第78話 最後の選択
沈黙が、破られた。
「――証明する」
男の声だった。
広場の中央。
掲示の前。
全員の視線が集まる。
*
先ほど叫んだ記録官。
震えていた手は、もう止まっている。
*
「これが、元の記録だ」
彼は懐から紙を取り出す。
*
ざわめき。
*
リリアが一歩前に出る。
「見せなさい」
*
紙を受け取る。
*
比較する。
掲示された記録と。
*
沈黙。
*
「……違う」
*
エリアナが息を呑む。
*
筆跡は同じ。
だが。
内容が違う。
*
「改ざんされてる」
リリアが言う。
*
ざわめきが一気に広がる。
*
「じゃあ、これは……」
「誰が……」
*
疑い。
だが。
今回は違う。
*
逃げない。
隠さない。
*
「ここから追える」
カイエルの声が通信越しに入る。
*
「記録の流れ」
「修正履歴」
「時間差」
*
「特定できます」
*
リリアが言う。
「やりなさい」
*
即答。
*
レギオン。
カイエルが端末を操作する。
*
記録が流れる。
*
一つずつ。
繋がる。
*
「……ここだ」
*
全員が見る。
*
一つの名前。
*
沈黙。
*
カミラが呟く。
「……嘘でしょ」
*
エルミナも黙る。
*
レオナが目を細める。
*
その名前。
*
均衡機構の、内部。
*
「……やはり」
リュネが小さく言う。
*
イリスが静かに問う。
「本人は?」
*
カイエル。
「……います」
*
その瞬間。
空気が凍る。
*
扉が開く。
*
一人の男が立っている。
*
均衡機構の徽章。
*
だが。
その目は、もう違う。
*
「……見つかったか」
*
誰も動かない。
*
レオナが一歩前に出る。
「なぜだ」
*
男は笑う。
「簡単だ」
*
「終わらせるためだ」
*
沈黙。
*
「こんなもの」
手を広げる。
「いつか壊れる」
*
「なら」
一言。
「早い方がいい」
*
カミラが叫ぶ。
「ふざけないで!」
*
男は笑う。
「見ただろ」
*
「簡単に崩れる」
*
「信頼なんて」
*
その言葉は、正しかった。
だからこそ、危険だった。
*
リリアが前に出る。
「それでも」
*
男を見る。
*
「続ける」
*
男が眉をひそめる。
*
「なぜだ」
*
リリアは言う。
「決めたからよ」
*
一歩前へ。
*
「壊れるかどうかじゃない」
*
「続けるかどうか」
*
沈黙。
*
男はしばらく見つめる。
*
そして。
笑う。
*
「……くだらない」
*
だが。
*
「いい」
*
その目が変わる。
*
「なら」
一言。
「見てやる」
*
その瞬間。
彼は動かない。
*
逃げない。
*
それが。
答えだった。
*
レオナが拘束する。
*
終わり。
一つの裏切り。
*
だが。
*
リリアは知っている。
*
これは終わりじゃない。
*
ルクサリア。
広場。
*
掲示が更新される。
*
真実。
修正。
証明。
*
人々が見る。
*
沈黙。
*
そして。
*
一人が言う。
「……ちゃんと出てる」
*
また一人。
*
「隠してない」
*
その言葉。
*
流れが変わる。
*
投票へ向かう足が、戻る。
*
完全ではない。
だが。
確実に。
*
リリアはそれを見る。
*
「……これでいい」
*
小さく呟く。
*
レギオン。
イリスが言う。
「決まりました」
*
「制度を続ける」
*
その一言。
*
均衡は、選ばれた。
*
地下。
オルディスは静かに目を閉じる。
*
そして。
小さく笑う。
*
「……面白い」
*
「だが」
*
「終わらない」
*
影が揺れる。
*
均衡は、守られた。
一つの選択によって。
*
だが。
それはまだ――
終わりではない。
読んでいただきありがとうございます!
ついに“裏切りの正体”が明らかになりました。
そしてそれでも制度を選び続けるという決断。
ここが物語の核心です。
次はいよいよ最終決着。
均衡が「証明される」瞬間へ。
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次話もお楽しみに。




