たーたん
宗助たちがちーちゃん親衛隊に合流する十数分前。
安全に屋上に行こうと三人は行動していた。
途中ゾンビの何体かが倒れていることに気付いた。
「私たちの前に誰かがここを通ったのかしら?」
「そうかもしれない。通った道から彼らも屋上を目指しているのかもしれない」
綾香の疑問に宗助が答える。
そのゾンビが倒れ人が通った後に人形が落ちていることに宗助は気付く。
「熊の人形が落ちてるぞ」
「宗助、今は人形なんてほおってこう」
「待ってくれ。あれはたしか…くーちゃんが大事に持っていた人形じゃないか?」
「言われてみればそうかもしれないけど…」
宗助は人形を持ち上げる。
その人形にはひらがなで”いがらし くみ”と書かれてある。
「やっぱりくーちゃんの持っていた人形だ。あれだけ大事に持っていた人形を落としているなんて…もしかしてなにかあったんじゃないのか?」
「どうせ屋上に向かうんだ。行く途中でわかることだろう」
向かう途中でたくさんの人ごみと今までのとは違う筋肉の肥大したゾンビを見つけた。
その筋肉ゾンビの振り回した腕に吹き飛ばされた男性を少女が助けようとして絶体絶命のピンチのようだ。
「宗助!力を使うぞ!」
「わかった」
二人は力を使う。マナトは当然だが、ランクの低い僕でも首を変な方向に曲げることは難しいことじゃない。
初めて一般人に使う異能力。抵抗感があったが、生きている人を助けるためにそれを押さえ込んで我慢した。
一帯のゾンビを止めたあとマナトは隊長と思われる人に話しかけている。
「大丈夫でしたか?」
「助かった出ござる!いま絶体絶命の大ピンチだったでござる!」
二人が話している間に人形の持ち主のちーちゃんに話しかける。
「大丈夫だった?そこの倒れている人は気絶しているだけだから大丈夫だよ」
「ありがとう。あなたは誰?」
「僕は竹田 宗助。これ君のだよね」
僕は持ってきた熊の人形をちーちゃんに渡す。
「あ!たーたん!」
「もうなくしちゃだめだよ?大事なものなんでしょう」
ちーちゃんの頭をなでながら優しく話しかける。
「うんありがとう宗助!あいたかったよたーたん!」
「そのたーたんは誰かから貰ったものなの?」
「うん。小さい頃にお父さんに買ってもらったものなんだ…」
「そうか。もうなくしちゃダメだぞ」
ちーちゃんの喜びようにうんうんとうなずきながら宗助はあることに気付く。
(しまった!そういえばくーちゃんって僕より年上じゃないか!つい子供と話すような気分で接しちゃったけど)
「す、すいません五十嵐先輩。なれなれしくしてしまって」
「そんなのいいよ。だってたーたんを助けてくれたんだもん。たーたんは私の家族なんだもん」
「いや、五十嵐先輩。僕は偶然拾っただけなんです」
「五十嵐先輩なんてやめて。名前で呼んでよ。あと敬語もいや!」
動揺しながら宗助は名前を言う。
「わ、わかったよくーちゃん」
「くーちゃんじゃなくて久美!」
「く、久美」
そういうと久美は笑いながら抱きついてくる。
「うん!宗助!たーたんを助けてくれてありがとう!」
「なーに二人で楽しく話しているでござるか!さっさと離れるでござるよ!」
山下が割って入ってくる。
「今はお互い屋上を目指すはずでござる!さっさといくでござるよ!」
(ちーちゃんが名前を呼んでなんて初めて聞いたでござる。あの宗助とかいうガキゆるさんでござるよ…)




