第52話 小国ルクサリア内戦
ルクサリア公国。
その名は、大陸においてほとんど知られていない。
豊かでもなく、強くもない。
だが、重要だった。
交易路の結節点。
それだけで国家は価値を持つ。
そして今、その国は燃えていた。
*
国境沿い。
アウレリア軍の監視部隊が展開している。
「難民、増えています」
報告が上がる。
すでに一万二千。
子供が多い。
老人も多い。
武器を持たない人間ばかりだ。
レオナはその光景を遠くから見ていた。
「戦場の匂いだな」
静かに言う。
まだ本格的な戦闘ではない。
だが確実に、崩壊が始まっている。
*
一方、レギオン。
均衡評議会は次の段階へ進んでいた。
「内部情報」
カイエルが言う。
「二勢力」
地図が映る。
ルクサリアは分裂していた。
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第一勢力
王弟派
王の弟を擁立。
軍部の支持が厚い。
迅速な統制を主張。
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第二勢力
公女派
王の娘。
民衆と宗教勢力の支持。
正統性を主張。
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エルミナが言う。
「典型的ね」
カミラが頷く。
「軍と民」
リュネが補足する。
「そして信仰」
公女は宗教勢力に支持されている。
つまりこれは単なる権力争いではない。
思想戦でもある。
*
サディークが言う。
「問題は」
「どちらが勝つかではない」
全員が理解する。
「どちらも勝たない可能性だ」
長期内戦。
それが最悪。
*
イリスが言う。
「接触します」
カミラがすぐ反応する。
「仲裁?」
「いいえ」
イリスは首を振る。
「観測」
まだ早い。
均衡機構は「介入しすぎない」ことも重要。
*
その頃。
ルクサリア国内。
公都ルクス。
街の半分が閉ざされていた。
兵が通りを封鎖している。
人々は不安げに空を見ていた。
その中を、一人の少女が歩いている。
白い衣。
公女、エリアナ。
まだ若い。
だがその目は強い。
「難民は?」
側近に問う。
「北へ流れています」
「食料は?」
「三日分」
短い沈黙。
エリアナは言う。
「分配を」
「兵にも?」
「全員に」
彼女の統治は、まだ理想的だった。
だが。
現実は違う。
*
一方、南部拠点。
王弟、グラント。
彼は地図を見ていた。
「軍を動かす」
即断。
「北を制圧する」
側近が言う。
「難民が出ます」
「構わん」
冷たい声。
「国家は安定が全てだ」
彼は現実主義だった。
だがそれは同時に、
多くを切り捨てる思想でもある。
*
レギオン。
均衡評議会。
新たな報告が入る。
「王弟派、進軍開始」
レオナが言う。
「来たな」
カミラ。
「公女側は?」
「防衛体制」
エルミナが言う。
「市場がさらに荒れる」
サディーク。
「航路、三日で止まる」
リュネ。
「宗教衝突、拡大」
すべてが悪化している。
*
カイエルが言う。
「第二判断が必要です」
均衡機構は、止まらない。
イリスが言う。
「次は」
一言。
「どこまで踏み込むか」
レオナが笑う。
「ようやく本題か」
均衡は簡単ではない。
踏み込めば干渉。
踏み込まなければ崩壊。
その中間を選び続ける。
それがこの制度。
*
そしてその頃。
地下牢。
オルディスは静かに笑っていた。
「始まったな」
鉄格子の向こう。
彼の目は遠くを見ている。
「均衡の試練」
ゆっくりと呟く。
「人は」
そして。
「どこまで我慢できるか」
その声は低い。
だが確信に満ちていた。
ルクサリアの炎は、
ただの内戦ではない。
均衡そのものを試す、
最初の火種だった。
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