第67話 均衡の歪み
「改ざん、確認」
その一言で、空気が死んだ。
レギオン、均衡評議会室。
誰も動かない。
誰も呼吸すら忘れたように見える。
*
「どこまで」
レオナが低く問う。
カイエルが答える。
「一部です」
一拍。
「……ですが」
視線を上げる。
「証明できません」
沈黙。
それが最悪だった。
*
カミラが机を叩く。
「何それ」
怒り。
「改ざんされてるのに、証明できない?」
*
カイエルは静かに頷く。
「記録そのものが書き換えられている」
「元のデータがない」
*
エルミナが笑う。
乾いた笑い。
「完璧じゃない」
その一言が重い。
*
サディークが言う。
「市場は崩れる」
リュネ。
「信仰も揺らぐ」
レオナ。
「軍は動く理由を得る」
すべてが揃う。
最悪の形で。
*
イリスは静かに言う。
「発表はしません」
全員が彼女を見る。
*
「今これを出せば」
一言。
「均衡は終わります」
沈黙。
誰も反論できない。
*
カミラが言う。
「でも隠すの?」
イリスは首を振る。
「違います」
*
「取り戻します」
短い。
だが明確。
*
リリアが一歩前に出る。
「方法は?」
*
イリスは答える。
「公開再検証」
空気が動く。
*
「すべてを開示する」
「すべてを見せる」
そして。
「もう一度、選ばせる」
*
カミラが息を呑む。
「……もう一度?」
*
エルミナが言う。
「リスクが高すぎる」
サディーク。
「資源が持たん」
レオナ。
「軍は待たない」
*
イリスは言う。
「それでもやります」
その声に、迷いはなかった。
*
リリアが笑う。
わずかに。
「いいわね」
その目は鋭い。
「正面から行く」
*
ルクサリア。
エリアナは報告を受けていた。
「再選挙……?」
戸惑い。
当然だ。
*
「やるんですか」
側近が言う。
エリアナは少しだけ考える。
そして。
「……やります」
小さく。
だが確かに。
*
「今度こそ」
一言。
「最後まで」
その目は変わっていた。
*
その頃。
地下。
オルディスは静かに笑っていた。
「いい」
低い声。
「やり直すか」
*
「なら」
一言。
「もう一度壊す」
*
彼の前に立つ男。
均衡機構の徽章をつけている。
*
「次は?」
男が問う。
オルディスは答える。
「内部だ」
*
「一人でいい」
ゆっくり言う。
「裏切れば」
*
その言葉は軽い。
だが。
致命的だった。
*
レギオン。
カイエルは一人で立っていた。
窓の外を見る。
静かな街。
*
「……遅かったか」
小さく呟く。
その表情は読めない。
*
その時。
背後で扉が開く。
「カイエル」
イリスの声。
*
「あなたに任せます」
短く。
*
「再検証の管理」
カイエルは振り返る。
そして。
頷く。
「了解しました」
*
その目が、一瞬だけ揺れる。
誰も気づかない。
*
ルクサリア。
広場。
再び人が集まり始める。
不信。
怒り。
期待。
すべてが混ざる。
*
そして。
誰かが呟く。
「今度こそ……」
その言葉は小さい。
だが。
確かに広がる。
*
均衡は、もう一度試される。
今度は。
“信頼”そのものが。
*
そして。
その内側で。
一つの歪みが、確実に広がっていた。
――裏切り。
それはまだ、誰にも見えていない。
読んでいただきありがとうございます!
ついに均衡機構は「再選挙」という最大の賭けに出ました。
これは信頼を取り戻す一手か、それとも――完全崩壊の引き金か。
そして静かに忍び寄る「内部の歪み」。
次話では、ついに“裏切り”が表に現れます。
ここから一気に緊張感が跳ね上がります。
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次話もお楽しみに。




