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婚約破棄された地味令嬢は、辺境で国を再建する ~無能扱いした王太子が後悔してももう遅い ―捨てられたのでお金の管理をやめたら、王都が崩壊しました  作者: 桜庭ルナ
第3部:均衡の試練編

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第75話 火は流れを焼く

 火は、今度は一つではなかった。


 広場の端。


 市場の屋台。


 倉庫の影。


 ――同時に、上がる。


 *


「火だ!」


 叫びが重なる。


 煙が一気に広がる。


 人が振り向く。


 足が止まる。


 *


 さっきまで続いていた流れ。


 投票へ向かう人の列。


 それが――


 揺れる。


 *


「……またか」


 誰かが呟く。


 その一言。


 *


 止まりかける。


 流れが。


 *


 リリアは、それを見ていた。


 すべてを。


 *


 理解している。


 これは偶然ではない。


 *


 “流れを壊すための火”


 *


「……広がるわね」


 小さく言う。


 *


 レオナが周囲を見る。


「制御できるか?」


 *


 リリアは首を振る。


「無理ね」


 即答。


 *


「全部は止められない」


 *


 その現実。


 *


 エリアナが叫ぶ。


「消火を!」


 兵が動く。


 だが。


 追いつかない。


 *


 火は意図的に散らされている。


 消す側の手を、分散させるために。


 *


「……くそ」


 レオナが舌打ちする。


 *


 その間にも。


 人の列が揺らぐ。


 *


「……危ない」


「離れよう」


「後にしよう」


 *


 崩れ始める。


 また。


 *


 その時。


 リリアが言う。


「いいわ」


 *


 全員が見る。


 *


「消さなくていい」


 *


「は?」


 レオナが眉をひそめる。


 *


「何言ってるの」


 カミラの声が重なる(通信越し)。


 *


 リリアは言う。


「全部守ろうとするから崩れるのよ」


 *


 そして。


 一歩前へ。


 *


「守る場所を決める」


 *


 沈黙。


 *


「ここだけ」


 投票箱を指す。


 *


「ここを守る」


 *


 レオナがすぐに理解する。


「……一点防衛か」


 *


 リリアは頷く。


「流れの“核”を守る」


 *


 その発想。


 *


 エリアナが息を呑む。


「他は……」


 *


「捨てる」


 *


 静かな断言。


 *


 重い。


 だが。


 合理的。


 *


 レオナが笑う。


「いい」


 *


「全員、配置変更!」


 *


 兵が動く。


 一斉に。


 *


 火から離れる。


 投票箱へ集まる。


 *


 円を作る。


 防衛線。


 *


 人々がその動きを見る。


 *


「……あそこだけ守るのか」


 *


 ざわめき。


 *


 火は広がる。


 だが。


 その中心だけが、守られる。


 *


 リリアが叫ぶ。


「来なさい!」


 *


「ここは止めない!」


 *


 その声は、炎より強かった。


 *


 沈黙。


 一瞬。


 *


 そして。


 一人が走る。


 *


 火を避けて。


 煙を抜けて。


 *


 投票箱へ。


 *


 紙を入れる。


 *


 音。


 *


 また一人。


 *


 また一人。


 *


 流れが、戻る。


 *


 完全ではない。


 だが。


 止まらない。


 *


 エリアナが叫ぶ。


「誘導を!」


 *


 人の流れが整理される。


 火を避けて。


 投票へ。


 *


 “流れ”が再構築される。


 *


 レギオン。


 その映像を見て、カミラが立ち上がる。


「……すごい」


 *


 エルミナが言う。


「市場と同じ」


 *


「全部は守らない」


「核だけ守る」


 *


 サディークが頷く。


「合理的だ」


 *


 イリスは静かに言う。


「はい」


 *


「それが均衡です」


 *


 地下。


 オルディスはそれを見ていた。


 *


 沈黙。


 *


「……なるほど」


 *


 小さく笑う。


 *


「捨てたか」


 *


 その目が細くなる。


 *


「なら」


 一言。


「次はそこだ」


 *


 指を動かす。


 *


 影が頷く。


 *


 ルクサリア。


 投票箱。


 *


 守られている。


 強く。


 *


 だが。


 その“核”に。


 *


 今。


 最大の脅威が近づいていた。


 *


 火ではない。


 *


 人でもない。


 *


 ――内側から。


 *


 均衡は、保たれている。


 ギリギリで。


 *


 だが。


 その綱は。


 今、最も危うい場所で――


 軋んでいた。

読んでいただきありがとうございます!


今回は「全部を守らない」という選択でした。

均衡の本質――“取捨選択”が初めて明確に機能した回です。


ただし敵も次の段階へ。

次は外からではなく、“内側”を狙ってきます。


ここからが本当の最終局面です。


少しでも面白いと感じていただけたら、

ぜひ【ブックマーク】【評価】で応援いただけると嬉しいです!


次話もお楽しみに。

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