第55話 軍事国家の圧力
ルクサリア暫定選挙。
その決定は、大陸全体に衝撃を与えていた。
国家の王を、制度が決める。
しかも内戦の最中に。
前例はない。
そして当然――
反発もあった。
*
ヴァルド軍本部。
重厚な石の会議室。
レオナは報告を受けていた。
「現場の将軍たちからです」
「選挙に反対」
「即時制圧を要求」
紙が机に置かれる。
レオナはそれを一瞥した。
「当然だな」
軍は効率を求める。
内戦は叩き潰すのが最も早い。
選挙など、時間の無駄に見える。
*
「ですが」
副官が言う。
「均衡評議会の決定です」
レオナは黙る。
そして小さく息を吐いた。
「分かっている」
彼女は軍人だ。
だが今は同時に、
均衡機構の一員でもある。
*
「問題は」
レオナが言う。
「現場が従うかだ」
その一言で空気が重くなる。
命令は出せる。
だが納得は別だ。
*
レギオン。
均衡評議会。
カミラが言う。
「予想通りね」
エルミナ。
「軍は嫌うわ」
サディーク。
「時間がかかるからな」
リュネ。
「だが必要な時間です」
カイエル。
「制度は即効性がない」
イリスは静かに聞いていた。
*
レオナが口を開く。
「現場は動く」
全員が彼女を見る。
「制圧の準備を始めている」
沈黙。
それは危険な兆候だった。
均衡機構の決定と、
現場の軍の判断がズレている。
*
カミラが言う。
「止めて」
短く。
レオナは答える。
「止める」
だが。
一拍置く。
「だが一つ言っておく」
全員の視線が集まる。
「選挙が失敗すれば」
低い声。
「次は止めない」
重い言葉だった。
*
エルミナが言う。
「期限を決めましょう」
「長引けば市場が死ぬ」
サディーク。
「資源も同じだ」
カミラ。
「民意も持たない」
リュネ。
「信仰も崩れる」
カイエル。
「つまり」
一言。
「時間制限付き選挙」
イリスが頷く。
「七日」
短い。
だが長すぎない。
*
その決定はすぐに伝達される。
ルクサリアへ。
七日以内に選挙。
失敗すれば軍事介入。
それは事実上の
**最後通告**だった。
*
ルクサリア南部。
王弟グラントはその報を聞く。
「……選挙だと?」
側近が言う。
「均衡機構の決定です」
グラントは笑った。
「ふざけている」
冷たい声。
「戦場で投票?」
「そんなものに国家を預けるか」
だが。
彼は考える。
軍で勝てばいい。
だが――
選挙で負ければ正統性を失う。
*
一方。
公女エリアナ。
彼女は難民の中でその報を聞く。
「七日……」
短い。
あまりにも。
だが。
彼女は言う。
「やる」
迷いはない。
「民に選ばせる」
その目は強かった。
*
レギオン。
イリスは窓の外を見ていた。
都市は静かだ。
だが大陸は揺れている。
「制度は」
小さく呟く。
「人を試す」
そして。
「人も制度を試す」
どちらが勝つかではない。
どちらが耐えられるか。
*
地下牢。
オルディスは笑っていた。
「いい」
静かな声。
「時間制限」
そして。
「焦り」
彼は知っている。
人は追い詰められると、
正しい選択をしない。
「均衡は」
一言。
「人の弱さに依存している」
その目は鋭い。
七日。
それが、
均衡機構の最初の賭けだった。
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