決着
校長のイメージはXメンのプロフェッサーXです
今にも壊れそうな扉を見る。
もしかしたら死んでしまうかもしれない。そう考えたとき走馬灯のようにこの学校に来たことを思い出していた。
校長の名前は渡邊 徹。
彼はこの学校の人には話したことがないことがあった。
実は徹は異能力者だった。元はどこにでもあるような高校の教師をしていたのだが、22年前に異能力を発現させた。
彼の異能力は今の学校をまとめるためには非常に便利だと考えられ校長に抜擢された。
異能力はランクAの”言霊”。
彼の言葉には力が宿り不思議とその言葉に従ってしまったり、納得したりしてしまう。
異能力者の大きな犯罪が今までなかったことは彼の功績のおかげだろう。
学校では毎日のように異能力を使った犯罪はしてはいけないと言霊の力を使って呼びかけている。
洗脳に近い行為だがかわいい生徒が犯罪者にならないように。
バァァン!
ついに扉が壊される。
一番初めに入ってきたのはさっき電話で門を閉めたといっていた山田先生だ。
(やはりこれは洗脳系の異能力による仕業か?ならばおかしい。この体育館の扉はランクBの異能力でやっと破れるくらい丈夫なはず。山田先生はたしかランクC。たとえ洗脳者がランクAでもこれほど大規模に、しかもランクアップまでできるなんてありえない)
徹は犯人の推測と同時に自分の過ちを後悔する。
(絶対に異能力者の犯罪者はださないとここの校長になったときに誓った。この事件がもし異能力関係意外ならいいが、異能力者が引き起こしたとするなら規模からしてランクA。つまりこの学校に所属していない、まだ異能力を自覚していないほど弱いものがやった可能性は低い)
山田先生は校長へタックルしようと猛ダッシュしてくる。
「まずはあなたを洗脳した犯人を特定します。案内しなさい」
言霊の力を使い案内させようとする。しかし一瞬動きが止まるだけでまた山田先生は走り出す。
もう一度、今度は少し力を強めて言う。
「止まれ!そして犯人へ案内しろ!」
さきほどより止まっていた時間は長いがやはりまた走り出してしまう。
「ハァハァ…これだけ力をこめても…ハァ…無理だなんて…」
(普通はこれだけやればいうことを効くはず…さっき生徒を落ち着かせるために力を使ったからこれ以上はキツイ…)
もう目前まで迫ったタックルを横っ飛びでなんとかよける。
よけた後を通り過ぎたタックルはそのまま後ろの壁を壊しても止まらない。
(やはりおかしい。ランクCがここまでの破壊力。さっき扉を壊すのにも相当力を使ったはず。恐らく犯人は山田先生には特に力を使っている。ならば山田先生をここで止めれば被害を抑えることができるはず)
「倒れろ!」
力を込めて叫ぶ。
効果が薄い本人にはもう使わない。
簡易移動のバスケットゴールを山田先生に向かって倒れるように力を使う。
徹の強みは異能力を生物だけでなく無機物にも効果を発揮することにある。
1000kg以上の重さのある物体が山田先生に落ちてくる。
物が倒れる衝撃が収まった後、現場を見る。
丈夫なつくりの床は抜けていない。
山田先生はバスケットゴールに挟まれ当たっている部分の肉はつぶれ身動きができなくなっていた。
「やった…ハァハァ…これで脅威はさった…」
徹は異能力の使いすぎで立つことすらきつく、その場に倒れこんだ。
(恐らく山田先生に洗脳の力を多くっている犯人はしばらく何もできない…ほかに洗脳した数もそんなにいないはず。あとは他の先生か、警察かが処理してくれるだろう)
そう思いながら徹は壊された扉をふと見る。
(なっ、なぜ!?)
そこにはぱっと見ただけでも10人以上。扉の向こう側にもまだいそうだ。
(おかしい!こんな人数を洗脳するなんてランクAでも不可能だ!まさか、洗脳系の異能力じゃないのか!?)
いくら考えようと体は動かないし、彼らは少しずつ迫ってくる。
抵抗できない徹はゾンビの集団に喰われてしまった。
「校長せんせ~い…」
静まり返った体育館に今年入ったばかりの新人教師が入ってくる。
彼女はさっきまでお腹を壊しており、校長先生に言われた体育館に集合することができなかった。
トイレの中でも聞こえる生徒の悲鳴や走る音。何が起きているのかわからずとりあえず体育館にやってきた。
「校長せんせ~い、いらっしゃいますか~?え?なんで扉が壊れているの?」
あたりをきょろきょろしながら校長先生を探す。
「なんでバスケットゴールが倒れてるのかしら…ヒッィィィ!」
バスケットゴールに挟まっているものが人間だと気付いたとき腰が抜けてしまいしりもちをつく。
「嘘っなんでっ、人、人が挟まってる、助けなきゃ、誰か誰か」
あわてて周りを見渡すとうずくまっている人影を見つける。
「あのっ、すいません。人が、人が挟まっています。助けなきゃ。手伝ってください」
声をかけるとその人は立ち上がった。
その後姿はよく見慣れている校長先生のものだった。
「あ、校長先生っ、人が挟まって、助けなきゃいけなくて、でもどうやればいいかわからなくて」
なんとか状況を伝えようとして校長を見ると異変に気付いた。
まず口の周りの赤い液体がたっぷりとついている。その液体はスーツにもべったりついている。
そして足元にあるものをみると、それは恐らく人間だろう。大部分がどこかになくなっていて内臓が散らかっている。
怖くなった新人教師はその場を逃げ出そうとする。
「マテ」
以前の校長とは違う、なんの感情もかんじられない声。
その声を聞くと逃げたくてしょうがないのに動けなくなってしまった。
「え?なんで?うごけないっ」
「コッチヘコイ」
「やだっいきたくない。なんで?体がっ」
体は勝手に校長の近くへ進んでしまう。
近くまで来るといままでかいだことのない異臭。ゴミなんかと比べようもない臭いの原因が足元にあるものとわかって膝をついて吐きたい衝動に駆られるが、それはできず立ったまま吐いて服を汚してしまう。
それを気にも留めないのか校長は彼女の首筋に噛み付いてくる。
大声で叫びたかったがショックで声が出ない。
涙を流しながら意識が遠のいていく。
体育館はまた静寂に包まれた。




