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婚約破棄された地味令嬢は、辺境で国を再建する ~無能扱いした王太子が後悔してももう遅い ―捨てられたのでお金の管理をやめたら、王都が崩壊しました  作者: 桜庭ルナ
第3部:均衡の試練編

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第61話 残された王位

 戦いは、終わった。


 だが――静けさは訪れなかった。


 ルクサリア公都ルクス。


 崩れた城壁、焼けた街路、閉ざされた市場。


 そして、誰も座っていない王座。


 *


 広場に人が集まっていた。


 だが歓声はない。


 勝利もない。


 ただ、戸惑いだけがあった。


「……結局、誰が王なんだ?」


 誰かが呟く。


 その言葉は、静かに広がった。


 *


 エリアナは玉座の前に立っていた。


 足元には、割れた石。


 戦いの痕跡。


 彼女はまだ王ではない。


 だが、王に最も近い場所にいる。


「……」


 言葉が出ない。


 民を守ると決めた。


 戦いも、逃亡も乗り越えた。


 だが――


 最後の一歩が、見えない。


 *


 その時、扉が開く。


 均衡機構の一団が入ってくる。


 レオナ。


 カミラ。


 リュネ。


 そして。


 リリア。


 *


 空気が変わる。


 誰もが彼女を見る。


 王ではない。


 だが、この場で最も「決断」をしてきた人物。


 *


 リリアはゆっくりと歩く。


 王座の前まで。


 そして止まる。


「……空いてるわね」


 その一言に、空気が揺れる。


 軽い言葉。


 だが重い意味。


 *


 カミラが言う。


「選挙は不成立」


 レオナ。


「軍で決めるか?」


 リュネは首を振る。


「それは繰り返しです」


 沈黙。


 誰もが分かっている。


 ここで間違えれば、


 また戦争になる。


 *


 リリアは玉座を見つめていた。


 そして。


「一つだけ方法がある」


 全員が彼女を見る。


 *


「王を決めない」


 沈黙。


 理解が追いつかない。


 *


 エリアナが言う。


「……どういうことですか」


 リリアは振り向く。


「暫定政権」


 短く言う。


「王不在で国家を動かす」


 *


 ざわめきが広がる。


「そんなことが……」

「できるのか?」


 当然の反応。


 *


 カイエルがいれば頷いただろう。


 だが今は、リリアが言う。


「均衡機構は」


 一歩前に出る。


「それをやっている」


 静寂。


 *


「国家も同じ」


「王がいなくても動く」


 そして。


「制度で」


 *


 レオナが言う。


「不安定だ」


 リリアは即答する。


「王を無理に立てるよりはマシ」


 エルミナがいれば笑っていた。


 だが今は、沈黙だけがある。


 *


 カミラが言う。


「民意は?」


 リリアは答える。


「だからこそ暫定」


「再選挙までの時間を作る」


 理にかなっている。


 だが――


 感情が追いつかない。


 *


 エリアナは玉座を見つめた。


 そこに座ることもできた。


 名乗ることもできた。


 だが。


 彼女はゆっくりと首を振る。


「……私は」


 小さく言う。


「まだ、その資格はありません」


 沈黙。


 それは強さだった。


 *


 リリアはわずかに微笑む。


「なら決まりね」


 *


 カミラが記録を取る。


「ルクサリア暫定政権」


 レオナが短く言う。


「軍は監視に留める」


 リュネ。


「信仰も介入しない」


 均衡が再び形になる。


 *


 民衆のざわめきが変わる。


 完全な安心ではない。


 だが。


 崩壊ではない。


 *


 その時。


 一人の男が叫んだ。


「また上が決めたのか!」


 空気が凍る。


「選挙も意味がなかった!」


「結局、同じだ!」


 その声は広がる。


 共鳴する。


 *


 リリアはその男を見る。


 逃げない。


「そうね」


 静かに言う。


 ざわめきが止まる。


 *


「完璧じゃない」


「間違いもある」


「でも」


 一歩前に出る。


「何も決めない方が、もっと悪い」


 沈黙。


 その言葉は、重い。


 *


 男は何も言えない。


 ただ、睨む。


 そして。


 視線を落とす。


 *


 均衡は、完全ではない。


 だが。


 動いている。


 *


 レギオン。


 その報告を受けて、イリスは言う。


「よくやりました」


 小さく。


 だが確かに。


 *


 だが。


 その直後。


 新たな報が入る。


「グラント」


「所在不明」


 空気が変わる。


 レオナが言う。


「……逃げたか」


 カミラ。


「終わってない」


 *


 イリスは静かに言う。


「はい」


 一言。


「終わっていません」


 *


 地下牢。


 オルディスは笑っていた。


「いい」


 低い声。


「王を消したか」


 そして。


「なら次は」


 目が細くなる。


「国家を消す」


 *


 均衡は、一つ前に進んだ。


 だが同時に。


 より大きな問題を生んでいた。


 ――王なき国家。


 それは安定か。


 それとも崩壊の始まりか。


 まだ誰にも分からない。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


ついにルクサリアは「王を決めない」という選択にたどり着きました。

これは安定なのか、それともさらなる混乱の種なのか――


そして逃げたグラント、動き始めるオルディス。

物語はここから「王位」と「国家の本質」に踏み込んでいきます。


次話では、いよいよ「民衆の不信」と「制度の限界」が正面衝突します。


少しでも続きが気になったら、

ぜひ【ブックマーク】や【評価】で応援していただけると嬉しいです!


それでは、次話でお会いしましょう。

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