第30話 女将軍の嘲笑
ヴァルド軍事王国。
その王都は、石と鉄で出来ている。
華美はない。
飾りもない。
あるのは、鍛えられた兵と、研がれた刃。
*
城壁の上。
レオナ・ヴァルドは遠くの平原を眺めていた。
「王位選出制」
呟く。
「言葉遊びだな」
副官が控える。
「アウレリア王国は本気のようです」
「本気で弱くなろうとしているのか」
淡い笑み。
嘲りではない。
試す者の笑みだ。
*
「将軍」
使者が到着する。
「アウレリアより正式招請」
「七王国会議への出席を要請」
レオナは封を切らず、言う。
「返書を出せ」
「出席する、と」
副官が驚く。
「認めるのですか」
「認める?」
彼女は振り返る。
「戦場は、自分の目で見る」
制度が国家を守れるか。
それを、軍人の目で。
*
演習場。
兵が整列する。
レオナは歩きながら問う。
「敵が攻めてきたらどうする」
「撃退します!」
「王が迷ったら」
一瞬の沈黙。
「……命令を待ちます!」
レオナは止まる。
「愚かだ」
兵が凍る。
「王が迷えば、国家は迷う」
「迷わぬ王が必要だ」
その声は重い。
「選ばれる王に、迷いは許されるのか」
それが彼女の疑問。
*
王都、酒場。
「アウレリアは王を選ぶらしい」
「選ぶ?祭りか?」
笑いが起きる。
「戦場は多数決ではない」
「強い者が立つ」
軍事国家の常識。
制度は、弱さの象徴に見える。
*
一方、アウレリア王国。
七王国からの返書が届く。
「ヴァルド、出席確定」
アルヴェルトが告げる。
「女将軍自ら来る」
レティシアが静かに言う。
「強い」
「ええ」
イリスは頷く。
「制度を、力で試す者」
戦場の目が向けられる。
逃げられない。
*
王城、討論準備室。
リリアが資料を読み込む。
軍事費推移。
徴兵制度。
国境防衛計画。
女将軍レオナの戦歴。
「……強い」
カイルが言う。
「怖いか」
「怖い」
即答。
「でも、逃げない」
制度を語るなら、力を知らねばならない。
王は軍を理解しなければならない。
*
夜。
レオナは一人、剣を手にする。
「王を選ぶ、か」
刃が月光を反射する。
「ならば問おう」
「戦場に立てるか」
嘲笑は、軽蔑ではない。
挑戦だ。
制度は剣より強いのか。
王は、選ばれても立てるのか。
七王国会議は近い。
思想と軍事。
言葉と刃。
女将軍は、笑いながら向かってくる。
その視線は冷たい。
だがどこか、楽しんでいる。
弱いなら、潰す。
強いなら、認める。
単純で、残酷な論理。
アウレリアは、試される。
制度は、戦場に立つ準備があるのか。
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