第31話 市場の支配者
海に浮かぶ都市――マレク商業都市連邦。
城壁よりも高いのは、倉庫だ。
塔よりも目立つのは、取引所の旗。
ここでは王冠よりも契約書が重い。
*
最上階の会議室。
エルミナ・カルディアは七王国会議の招請状を指先で弾いた。
「王位選出制」
微笑む。
「面白い商品ね」
側近が眉をひそめる。
「商品、ですか」
「制度は信用でできている」
「信用は市場で測れる」
彼女は立ち上がる。
「成功すれば、投資先」
「失敗すれば、売り」
それだけの話。
*
マレク中央取引所。
電光掲示板に並ぶ数字。
アウレリア通貨は、まだ安定圏。
だが脆い。
「資源価格を少し動かす」
エルミナは命じる。
「ザハル産鉱物の先物を買い占め」
「同時に、アウレリア国債の売りを流す」
「露骨すぎませんか」
「露骨でいい」
市場は心理戦だ。
*
王都、アウレリア。
「通貨が小幅下落」
フィオナが報告する。
「マレクの動きと一致」
「予想通りです」
イリスは淡々と答える。
「防衛策は」
「準備済み」
制度は言葉だけでは守れない。
数字で支える。
*
商会会館。
「マレクが仕掛けている」
カイルが言う。
リリアは資料を読む。
「ザハル鉱物の価格上昇」
「同時に国債売り」
「揺さぶりね」
「どうする」
「動かない」
彼女は静かに言う。
「市場は恐怖に反応する」
「恐怖を見せない」
商人としての矜持。
王候補としての覚悟。
*
マレク。
エルミナは報告を受ける。
「アウレリアはパニックを起こしていません」
「当然」
彼女はワインを傾ける。
「揺れないなら、次」
「会議で直接問う」
制度は、利益を生むのか。
それが彼女の焦点。
*
王城、夜。
イリスはリリアを呼ぶ。
「市場はあなたの領域です」
「ええ」
「七王国会議で、彼女は必ず揺さぶります」
「分かっています」
短い沈黙。
「怖いですか」
「ええ」
リリアは正直に答える。
「でも、怖い相手ほど価値がある」
強い。
商人は強い。
*
エルミナは窓辺に立つ。
「王位選出制」
「理念は美しい」
「だが利益は?」
彼女は静かに笑う。
「会議で確かめましょう」
制度が市場に耐えるか。
王が数字に耐えるか。
七王国会議は近い。
軍は試し。
市場は揺さぶり。
信仰は問う。
民意は叫ぶ。
その中心に立つのは、選ばれる王。
制度はまだ完成していない。
だが試練は、容赦なく近づいている。
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