈夫です」


 水を飲んで落ち着いたようだ。

 さっきよりも、呼吸も落ち着いた。


 見る限り、全体的に巡りが乱れている。

 部分的に流すよりも、大きく巡らせた方が良さそうだ。


「では……座ったままで大丈夫です。わたしの左手首にご自身の右手首を合わせて、軽く握って下さい。あとは呼吸を深く、心を静かに。何も考えず、自分の呼吸だけに意識を向けて下さい」



 人の施術は久しぶりだ。


 ナヴァンの前に立ち、呼吸を合わせる。

 目を閉じて、意識を自分の中心から内側へ落としていく。


 浮かび上がる白銀の気素を、呼吸に合わせて流していく。


 ナヴァンの巡りは力強い。

 その分、乱れると疲労を感じやすくなる。


 気素の巡りに合わせて流れる魔素は、深い森の色だ。

 気素と比べて、とてもゆったりと流れる。

 この速度が、この人の基巡ノアだろう。


 呼吸に合わせて、ゆっくりと流す。

 左手から押し出し、右手で引き寄せる。

 肩から首へ、こめかみを通って反対側へと、少しずつ導いていく。


 まだ、引っかかる。

 もう少し、自然に巡るように。

 魔素と同じ速度で、ゆったりと流れる森の風のように。


 ふっと、すべての抵抗がなくなった。

 左手からナヴァンの右手へ流れる気素が、自然の流れのまま。

 右手に戻って来る気素も、すんなりと流れる。


 彼の気素は、こんなにもゆったりと流れるのだ。

 ディノの言った通りだ。

 とても真摯に、深く流れる。


 右手から気素を引き上げて、ゆっくりと手を離す。

 美しく整った巡りは、魔素と気素がきれいに並んで流れていた。



「……いかがですか?」


 目を開くと、ナヴァンの瞳は澄んでいた。

 先ほどとは違う、淡い灰緑になった瞳は、とても若く見える。


「す……ごいな。感覚が……とても透明に感じる。今までどれだけ曇っていたのかが分かる」


 顔色もいくらか戻っただろうか。


「耳はいかがです?」

「ああ、違和感がなくなった。目もだ……逆に身体は重く感じる」

「それが、本来感じるはずだった疲労です。今は少し辛いかもしれませんが……ひとときでも眠れば回復します」


 巡りを整えて疲労を感じるということは、もう限界手前だったということだ。

 アルデニアの人は、皆とても無理をするらしい。


「ナヴァン、続きは午後にしましょう。ぼくもほんの少し眠ったら、あっという間に元に戻りましたから」


 ミオルが立ち上がり、部屋を出ていこうとする。


「いや、さすがにそれは……」


 急に立ち上がろうとしたナヴァンは、足がついていかずによろめく。

 隣に滑り込んだディノが、それをすかさず受け止めた。


「ロイが戻るまでは話が進みません。ぼくたちは何か食べてきますから、あなたは少し眠りなさい。その方がきっと捗ります」

「ボクが寝かせておきます。ロイが戻ったら再開致しましょう」


 満面の笑みをこちらに向け、ディノは声を弾ませた。



 部屋を出ていこうとするミオルの顔は、とても優しく笑っている。

 その後ろについて、部屋を出る。


 階段の手前、扉の向こうで、ナヴァンが崩れ落ちたような音が聞こえた。




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