第27話 資格の条件
王位選出評議会、第一回公開審議。
王城の大広間は、これまでにない緊張に包まれていた。
議題は一つ。
――王候補の最終資格条件。
制度の骨格を決める日だ。
*
「財産要件を設けるべきです」
地方貴族代表が言う。
「国家財政を理解するには、一定の資産管理経験が必要」
「それは富裕層に限定するということか」
民間有識者が反論する。
「平等はどうした」
「理想論では国家は動かない」
言葉がぶつかる。
リリアは傍聴席から静かに見ている。
自分の話ではない。
だが自分の未来の話でもある。
*
「軍歴を必須にすべきです」
軍代表が言う。
「戦場を知らぬ王は、決断できない」
「戦場を知らぬ者が多数だ」
法務監察官が冷静に返す。
「行政経験を重視すべき」
アーネストが口を開く。
「軍歴も、財産も、血も」
視線が集まる。
「必要条件ではない」
「だが国家を背負う覚悟は必要だ」
沈黙。
「覚悟をどう測る」
誰かが呟く。
そこが核心だ。
制度は数値化できる。
だが覚悟は、どうする。
*
イリスは静かに言う。
「公開討論を設けます」
ざわめき。
「候補者は、自らの理念を述べる」
「財政、軍事、外交、宗教」
「全てに対して」
逃げ場はない。
言葉で立つ。
王は、言葉の責任者でもある。
*
審議は続く。
最終決定案:
・年齢三十以上
・重罪歴なし
・資産・収入完全公開
・行政または軍務五年以上
・公開討論参加義務
・弾劾制度に同意
弾劾条項が加わると、空気が変わる。
「王も裁かれるのか」
「はい」
イリスは答える。
「王も制度の内側です」
王は頂点ではない。
責任の一部。
それが王位解体の完成形。
*
王都。
制度案が掲示される。
「王も弾劾?」
「本当にやるのか」
「前代未聞だ」
市場はざわつくが、暴れない。
恐怖よりも、好奇心が勝ち始めている。
*
商会会館。
「公開討論か」
リリアが呟く。
「あなたなら勝てる」
カイルが言う。
「私は候補ではない」
「まだ」
沈黙。
彼女の中で、何かが揺れている。
王位は欲しくない。
だが、逃げ続けるのも違う。
制度を信じると言った。
ならば、その中心から逃げるのか。
*
王城、夜。
アーネストが廊下に立つ。
「公開討論……」
血統は語れない。
理念で立つしかない。
それが平等。
それが試練。
「望むところだ」
小さく呟く。
王族最後の矜持は、血ではなく思想で示す。
*
セレスタ公国。
「公開討論を導入」
ミレイアが報告する。
カイエルは目を閉じる。
「興味深い」
「王を公開の場に立たせるか」
「理念が試される」
彼は静かに言う。
「だが理念は、群衆の熱に飲まれる」
制度は成熟へ向かっている。
だが同時に、不安定さも増している。
王候補が増えれば、
期待も増え、
失望も増える。
資格は定まった。
次は、戦いだ。
剣ではなく、言葉の。
王を選ぶ戦いが、始まろうとしている。
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