第47話 即応条項
港の炎はまだ消えていない。
それでも七王国の代表は席を立たなかった。
むしろ――
決断の速度は上がっていた。
*
「次は軍事だ」
レオナが言う。
彼女の声は低く、重い。
「金融も資源も意味はない」
「国家が守れなければな」
誰も反論しない。
それは真実だった。
*
「侵攻確認時」
レオナは円卓を見渡す。
「即応」
「議論は後だ」
カミラが言う。
「それでは軍の暴走を止められない」
レオナは頷く。
「だから監査を入れる」
イリスが言う。
「三国監査」
「発動から七日以内」
サディークが問う。
「否決された場合」
「即時停止」
短い答え。
*
レオナが腕を組む。
「七日」
「長い」
「だが現実的だ」
戦争は一瞬で決まらない。
だが監査が早すぎれば、軍は動けない。
均衡。
それが必要だった。
*
レティシアが言う。
「指揮系統は?」
レオナが答える。
「各国軍」
「統合軍は作らない」
イリスが頷く。
「国家は残る」
これは帝国ではない。
均衡機構。
*
カイエルが静かに言う。
「だが一つ必要です」
「何だ」
レオナが問う。
「情報共有」
円卓が静まる。
「侵攻の確認は」
「誰がするのか」
重要な問題だった。
誤報で戦争は起きる。
*
リリアが言う。
「共同監視機構」
「衛星」
「通信」
「諜報」
エルミナが笑う。
「市場より高い制度ね」
「でも必要」
リリアは言う。
*
レオナは少し考える。
そして言った。
「いい」
「軍も情報を出す」
それは大きな譲歩。
軍事国家が諜報共有を認めた。
*
その瞬間。
会議場の外で再び騒ぎが起きた。
衛兵が駆け込む。
「侵入者!」
「会議棟内部で爆発!」
円卓が凍る。
爆発。
会議場の中で。
*
レオナは即座に立ち上がる。
「伏せろ!」
衛兵が動く。
だが次の瞬間――
廊下の奥で煙が上がる。
爆薬は小さい。
だが意図は明確。
恐怖。
混乱。
会議の中断。
*
イリスは動かない。
ただ言った。
「続けます」
レオナが彼女を見る。
イリスは言う。
「敵は恐怖で止めたい」
「だから止めない」
短い沈黙。
そしてレオナが笑う。
「いい度胸だ」
彼女は椅子に戻る。
「軍事条項」
「合意だ」
その一言で、柱が一つ完成した。
即応条項。
戦争を防ぐための戦争権。
*
だが同時に。
会議棟の影の中で、一人の男が歩いていた。
黒衣。
静かな足取り。
オルディス。
彼は小さく笑う。
「均衡は強い」
炎の揺らぎが彼の目に映る。
「だが」
低く呟く。
「壊れない秩序はない」
そして男は姿を消した。
七王国の均衡は、確かに形になりつつある。
だが同時に、
それを壊そうとする影もまた、
確実に近づいていた。
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