第八話 ミュータント
第八話 ミュータント
ヨーロッパから最新の報告が来た。
その内容に、タカユキたちは息を飲んだ。
「人間に動物の遺伝子を組み込んで人工交配させた生命体では、性欲旺盛な個体が確認されたということです」
「動物の遺伝子を組み込んだ生命体?」
「ミュータントを製造したのか?!」
いくら人間含むすべての哺乳類の滅亡を食い止めるためであっても、やっていいことと悪いことがあるだろう。
「仕方が無いんじゃないか。ヨーロッパの研究チームは宗教団体の激しい妨害によって日本やアメリカに後れを取っていた。宗教団体を退けた今、成果を挙げようと必死だったんだろう」
「倫理面は後回しということか。成果は?」
「はい。犬と猫の遺伝子を組み込んだ人間の細胞で、犬のように性欲旺盛な男のクローンと、猫のように『せくしー』な女のクローンができたそうです」
「せくしー、ってなんだ?」
性欲が消失してからずいぶん時が経っているので、人間たちはセクシーという概念がわからなかった。
ヨーロッパの研究所に連絡して、猫のようにセクシーな女のクローンの動画を送ってもらった。
外見的には、普通の人間だ。ファンタジーアニメの獣人のように人間の身体に猫耳があったり猫シッポがあるわけではない。
胸が大きくてウエストがキュッとくびれていて、尻がプリンと丸い若い女のクローンは、猫のように身体をくねらせたり、上目遣いに媚びるような視線を向けてくるが、なんのためにそんな仕草をしているのか、若い研究者たちはわからなかった。
「なにかのサインでしょうか?」
「ハンドサインや暗号のほうが効率的だろう」
結局、『せくしー』の意味はわからなかった。
リリーちゃんが虹の橋を渡った。
タカユキはリリー2をケージに入れて、一緒にリリーの遺骨の埋葬に立ち会った。
アパートに来たばかりの頃にはシャーシャーと背中の毛を逆立てていたリリー2も、いくらかおとなしくなった。
タカユキも、あと数年で、定年退職だ。
人類はいまだに、自然繁殖が復活しない。




