第36話 七王国会議、開幕
中立都市レギオン。
七王国のどこにも属さぬ、交易と外交のためだけに存在する都市。
石畳は磨かれ、旗は七色に揺れている。
会議はここで開かれる。
戦場でも、王城でもなく、
均衡の象徴として築かれた場所で。
*
最初に到着したのは共和国ノヴァ。
議長カミラは馬車を降りるなり、周囲を観察する。
「舞台は整っている」
公開を求めたのは彼女だ。
会議は半公開形式。
記録は各国へ共有される。
密室は最小限。
それが条件だった。
*
次に到着したのはマレク商業都市連邦。
エルミナは笑みを崩さない。
「緊張している空気ほど、値が動く」
彼女の視線は建物ではなく、人の表情を読む。
*
ヴァルド軍事王国。
レオナは甲冑姿ではなく、軍服で現れる。
だがその存在感は圧倒的だ。
「ここが言葉の戦場か」
彼女は低く呟く。
*
神権国家エルダリア。
大巫女リュネが静かに階段を上る。
祈りの香が漂う。
信仰もまた、武器だ。
*
砂漠王国ザハル。
サディークはほとんど言葉を発しない。
だが背後の護衛と使節団は重い。
沈黙が圧になる。
*
最後に到着したのはセレスタ公国。
カイエルは柔らかく微笑む。
「ついに揃いましたね」
理念の観察者。
だが彼もまた、試す側だ。
*
そして――
アウレリア王国。
イリスは王冠を被らずに現れた。
象徴ではなく、制度の代表として。
隣にはリリア。
少し後ろにアーネスト。
軍代表としてレティシア。
王族も、商人も、軍も並ぶ。
それ自体が宣言だった。
*
会議場中央。
円卓が置かれている。
七つの席。
その中央に、空席。
盟約の象徴席。
どの国も座らない。
秩序そのものを示す席。
*
開会の鐘が鳴る。
静寂。
イリスが立つ。
「七王国代表の皆様」
「ようこそ、レギオンへ」
視線が集まる。
「本日、我々は大陸盟約の改定を議題とします」
「王位選出制を導入する国家として」
「その責任を説明します」
レオナが腕を組む。
エルミナは微笑む。
リュネは目を閉じる。
カミラは記録を取り始める。
サディークは沈黙。
カイエルは観察する。
*
「我が国は王位を解体しました」
静かな衝撃。
「王は永遠ではありません」
「王は制度の一部です」
ざわめき。
「だが秩序は永遠でなければならない」
空気が張り詰める。
「力、利益、信仰、民意、資源、理念」
「それらを繋ぐ枠組みを作る」
「それが本会議の目的です」
沈黙。
やがてレオナが口を開く。
「言葉は美しい」
「だが戦場では通用しない」
即座にエルミナ。
「市場でも同じ」
カミラが続く。
「民意は理想を踏み潰すこともある」
リュネ。
「神意をどう扱う」
サディーク。
「資源は理想に従わぬ」
カイエル。
「理念は現実に試される」
七つの正義が、同時にぶつかる。
*
イリスは動じない。
「だからこそ」
「同時に議論する」
この場は会議ではない。
思想の戦場。
制度の公開審査。
大陸の未来を決める円卓。
外では通貨が揺れ、
国境では兵が睨み合い、
市場では数字が動き、
砂漠では価格が跳ねる。
全てが、この場に繋がっている。
鐘が再び鳴る。
七王国会議は、正式に開幕した。
これは交渉ではない。
これは均衡を賭けた戦争だ。
剣なき戦争が、始まる。
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