第46話 共同安定基金
七王国会議、三日目。
港の煙はまだ消えていない。
だが円卓の議論は止まらなかった。
むしろ――
加速していた。
*
「まず通貨」
エルミナが言う。
「制度を作るなら、最初は金融」
誰も反対しない。
市場は最も速く崩れる。
そして最も速く秩序を壊す。
「共同安定基金」
彼女は机に指を置く。
「各国が拠出」
「通貨急落時、即時介入」
リリアが続ける。
「拠出比率は経済規模」
「介入は七王国監査」
カミラが言う。
「透明性は?」
「全て公開」
エルミナが頷く。
「市場は透明性を好む」
それが第一の柱。
*
サディークが言う。
「資源」
短い言葉。
「共同備蓄」
彼は机に地図を広げる。
「鉱物」
「穀物」
「燃料」
大陸の主要資源。
「各国が備蓄を共有」
「供給停止時、放出」
エルミナが微笑む。
「価格操作は難しくなる」
「だからこそ意味がある」
リリアが言う。
第二の柱。
*
レオナが腕を組む。
「軍」
全員が彼女を見る。
「緊急軍事条項」
「侵攻確認時」
「王または国家代表が即応」
「だが」
彼女は続ける。
「三国監査」
イリスが頷く。
「戦争の濫用を防ぐ」
第三の柱。
*
カミラが言う。
「公開」
短く。
「議事録公開」
「盟約公開」
「基金公開」
民意は見えない制度を信用しない。
第四の柱。
*
リュネが静かに言う。
「信仰」
「自由」
「神殿自治」
「国家非干渉」
信仰を否定しない。
だが国家も支配させない。
第五の柱。
*
カイエルが言う。
「そして最後」
彼は円卓中央を見る。
「均衡評議会」
七王国代表。
緊急時のみ発動。
制度監視機関。
第六の柱。
*
六つの柱が並ぶ。
金融。
資源。
軍事。
公開。
信仰。
均衡。
沈黙。
それは、ほぼ一つの国家に近い構造だった。
だが国家ではない。
均衡機構。
*
イリスはゆっくり言う。
「これが」
「大陸秩序です」
レオナが笑う。
「剣なしの帝国か」
「違う」
カイエルが言う。
「均衡」
エルミナが言う。
「市場は歓迎する」
サディーク。
「資源も守られる」
カミラ。
「民意も」
リュネ。
「信仰も」
沈黙。
*
だがその瞬間。
会議場の扉が再び開く。
「報告!」
「港爆発、第二倉庫も炎上!」
エルミナが立ち上がる。
「備蓄予定地!」
レオナの目が鋭くなる。
「敵は」
「会議を止めたい」
イリスは静かに言う。
「なら」
一言。
「止めません」
全員が理解する。
これは外交ではない。
秩序誕生の瞬間。
敵はそれを壊したい。
だからこそ。
円卓は止まらない。
均衡機構は、今まさに形になろうとしていた。
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