妖精のアリス
四日目の朝、妖精はついに目を覚ました。ベッドから空気のようにひらっと飛び降りると二人の顔をまじまじと見つめて言った。
「まずは助けてくれてありがとう。ってまさか人間に助けられるとはね。僕は妖精のアリス。妖精の国の住人さ。最近人間界がたいへんだと聞いて調査して来たんだけど、途中で事故にあって、そこのおじいちゃんに拾われたわけ。さすがの僕も死ぬかと思ったよ。事故っていっても空腹の事故だけどね」
二人はぽかんとした顔をしている。開いた口が閉まらないのはこういうことだ。
「日本語を話せるのがびっくりした!? 大丈夫妖精は何でも話せるよ。世界中に僕のような妖精がいるからね」
二人が驚きを隠せないのをわかっていて、アリスは続ける。
「助けてくれたお礼に今からあなた達を妖精の国へ連れて行ってあげるよ」にこっと天使のような笑顔を見せ、アリスは言った。
三郎はやっと我に返って言った。
「まさか、この世に本当に妖精がいるなんて思わなかった。腰が抜けると思った。いやはや長生きしてみるもんだ」
三郎は戯言を言いながら、本論を思い出す。
「わし達を妖精の国へ招待してもらえるのは嬉しいんじゃが、妻は腰が悪くて行けんのだよ。妻を一人には出来ない。今回は遠慮しておくよ」
幸代は三郎の背中を押して言った。
「あんた、私はいいから行ってきなさいよ。こうして妖精さんに会えたのも縁だし、なんせ妖精さんの御心なんだよ。感謝しなきゃ。私は大丈夫だから」
何度拒んでも妻は行きなさいとだけ言ったので、三郎はアリスの好意を受け、妖精の国へ行くことにした。




