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婚約破棄された地味令嬢は、辺境で国を再建する ~無能扱いした王太子が後悔してももう遅い ―捨てられたのでお金の管理をやめたら、王都が崩壊しました  作者: 桜庭ルナ
第3部:均衡の試練編

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第76話 内側の刃

 箱の中は、静かだった。


 だが――


 その静けさが、不自然だった。


 *


 リリアは、ゆっくりと手を入れる。


 投票箱の中。


 紙の束。


 重さ。


 *


「……多いわね」


 小さく呟く。


 *


 レオナが言う。


「流れは戻ってる」


 *


 確かにそうだった。


 火の中でも、人は並んだ。


 守られた流れ。


 取り戻した一票。


 *


 だが。


 リリアは紙を一枚取り出す。


 *


 見る。


 *


「……変ね」


 *


 エリアナが近づく。


「何がですか」


 *


 リリアは紙を見せる。


 *


 名前。


 候補者。


 そして。


 ――同じ筆跡。


 *


「……偶然?」


 エリアナが言う。


 *


 リリアは次の紙を取る。


 *


 同じ。


 *


 また一枚。


 *


 同じ。


 *


 沈黙。


 *


 レオナが低く言う。


「……やられたな」


 *


「内側」


 リリアが呟く。


 *


 レギオン。


 報告が届く。


「票に異常」


 *


 カイエルが資料を見る。


 *


 そして。


「……同一筆跡」


 静かに言う。


 *


 カミラが叫ぶ。


「また!?」


 *


 エルミナ。


「今回はもっと悪い」


 *


 サディーク。


「中に入ってる」


 *


 リュネ。


「止められない」


 *


 イリスが言う。


「止めます」


 *


 その声は、変わらない。


 *


 ルクサリア。


 リリアは紙を見つめる。


 *


「全部無効にする?」


 エリアナが問う。


 *


 リリアは首を振る。


「違う」


 *


「見つける」


 *


「何を」


 *


「混ざってる場所」


 *


 その発想。


 *


 レオナが理解する。


「全体じゃないのか」


 *


「全部壊す必要はない」


 リリアが言う。


 *


「壊れてる部分だけ」


 *


 それは。


 均衡そのものだった。


 *


 その時。


 カイエルから通信。


「……リリア」


 *


「同じ報告です」


 *


 リリアは言う。


「どこから?」


 *


 沈黙。


 一瞬。


 *


「……内部です」


 *


 空気が止まる。


 *


 リリアが問う。


「どこまで分かってる?」


 *


 カイエルは答える。


「範囲は限定的」


 *


「ですが」


 一言。


「管理層に近い」


 *


 沈黙。


 *


 それは。


 最悪だった。


 *


 リリアは目を閉じる。


 *


 そして。


「特定できる?」


 *


 カイエル。


「時間が必要です」


 *


 リリアは言う。


「ないわ」


 *


 その時。


 背後で音。


 *


 一人の記録官が、後ずさる。


 顔が青い。


 *


「……違う」


 小さく言う。


 *


 全員が見る。


 *


「違うんです……!」


 *


 震える声。


 *


「命令されたんです!」


 *


 空気が凍る。


 *


 レオナが一歩前に出る。


「誰に」


 *


 記録官は震える。


 *


「分からない……!」


 *


「でも……」


 *


 顔を上げる。


 *


「中にいます」


 *


 沈黙。


 *


「ここに」


 *


 その言葉は、刃だった。


 *


 リリアは、ゆっくりと周囲を見る。


 *


 兵。


 記録官。


 民衆。


 エリアナ。


 レオナ。


 *


 そして。


 通信の向こう。


 カイエル。


 *


「……そう」


 *


 小さく言う。


 *


「なら簡単ね」


 *


 全員が息を呑む。


 *


 リリアは言う。


「全員疑う」


 *


 沈黙。


 *


 その宣言。


 *


 均衡が、もう一段深くなる。


 *


 地下。


 オルディスは笑っていた。


 *


「いい」


 低い声。


 *


「疑え」


 *


「壊れる」


 *


 その目が光る。


 *


 そして。


「次は」


 一言。


「誰が残る?」


 *


 均衡は、まだ続いている。


 だが。


 その内側で。


 刃が回り始めていた。

読んでいただきありがとうございます!


ついに“内側の刃”が明確になりました。

敵は外ではなく、完全に内部へ。


ここからは「誰を信じるか」という極限のフェーズに入ります。


次話では、ついに均衡評議会の内部に踏み込みます。

――そして“疑い”が現実になります。


続きが気になったら、

ぜひ【ブックマーク】【評価】で応援いただけると嬉しいです!


次話もお楽しみに。

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