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オル・トア ―精霊の往く先―  作者: 流留架
蒼の季 初夏 ―王都へ―
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蒼の季-05.対話

 朝のこの時間、この廊下を歩くのはいつ以来だろう。

 足に伝わる柔らかな絨毯に、違和感を覚える。

 後ろに付くレイランも、きっと同じだろう。


 首に当たる襟が少し窮屈だ。そして暑い。

 長く続く廊下には、大きな窓からたっぷりと陽が射している。

 斜めに線が引かれるように、規則正しく光が並ぶ。


 ふと、森の木漏れ日が見たくなった。

 揺ら揺らと動く光は、自然の息だった。


 そう思うとやけに可笑しくなる。

 たかが、1季。

 それだけの時間で、自分の22年がひっくり返った。


「ははっ」


 思わず声が出る。それが更に可笑しく感じる。


「ユアン様、駄目ですよ」

「何がだ?」

「首を緩めるのは、話し始めてからにして下さい」

「分かっているよ。レイランもそう思う?」

「……多少は」


 歩きながら、2人で静かに笑った。



 部屋に入ると、そこには久しぶりの顔ぶれが並んでいる。

 3人の兄、姉、その護衛や従者。

 各家の代表も、それぞれ世代が変わったようだ。


 その中心に座っているのは、アルヴィン・アルデニア。

 ユアンの兄だ。


 アルデニアは、国の中心となる人間が変わると、それと同時に各家、各役職の代表が交代する。

 父の退位はまだ決まっていないが、実質今はアルヴィンが中心だ。

 この場の顔ぶれも、一気に若くなった。

 と言っても、子供の頃から知っている面々だが。


 実に風の国らしい慣習だと思う。

 あまり言葉を選ばずに互いの意見が言い合える、良い距離感だ。


 ユアンが戻ってきたタイミングで、顔合わせをしたかったのだろう。

 昨日の今日で、重い会議は正直したくない。

 この場の空気が、とても和やかなのにほっとする。




 ひとしきり話をした後、アルヴィンは何人かを残して解散とした。


 残ったのは、兄弟たちとその従者。

 グラナート家の代表、エデュード。

 ジュードの兄で、何度も一緒に戦ってきた信頼できる人だ。

 そして、リュサール家の代表、兄の信頼するミオル。


「さて、と。このメンバーなら……ユアン、いいかな?」


 アルヴィンの言葉に、ユアンは一瞬驚く。


 そして、今日呼ばれた意味をようやく理解した。

 そんなことにも気が回らなかったのか。

 どれだけ余裕がなかったのだ。


 気を取り直して、周りを見る。


 アルヴィン。後ろにはオルフェス。

 レスティアとライラ。

 ウィランとジュード。

 ナヴァンとディノ。

 エデュードとファム。

 ミオルとロイ。


 そして、ユアンとレイランだ。


 皆、良く知っている。

 アルヴィンの治世は、間違いなく安泰だと思える人たちだ。

 さっきまでいた他のメンバーを帰したのも頷ける。

 そして、その気持ちもとても嬉しく思う。


 後ろにいるレイランを見ると、目だけで頷いた。


「はい」


 ユアンは呼吸を整えてから声にした。



「良かった、ここで駄目だと言われても困るところだったよ」


 アルヴィンは冗談めかして笑う。

 この場を内輪の話のような空気にしたいのだろう。


「じゃあ、緩く始めよう。まずひとつめ。ナーシャが治った」


 驚かなかったのは、昨日あの場にいた5人だけだ。

 その中でもひと際驚いたのは、ミオルだろう。

 医療を取り仕切る水の家の代表だ。

 他でもないアルヴィンの大切な人のため、それは手を尽くしたはずだ。


 誰の言葉も待たないまま、アルヴィンは続けざまに話す。


「ふたつめ、ユアンも治った」


 またもや、5人以外が驚いた。

 ユアンは頭が痛くなってきた。

 もっと、どうにか上手く進めてくれないものか。


「みっつめ、魔素の適性は、素質ではなく素養だと分かった。よっつめ、魔獣の生態の在り方が分かり、魔法を使うということも証明された」


 レイランと顔を見合わせる。

 さすがにこれは強引すぎやしないだろうか。


「いつつめ……そのすべて、その知識は、ひとりの女性がもたらした」


 もう誰も動かず、アルヴィンを見つめている。


「その女性は、ユアンとレイランが出会い、昨日王都にお連れした。……ここまでで何か質問はあるかい?」


 全員の視線がユアンに集まる。

 もうやめてくれ……と、ユアンは叫びたい。



「待ってくださいアルヴィン、質問しかありません」


 声を上げたのはミオルだ。

 当たり前だ、質問しかないに決まっている。

 その隣のエデュードは、腕を組んだままアルヴィンを見ている。


「なんだ?」

「あまりにも雑過ぎます。あなたは分かっていることかもしれないが、こちらは話についていけていない。もう少し丁寧に」

「そうか、あまり待たせたくないのだが……ウィラン、魔法に関する部分の説明を頼めるか?」


 ウィランは心底呆れたように眉を寄せている。


「……はぁ、兄上、ミオル殿の言う通りです。これは大切に扱うべき内容です」

「分かっているが、時間をかけたところで意味がない。だから人を選んでいる」

「……分かりました。ご説明します」


 ウィランが丁寧に話し始めた。


 だが、ユアンはその言葉が上手く頭に入ってこない。

 “待たせたくない”というアルヴィンの言葉に、嫌な予感しかない。

 レイランから伝わってくる気配も、きっと同じことを考えいると分かる。

 さすがに、断っていると思いたい。

 でも、おそらく彼女はそうしないと知っている。



 ウィランの話が進めば進むほど、皆の顔が変わっていくのが分かる。

 信じられない、が、理解できてしまう。

 ユアンも散々感じてきたあの感覚だ。


「――以上です」

「ありがとう、ウィラン。皆、一応言っておくけど、これはまだ他言無用だよ」


 表情を変えずに、そのひと言を最後に添えるだけなのがアルヴィンらしい。


「ミオル、まだ何か質問はあるか?」

「……いえ、今はまだ出てきません。出てきたら言います」

「他の者は?」

「アルヴィンはその方と話をした上で、信頼できる人だと思っているんだな」

「もちろんだ」


 エデュードは姿勢を変えずにそれだけ言った。


「兄様、よろしいですか?」


 静かに声を出したのはレスティアだった。

 ユアンの唯一の姉だ。


「どうした?」

「……その方は……大丈夫……なのですか?」

「それを、皆で話したいと思っている」


 レスティアは納得したように頷く。


「兄上、義姉あねうえの症状が治ったということは、最近見られる症状も治るものだと思った方が良いということでしょうか」


 今度はナヴァンが口を開いた。

 ナヴァンはユアンのすぐ上の兄だ。


「それは分からない。聞いてみた方がいいだろう」

「……アルヴィン、その方は……何者なのだろう」


 目を伏せたまま、ミオルは重たい言葉を吐いた。


「ごく普通の、可愛らしく心の優しい女性だよ。ナーシャをとても思っていくれていた。昨日それについてナーシャとも話したが、私たちは同意見だ。彼女に深く感謝している」

 

 ユアンは安堵した。

 ごく普通の女性。

 それが何よりもルティナと接するのに必要なことだと思う。


「それは、わたしもそう思います」

「僕もだ」

「自分もです」


 レイラン、ウィラン、ジュードがそれに続く。


「ユアン、何か言いたいことは?」


 ユアンは立ち上がる。


「……彼女は、俺の恩人です。命も、俺自身も、あれからずっと、今も救われ続けています。この恩に報いたい、何があっても守りたいと思っています」


 アルヴィンは弟を見る顔になった。


「分かった。皆、何か言いたいことがあれば今言ってくれ。なければ進めよう」


 この場の空気が、一気に柔らかくなった。

 迎え入れるという空気を、アルヴィンは見事に作ってくれた。

 やはり敵わない。

 この人は最強なのだ。



 彼女は静かに入って来た。

 ルティナにセラが付き添ってくれていたことに、心底安堵した。


 昨日とはまた違う異国の装いは、彼女をより神秘的に魅せる。

 彼女に会ったことのなかった面々が、その空気を見つめている。


 ルティナは何と言ってここに呼ばれたのだろう。

 何を語らせようとしているのだろう。

 彼女はそれを理解しているのか。

 話してもいいと思ってくれているのか。


 頭の中を縦横無尽に考えが駆け巡る。


 アルヴィンに紹介され、彼女はアマヒトの礼で挨拶をする。

 その姿はあまりにも貴く映る。

 その場にいる全員が、彼女を普通の人だとは思えないだろう。


 ルティナはユアンの隣の席に付いた。

 目が合った彼女は、緊張しながらも、大丈夫だと伝えてくれた。

 この中にいると、彼女はとても儚い存在に映る。

 今すぐにここから連れ出してしまいたいと、そんな思いが浮かんで消えた。

 ルティナは自分の意思で、ここに来てくれたのだ。



「ルティナ殿、昨日の今日で申し訳ないと思っている。ここに来てくれたことに感謝している」

「いえ、構いません。お心遣いに感謝申し上げます」

「少し、こちらから尋ねても良いだろうか。もちろん言えないことは無理する必要はない。これは尋問ではなく、対話だと思って欲しい」

「はい、お答えできることであれば」

「ユアンも構わないか?」

「……はい。ですが、口を挟むこともあるかもしれません」

「もちろん、構わないよ。ウィランも、レイランも、ジュードも。ルティナ殿を知っている君たちが思うことがあれば言って構わない」


 3人は頷いた。


「ルティナ殿がナーシャに対してしてくれた施術は、治癒ではなかったと思う。その認識は合っているだろうか?」

「はい、わたしは魔素の適性を持っておりません。治癒魔法を使うことはできません」

「だが、ナーシャの身体はすでにほぼ元の状態に回復した。これは偶然ではなく、理由があると思っているが、それはどうだろう?」

「おっしゃる通りです」

「それは……私たちに理解できることだろうか」


 ルティナはこちらに目を向けた。

 それは助けを求めるものでなく、確かめるような目だった。


「……ユアン様と、レイラン様は、理解して下さっていますが……」

「……が、難しいか?」


 ルティナは少し困ったように目を伏せた。

 話すことを躊躇しているのか、話す相手として不安があるのか。


「ルティナ、少なくとも俺は、ここにいる人たちが理解できないなら、この国にいる人は誰も理解しないと思う。そのくらい、信頼できる人たちだ。もしそうなったら、ちゃんと俺が分かるまで言い続けるよ」

「それは分かります。皆さまとても澄んでいるのが伝わってきます。そうではなく……これを話すということは……ユアン様の……」


 ルティナの心配は斜め上だった。

 俺の身体のことを話すのを躊躇っているのだ。

 ユアンにとってはそれこそ“そんなこと”だ。


「なんだ、そっちか。そんなことはどうでもいい。いずれ分かることだし、今じゃなくても話すつもりでいた」

「そうですか。でしたらわたしは構いません」


 ルティナは穏やかに微笑んだ。

 その瞳は、凛として美しかった。


「皆、ある程度……いや、相当な覚悟を持ってくれ。俺とレイランは……人生がひっくり返ったから」


 全員の視線が、不安と疑問、そして少しの期待を含んだ。




 ルティナは、神秘的な声と語り口で話し始めた。


 霊素の概念、魔素との関係、人の身体、世界の成り立ち。

 精霊族の存在と、その特性。

 出来うる限り丁寧に、聞かされる相手が負担にならないようにと配慮しながら、淡々と静かに語る。


 その語りは神話のように部屋に響いた。

 何度聞いても、ユアンにとっては美しい話だった。


 ルティナが話さなかったのは、調律と響律について。

 そして直接ユアンの身体のことを話すことはしなかった。

 これは、皆が共有する必要のない内容だと思ったのだろう。


 皆の顔は、最初こそ驚きや疑問が現れていたが、途中からそれもなくなった。

 ただ静かに、ルティナの声を聞いていた。

 聞くというより、染みてくる感覚なのだ。

 頭の理解よりも、心や精神の方が先に理解をする。

 これが人間の本能ならば、人は捨てたものではないと思う。



 どのくらい話し続けただろう。

 ひと区切りしたところで、ルティナは息を吐いた。

 喉が渇いただろうと思ったところで、セラが扉を開けてお茶を受け取っている。


 セラが全員に配り、また扉の前に戻った。


 全員が無言のまま、出されたカップに手を付ける。

 そういう訓練をしたかのような、揃った動きだった。

 ユアンは込み上げた笑いを必死に堪えた。

 それをルティナは目の端で捉え、思いっきり目を逸らした。


「えーと、どうだった、かな……?」


 長すぎる沈黙に、誰も言葉を出せなくなっている気がした。

 ユアンの声に意識を取り戻し、時が動き出したようだ。


「とても面白かった。いや、変な意味ではなく……魔素の話もそうだったのだが、頭じゃない部分が理解するんだ」


 ウィランは、まだ頭の中に半分足を入れている状態だ。


「これはなかなか、……私の覚悟は足りていなかったようだ。だが、話の輪郭は分かったと思うよ。そして、それを疑う気持ちも沸いていない」


 アルヴィンも遠い目で頷いている。

 皆それぞれ、自分の中に落とすのに時間はかかるだろう。


「……正直ぼくは……」


 手元のカップを見つめたまま口を開いたのは、ミオルだった。


「疑いたいわけではないんです、聞いた話を頭ではない部分で理解するというのも、とてもよく分かる。……ただ、今まで生きて来て積み重ねた時間が、それに納得するのを拒否している……そんな感覚です」


 それは真摯な言葉だと思った。

 ルティナを否定する言葉ではない。

 すぐに受け入れられる話ではないだけだろう。


「それでよいと思います。わたしは納得して欲しいと思ってお話したわけではありません。これは概念です、解釈はそれぞれ、理解もそれぞれです。耳を傾けていただけただけで充分です。受け入れられないという考えは、内容を理解したから思えること。納得がなくとも、理解さえあれば、人は対話ができると……わたしは思います」


 ルティナが説明ではなく、自分の意思で言葉にした最初のひと言だ。


 ルティナらしい。

 彼女そのもののような言葉だ。


 そこにいる全員が、この言葉で包まれた。

 そこにいる全員が、ルティナという人を正しく認識しただろう。


 彼女には敵わない。

 出会ったときからずっと、 彼女の見ている景色はずっと遠い。


「……納得……理解」


 ミオルは呟いた。

 そしてルティナを見つめ、微かに目を下げた。


「それにしても……精霊族がこの世界にいるとは……それがとても……物語のように聞こえてしまうな。出来れば会ってみたいものだ」


 アルヴィンは、ルティナが精霊族だとは思っていないようだ。

 確かに、話の中で自分がそうだとは言っていなかった。


 きっと内容が大きすぎて、色んな認識がまだ噛み合っていないのだろう。

 ルティナはとても不思議そうに首を傾げる。


 そして立ち上がった。


 全員がルティナに目を向けた。



 ルティナは霊核の姿、月狼をその身体に映す。



 全員の時が止まった。

 それはあまりにも美しく貴い姿だ。


 何度見ても、見惚れてしまう。

 纏う光が、以前と変わった。

 今の方がより強い。

 白銀の帯が流れるように、光を放っている。



「これが、精霊族の持つ霊核の、本来の姿だそうです」



 自分の中から湧き上がった何かが溢れ出す。

 そして唐突に理解した。

 これは、止めようがない霊核の共鳴なのだろう。

 自分のことを話す手間が省けたようなものだ。


 ユアンはそれに抗わず、自分の姿を受け入れる。

 


 ユアンの身体にも、焔鷲の姿が現れた。



 その場にいる全員が、きっと理解できないだろう。

 幼い頃から一緒だったユアンが、なぜ霊核を持っているのか。

 レイランまでもが驚いている。

 そうだ、あのときレイランはいなかった。


「……なぜか、俺もその霊核を持っているんだ」


 ルティナが慌てて霊核を戻す。

 彼女もこうなるとは思っていなかったようだ。


 まだ分からないことだらけなのだ。

 これから一緒に知っていけばいい。


 理解してくれる人も増えた。

 せめて、この人たちだけでも……

 ルティナの孤独を癒す存在であって欲しい。



「ありがとう、ルティナ殿。願いを叶えてくれて……だが、その姿はあまり人に見せない方が良さそうだ。……少し、刺激が強すぎるかもしれない……」


 ルティナはとても恥ずかしそうに、下を向いたまま何度も頷いた。

 それは初めて見る、怒られた子供のような仕草だった。


「ユアン、その姿……については、またゆっくり話を聞かせて欲しい」

「はい、兄上」

「本当は、もう少し別の話も進めたいと思っていたんだが……皆はどうだろう? まだ話を続けるだけの余裕はあるだろうか?」


 あるわけがないだろう。

 

「アルヴィン、ぼくは少し整理する時間が欲しい。申し訳ない……」


 ミオルの意見は当然だ。

 彼が一番正直に答えている。

 むしろ、この中で一番冷静なのではないか。


「兄様、わたくしも時間をいただければ嬉しいです。きちんと理解をしてからでないと、何も考えられない気がしています」


 アルヴィンは頷き、楽し気に笑う。


「実は私もだ、清々しいくらい混乱しているよ。自分の頭がこんなに融通が利かないとは思わなかった。だが、とても気持ちがいい。久しく感じていない、新しい風だ」

「では、また後日にしましょう。それまでに、都下の様子も調べておきます」


 ナヴァンは人の不調を気にしているようだ。

 肌で感じる機会が多いせいだろう。


「そうだな。じゃあ……いつにするかは追って連絡を入れるよ。思った以上に大きな話になったから念を押すけど、他言無用だ。話が漏れたらそれなりに対処するつもりだから、そのつもりで。意図しないものも含めて、注意してくれ」


 アルヴィンは立ち上がり、部屋から出ていく。

 それを見送ったあと、皆がそれぞれに戻って行った。


 ミオルだけがその場に残り、何かを待っているようだった。

 そして、全員が部屋から出たあと、静かに立ち上がった。


「ルティナ殿、先ほどは失礼いたしました。……言葉そのままに受け取っていただけて、救われました。ぼくは自分が理解をしていることすら気付いていなかった。あなたの言葉は響きました……」


 濁りのない素直な思いだ。

 彼の親しみやすさはこういうところだ。

 ずっと変わらない、兄のような人だ。


「いえ、向き合おうとして下さったことを、嬉しく思います。正直、あの空気で何か言えるものではないと、不安に思っていたところでした。伝えていただけて良かったです」


 ミオルは眩しそうにルティナを見る。

 そして、表情を崩して笑った。


「ぜひ、またお話させてください。この国の医療に関わる人間として、人の身体のことは知っておきたいのです」

「いつでもお声がけ下さい。王都にいる間でしたら時間もありますので」


 丁寧にお辞儀をして、ミオルは部屋を後にした。

 その背中は、とても嬉しそうに見えた。



「俺たちも戻ろうか」

「はい」



 ルティナには聞きたいことが山ほどある。

 離れに戻ったら、まずはここに来ることになった経緯からだ。


 その前に何か食べたい。


 昼食は……何か作ってくれるだろうか。


 ルティナの横顔はどこかふっきれたような、凛とした表情だった。





      ―王都へ― 巡了



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