囮
ゾンビ映画のビ○チは絶対必要だと思う
「なんなの…これ…絶対におかしいわ…」
綾香は口に手を当て目の前の現実が信じられないようだ。
僕もそうだ。
屋上まで慎重に移動しようとした最中人の気配を感じ隠れてみると、いきなり出くわした光景だ。
「なんだあれ…人が人を食べている…?」
さっきまで悲鳴を上げていた生徒だったが食べられ動かなくなったと思ったらまた動き出した。
あの姿はまるで…
「ゾンビ…」
マナトは僕たちを引っ張り手近な教室に入った。
「二人とも聞いてくれ。これは僕の予想だけど今この現状はパンデミックなのかもしれない」
「パンデミック?」
綾香は聞いたことない言葉に疑問を抱いた。
「ああ。感染症の全国的、世界的な大流行のことを言うんだけど…さっき食べられて死んだように見えた人がまた立ち上がっていただろ?あの姿映画とかでよくみるゾンビそのものだったじゃないか?まだこの学校以外にどうなっているかわからないけど、もしかしたらもう日本全体でおきているかもしれない」
「嘘…」
綾香は信じられないようだが、マナトがいうことなので完全に否定できないでいる。
「じゃあお母さんは?お父さんは?もしこんなのが全国で流行っていたらどうするの!?」
「わからない…だから今は急いで屋上にいって現状を確認しよう」
いいたいことはまだたくさんあるだろうが綾香は感情を抑えて無駄に時間をかけさせないようにしている。そのほうがいいと理解したのだ。
実際綾香はそこまで混乱はしていない。学校でも最高ランクのマナトといることで自身の安全はある程度確保されていて現状を客観的に見ることができていた。
「よし、じゃあなるべくゾンビに見つからないように安全に屋上へ行こう。」
「クッソ!!マジでついてねぇ!」
「いったいどうなってんだよクソがっ!」
二人の女子生徒が罵詈雑言を喚きながらロッカーを蹴る。
異能力”脚力強化”で思い切り蹴ってもいいのだがこの現状で無駄な体力を使うことは意味のないことだと彼女たちでもわかる。
しかし、異能力を使わない非力な蹴りは逆に自分の足を痛めて、さらにイライラを募らせていた。
「おい!なんとかいったらどうだ糞デブはがよぉ?」
影を薄くしてかかわられないようにしていた男子生徒、堀 健太郎は声をかけられボソボソと喋りだす。
「そ、そんなこといわれても…こまるよ……」
「あ?なんだって?きこえねぇんだよ?」
ついに我慢できなくなった女子生徒は異能力を使い堀を蹴った。
「だいたいなんでお前みたいな使えないやつと一緒なんだよっ!糞!糞!糞!」
「そとは化け物だらけで人は食うでわけわかんねぇよ!」
「せめてマナト君がいればいちゃつけるし助けてもらえるし最高なのに、なんでお前なんだよ!」
体育館から逃げ出したとき学校から出ようとしたらもうやつらだらけで、そこから逃げるように校内に入り上へ進んでいる。
そのとき数があまりに多くこの教室に逃げ込んだときに堀と鉢合わせした。
「そうだ!おい堀ィ!お前私たちが力使ってあいつらぶち殺すからつかれたら回復させてくれよ?そしたらみんなハッピーだろ?」
「ご、ごめん僕は自分しか治せなくて…」
「ッチ!つかえねーな」
ちなみに彼女達がやつらを倒す自身があるのは、さっきこの階まで上がってくるときに襲われた際容赦なく異能力をつかって一人殺している。
そのとき彼女は”あ?校長が使っていいっていったんだろ?じゃあいいじゃねーか”となんの躊躇もなかった。
「さすがにあんな数を全員殺すのは無理だな…」
女子生徒は頭を使って考える。
「あ、そうだ。おい堀ぃ。お前囮になってあいつらをひきつけてくれよ」
「や、やだよ…あんな数ひきつけたら食べられちゃうよ…」
「お前よぉ、私らに蹴られていっつもその股のきたねぇもんたたせてたよなぁ。もしうまくひきつけてくれたらよ、私のおっぱい揉ませてやるよ」
「え?」
「私の評判いいんだぜ?お前童貞だろ?ほら、お前のきたねえのは正直になってるぜ?」
堀は迷った挙句教室から出て行こうとする。
それについていくように彼女らも教室からでる。
「じゃあ頼むぜ堀。期待してるからな。せいぜいでかい声でないてくれや!」
女子生徒は異能力を使い堀を蹴り飛ばす。
堀は驚きのあまり蹴られた現実が理解できない。
ゾンビは堀に群がり腕に噛み付いた。
「ああああああああああぁぁぁあああ」
堀は痛みで大声をあげる。
その声でより多くのゾンビがあつまり、女子生徒の目論見は見事に成功した。
「よっしゃ!今のうちに逃げるぞ!」
「あんたひどいやつだよ」
「お前だって人のこといえないだろ?」
「そりゃ言えてる」
二人は笑いながらさらに上へと逃げるように目指す。




