硬化
読みやすいように意識して書いてみました
走り出したバスは早速危機に直面していた。
校門へと向けて走らせる途中、バスのすぐ横に巨大な瓦礫が落下してきた。
ゾンビになってしまった萩谷の異能力”重力使い”で重力を操作された瓦礫がバスに向けて飛ばされてきているのだ。
運よく最初は当たらなかったが次も大丈夫という保証はない。最悪のパターンを想像して全員の空気が一気に重くなる。
「おい、どうする!?今のは運がよかっただけだが、次はもうないぞ?」
「ここは拙者に任せるでござるよ!」
打開策が浮かばない中、最初に声をあげたのは以外にも親衛隊隊長山下だった。
彼は突然窓から身をのりだし、瓦礫が飛んでくる方向を見つめる。すぐに次の死の塊がバスへと近づいてくる。
山下は瓦礫に意識を集中し自分の異能力を発動させる。
”全対応”。異能力を発動させると同時に、降ってくる瓦礫に対して直感的にどう対応すればいいのかが彼には理解することができる。
「梁瀬先生!思いっきり右に避けるでござるよ!その後にスピードをあげるでござる!」
山下の具体的な指示に梁瀬は素直に応じる。
右に避けた後にアクセルを強くふみスピードを上げる。すると、まるで瓦礫が自分からほんの少しずれましたよとでも言うように、地面に落ちていく。
山下はさらに続く瓦礫に短い間、具体的には瓦礫を見てからどう対応すればいいのかわかるまでの時間異能力を発動し、スタミナの消費を抑えている。
さらに何度か避けていると、急に萩谷の攻撃の嵐がやんだ。
「…………おかしいでござる」
「どうしたござる?ブツが勃たなくなっちまったか?」
「……前谷殿。女の子がそんな汚い言葉遣いは拙者どうかと思うでござるよ。あと!拙者のことをござると呼ばないでほしいでござる!って今はそんなことどうでもいいでござる」
慌てた様子で山下は続ける。
「急に攻撃がやんだでござるよ。もしかして相手に何かあったのではないでござるか?」
「マナトがやってくれたんだ!」
この状況で何かあったとするならばマナトが萩谷を倒してくれた以外考えにくい。
ならばすぐにマナトは追いついてきてくれるはずだ。
「きっとマナトがやってくれたんだ。これで安全だぞ」
「じゃあさっさとこのクソ広い校庭はさっさとおさらばしようぜ」
マナトのおかげで勢いにのる一同とスピードをあげるバス。
梁瀬はすこしハイになっているのか、最初はバスでゾンビを轢くたびに小声で謝罪を繰り返していたが、今ではもう余裕すらある。
もうすぐ校門にたどり着くというところで校門の前に立つ二人の生徒がいることに梁瀬は気付く。
警告の意味で彼は一度クラクションを鳴らす。
「やっぱあいつらもゾンビか…」
クラクションの音に反応して向かってくる彼らをゾンビだと確認し、スピードを緩めない。
「みんなもう校門まで着いたぞ!あそこの二人の生徒を抜けたらもう学校から抜け出すことができるぞ!」
僕は異能力の反動でほとんど動けないながらも窓から校門のほうを見る。
進んでいる先にいる二人の生徒をみて、思わず慌てる。
この二人が偶然友達だったから知っていた。
この異能力が今の僕たちに大きな障害になることを今すぐ伝えなければならない。でないと最悪全滅だ。
声を出そうとするがあまりの疲労でうまく伝えることができない。近くで僕の心配をしてくれていた久美がどうしたのか聞いてくる。
「どうしたの。宗助?なにかあった?」
「久美……あの…二人…は……」
「え?うまく聞こえないよ。何か伝えたいの?」
うまく伝えることができない間に、二人の生徒がどんどん近づいてくる。
どうしても伝えなければならない。疲労は限界だがさらに気を振り絞って声を出す。
「あの二人は……”硬化”の異能力者だ!バスでも歯が立たない!」
しかしもう遅い。バスは彼らと衝突をした。
硬化をもつ彼らに衝突したバスは轟音をならし、先頭がひしゃげる。そして急に動きを止められたバスは後ろ側が宙へ浮き一回転して背中から倒れた。
当の硬化の二人は上半身がバスとの衝突でぐちゃぐちゃに吹き飛んでいた。




