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婚約破棄された地味令嬢は、辺境で国を再建する ~無能扱いした王太子が後悔してももう遅い ―捨てられたのでお金の管理をやめたら、王都が崩壊しました  作者: 桜庭ルナ
第3部:均衡の試練編

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第74話 守る一票

 刃は、今度は隠されていなかった。


 人混みの中。


 静かに、しかし確実に近づく影。


 その手にあるものは――明確だった。


 *


 リリアは、気づいていた。


 だが、動かない。


 *


 目の前。


 投票箱。


 そこに紙を入れようとしている少年。


 震えている。


 迷っている。


 それでも――進もうとしている。


 *


「……」


 リリアは、その少年を見る。


 *


 次の瞬間。


 影が動く。


 *


 一直線。


 少年へ。


 *


 速い。


 完全に狙っている。


 *


「――伏せろ!」


 レオナの声。


 だが間に合わない。


 *


 その瞬間。


 リリアが動く。


 *


 少年を押し倒す。


 *


 刃が振り下ろされる。


 *


 金属音。


 弾かれる。


 *


 レオナの剣。


 *


 襲撃者は即座に後退。


 だが逃げない。


 *


 周囲の影が動く。


 *


 二人。


 三人。


 *


 囲まれる。


 *


「……やっぱり来たわね」


 リリアが立ち上がる。


 *


 少年が震えている。


 だが。


 紙はまだ握っている。


 *


「……大丈夫?」


 リリアが問う。


 *


 少年は頷く。


 涙をこらえながら。


 *


「……入れろ」


 レオナが低く言う。


 *


 その声は、命令ではない。


 支えだった。


 *


 少年は立つ。


 震えながら。


 *


 そして。


 紙を入れる。


 *


 音。


 *


 その瞬間。


 襲撃者が再び動く。


 *


 今度は、投票箱を狙う。


 *


「させるか!」


 レオナが踏み込む。


 *


 衝突。


 短い。


 激しい。


 *


 だが。


 数が違う。


 *


 兵が間に合わない。


 *


 リリアは箱の前に立つ。


 *


「……これが狙いね」


 *


 次の瞬間。


 刃が迫る。


 *


 だが。


 止まる。


 *


 一人の男が、襲撃者の腕を掴んでいた。


 *


 老人。


 最初の一票の男。


 *


「……やめろ」


 低い声。


 *


 襲撃者が睨む。


 *


「どけ」


 *


 老人は動かない。


 *


「これは」


 一言。


「俺の一票だ」


 *


 沈黙。


 *


 その言葉は重かった。


 *


 襲撃者の動きが一瞬止まる。


 *


 その隙。


 *


 レオナが斬り込む。


 *


 決着。


 *


 襲撃者たちは退く。


 煙を残して。


 *


 静寂。


 *


 誰も動かない。


 *


 そして。


 ゆっくりと。


 ざわめきが戻る。


 *


「……守った」


 誰かが呟く。


 *


 リリアは息を吐く。


 *


 老人を見る。


 *


「ありがとう」


 *


 老人は肩をすくめる。


「……俺のだ」


 *


 その一言。


 *


 それは。


 ただの言葉ではなかった。


 *


 周囲の人間が、そのやり取りを見る。


 *


 一人が前に出る。


 *


 紙を取る。


 *


 書く。


 *


 入れる。


 *


 また一人。


 *


 また一人。


 *


 流れが、変わる。


 *


 さっきまでとは違う。


 *


 恐怖の中で。


 それでも進む流れ。


 *


 エリアナの目が潤む。


「……戻ってる」


 *


 リリアは言う。


「違うわ」


 *


「始まったのよ」


 *


 レギオン。


 その映像を見て、カミラが呟く。


「……戻ってる」


 *


 カイエルが言う。


「いいえ」


 *


「これは」


 一言。


「別物です」


 *


 イリスが頷く。


 *


「はい」


 *


「強い」


 *


 地下。


 オルディスは静かに目を細める。


 *


「……なるほど」


 *


 小さく笑う。


 *


「守るか」


 *


 その目が鋭くなる。


 *


「なら」


 一言。


「奪う」


 *


 ルクサリア。


 広場。


 *


 人は増えている。


 *


 だが。


 その中に。


 *


 別の影が混ざる。


 *


 今度は。


 刃ではない。


 *


 火。


 *


 均衡は、守られた。


 一度だけ。


 *


 だが。


 次に来るのは――


 もっと大きい。

読んでいただきありがとうございます!


ついに「一票を守る」という展開が来ました。

ここで初めて、“制度が人に守られる側”に変わりました。


ただし敵も次の段階へ進みます。

今度は「個人」ではなく、「流れ」そのものを壊しに来ます。


次話ではさらに大きな衝突が起きます。


面白いと感じていただけたら、

ぜひ【ブックマーク】【評価】で応援いただけると嬉しいです!


次話もお楽しみに。

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