第十一話 アユミ
第十一話 アユミ
さらに歳月が経過した。
第三十五世代のクローン体から一体、他と違う姿形のものが生まれた。
アユミ、と名付けられたその個体は、人間の身体に猫耳と猫シッポがある、獣人の姿であった。ミュータントだ。
「いったいいつどこでどうして、猫の細胞と混ざったんだ?!」
「ヒトミのオリジナル細胞ですね?」
細胞センターの記録を見ると、取扱者は田中タカユキである。
「数百年前、タカユキのオリジナルが、ヒトミの核を抜いた未受精卵に猫の細胞の核を入れて細胞センターにまぎれこませた、ということか」
それでは現在の職員の責任は問えなくても不可抗力だろう。
アユミはたいへんキュートな姿であった。猫と人間のいいとこ取りだ。
「可愛いなあ」
「可愛いねえ」
アユミのあまりの可愛さに、研究者たちはメロメロになった。
「僕、アユミのお世話係になりたい!」
「狡いぞ、俺だってお世話したい!」
男性研究員何人かで、喧嘩になった。
すると、女性の研究員たちが文句を言った。
「そうやって可愛い個体を作るのは狡い。私達だって、ブサメンじゃなくてイケメンを作りたいのに」
「そーよそーよ! 狼とかカッコイイ獣人を作りたい!」
作りたくて作ったわけじゃない、保存されていた細胞をクローニングしただけだ、と言っても、女性研究員たちは聞き入れない。
今までは、あくまで業務としてえり好みをせずに再クローニングをしていた女性研究員たちが、自分の好みの顔の男を選んでクローニングしたり、動物の遺伝子を組み込んでミュータントを作製するようになった。
「いいんじゃないか。それでそのクローンと自然交配できたら、棚から牡丹餅だ」
いや、クローンが成熟した頃には育てていた女性研究者が繁殖適齢期を過ぎているのでは、と、タカユキ35は思ったが、言わないでおいた。
女性研究員たちはイケメンの細胞を選んでクローニングしたりカッコイイミュータントを作ったが、出来上がったイケメンクローンやミュータントが成熟しても、恋をしたり自然繁殖には至らなかった。
イケメンのクローンとカッコイイミュータントがBLにならないかと、目をキラキラさせて観察していた。




