第65話 黒幕の輪郭
火は、小さくなっていた。
だが――消えてはいない。
ルクサリア各地で起きた放火。
暴動未遂。
そして、残された歪んだ紋章。
それらは繋がり始めていた。
*
レギオン、均衡評議会。
机の上に並ぶ報告書。
同じ印。
同じ手口。
同じ流れ。
「……偶然じゃない」
カミラが言う。
誰も否定しない。
*
サディークが資料を叩く。
「資金はここだ」
全員が見る。
交易ルート。
複数の小商会。
そして。
「匿名の資金移動」
エルミナが笑う。
「やっと見えたわね」
その目は鋭い。
*
「表に出ない資金」
「複数の口座」
「同時期の移動」
一つずつ繋がる。
点が線になる。
*
カイエルが言う。
「これは」
一言。
「国家ではない」
沈黙。
*
「個人でもない」
リュネが小さく言う。
「……組織」
その言葉で、空気が変わる。
*
イリスは静かに言う。
「名前は」
短く。
*
誰も答えない。
だが。
レオナが低く言う。
「オルディス」
沈黙。
それが、初めて明確に出た名前。
*
その頃。
ルクサリア。
リリアは同じ資料を見ていた。
「……繋がってる」
エリアナが言う。
「全部」
リリアは頷く。
*
「暴動」
「放火」
「不信」
「全部、誘導されてる」
冷静に分析する。
*
「でも」
エリアナが言う。
「どうして?」
その問いは核心だった。
*
リリアは少しだけ考える。
そして。
「簡単よ」
短く言う。
「均衡を壊すため」
*
沈黙。
それ以上でも、それ以下でもない。
*
「でもそれだけじゃない」
リリアは続ける。
「壊した後がある」
エリアナが息を呑む。
*
「空白を作る」
「その後に」
一言。
「入る」
*
それは、国家の乗っ取りと同じだった。
*
その時。
兵が駆け込んでくる。
「報告!」
「密会を発見!」
空気が変わる。
*
「どこ?」
「港の倉庫です!」
リリアは即座に動く。
「行くわ」
*
夜。
港。
倉庫の影。
静かに近づく兵たち。
中から声がする。
*
「……次は首都だ」
「選挙を止める」
「資金は回した」
低い声。
複数。
*
リリアが手を上げる。
合図。
一斉に突入。
*
「動くな!」
剣が抜かれる。
逃げる影。
だが。
一人が捕まる。
*
「……誰の指示だ」
リリアが問う。
男は笑う。
「遅い」
一言。
*
「もう動いてる」
その目は狂気ではない。
確信。
*
「どこで」
男は答える。
「王都」
沈黙。
*
レギオン。
報告が届く。
「組織確認」
「オルディス関連」
カイエルが言う。
「確定です」
*
イリスは静かに言う。
「場所は」
*
「……レギオン」
空気が凍る。
*
レオナが立ち上がる。
「内部か」
カミラ。
「あり得る」
エルミナ。
「むしろ当然」
*
リュネが呟く。
「信仰も」
サディーク。
「市場も」
カイエル。
「制度も」
*
イリスが言う。
「すべて」
一言。
「侵食されています」
*
地下。
暗い部屋。
オルディスは笑っていた。
「いい」
低い声。
「見えたか」
そして。
「だが遅い」
*
彼の背後には、複数の影。
軍服。
商人。
神官。
そして。
均衡機構の徽章をつけた者。
*
「均衡は」
ゆっくり言う。
「内側から壊れる」
*
レギオンの夜は静かだった。
だが。
その内側では。
すでに崩壊が始まっていた。
読んでいただきありがとうございます!
ついに黒幕――オルディスの「輪郭」が見えてきました。
しかも敵は外ではなく、内側に潜んでいる。
ここから一気に物語は加速します。
「誰が味方で、誰が敵なのか」その境界が崩れ始めます。
次話はついに――“内部の裏切り”が明確になります。
続きが気になったら、
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次話もお楽しみに。




