表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された地味令嬢は、辺境で国を再建する ~無能扱いした王太子が後悔してももう遅い ―捨てられたのでお金の管理をやめたら、王都が崩壊しました  作者: 桜庭ルナ
第3部:均衡の試練編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/115

第73話 最初の一票

 静かだった。


 あまりにも静かすぎて、耳が痛くなるほどに。


 ルクサリア、公都ルクス。


 焼け跡の残る広場。


 人は、いない。


 *


 リリアは、その中央に立っていた。


 前回の残骸。


 焦げた投票箱。


 散らばった紙。


 踏み跡。


 すべてそのまま。


 *


「……ここからね」


 小さく呟く。


 誰もいない。


 だが。


 彼女は迷わなかった。


 *


 箱を起こす。


 灰を払う。


 歪んだままの木箱。


 だが。


 立つ。


 *


 机を置く。


 紙を並べる。


 筆を置く。


 *


 それだけ。


 それだけの準備。


 *


 エリアナが後ろで見ている。


「……本当に、やるんですか」


 声はまだ不安定だ。


 *


 リリアは振り返らない。


「やるわ」


 *


「誰も来なくても?」


 *


「来るまでやる」


 短い。


 だが揺るがない。


 *


 沈黙。


 風が吹く。


 紙が揺れる。


 *


 時間が過ぎる。


 *


 一刻。


 二刻。


 *


 誰も来ない。


 *


 エリアナが拳を握る。


 何もできない。


 それが一番辛い。


 *


 その時。


 足音。


 *


 一人の老人が現れる。


 あの、前に問いかけた男。


 *


 リリアは顔を上げる。


 *


「……まだやってるのか」


 老人が言う。


 *


「ええ」


 *


 それだけの会話。


 *


 老人はしばらく立っている。


 動かない。


 *


 リリアも動かない。


 ただ待つ。


 *


 長い沈黙。


 *


 やがて。


 老人がゆっくりと歩く。


 *


 机の前に立つ。


 紙を見る。


 *


「……どうせ壊れる」


 小さく言う。


 *


 リリアは答える。


「かもしれない」


 *


 老人が顔を上げる。


 *


「でも」


 リリアは続ける。


「やらないよりはいい」


 *


 沈黙。


 *


 老人は目を閉じる。


 そして。


 紙を取る。


 *


 震える手。


 だが。


 書く。


 *


 名前を。


 *


 そして。


 ゆっくりと。


 箱に入れる。


 *


 音。


 *


 小さな音。


 だが。


 確かに響く。


 *


 リリアはそれを見る。


 何も言わない。


 *


 老人が言う。


「……これで何か変わるのか」


 *


 リリアは答える。


「変える」


 *


 その目は揺れていない。


 *


 老人は小さく笑う。


「……なら」


 一言。


「もう少し見る」


 *


 その言葉は、確かに残る。


 *


 その様子を、遠くで見ていた影。


 一人。


 また一人。


 *


 近づく。


 *


 二人目が来る。


 *


 何も言わず、紙を取る。


 書く。


 入れる。


 *


 三人目。


 四人目。


 *


 流れは小さい。


 だが。


 確実にある。


 *


 エリアナの目が揺れる。


「……来てる」


 *


 リリアは言う。


「当たり前でしょ」


 *


「最初は、こうよ」


 *


 レギオン。


 その映像が映る。


 *


 カミラが呟く。


「……少なすぎる」


 *


 エルミナ。


「でもゼロじゃない」


 *


 サディーク。


「流れはある」


 *


 リュネが目を閉じる。


「……祈りが届いた」


 *


 カイエルが静かに言う。


「いいえ」


 *


「これは」


 一言。


「選択です」


 *


 イリスが頷く。


 *


 地下。


 オルディスはそれを見ていた。


 *


「……一票か」


 *


 小さく笑う。


 *


「無意味だ」


 *


 だが。


 その目は細い。


 *


「だが」


 一言。


「芽だ」


 *


 彼は手を上げる。


 *


「潰せ」


 *


 影が動く。


 *


 ルクサリア。


 広場。


 *


 人が少しずつ増えている。


 *


 だが。


 その中に。


 紛れている。


 *


 刃を持つ者が。


 *


 均衡は、再び始まった。


 だが。


 それはまだ、あまりにも小さい。


 *


 そして。


 それを壊そうとする力は――


 すぐそこまで来ていた。

読んでいただきありがとうございます!


ついに「最初の一票」が生まれました。

ここから逆転の物語が始まります。


ただし、この小さな流れを敵は見逃しません。

すぐに“次の一手”が打たれます。


次話では、この一票を巡って再び衝突が起きます。


面白いと感じていただけたら、

ぜひ【ブックマーク】【評価】で応援いただけると嬉しいです!


次話もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ