第二話 自分の夢を選ぶとき another
今夜は、コトハという女の子のところへ行った。
とてもまじめで、ちゃんと笑うことができる子だった。
でもね、その笑顔の奥で、ずっと小さな声が泣いていた。
「本当はちがうのに」って。
人は、ときどき自分の気持ちよりも、大切な人の期待を選ぼうとする。
やさしい人ほど、そうしてしまう。
でもそれはね、少しずつ自分の心を遠くに置いていくことでもある。
人間の夜を見ていると、新しく知ることばかりだ。
人は「やさしい」だけでは、眠れない夜もあるみたいだ。
ほんとうの気持ちをしまったままだと、心は静かなつもりでも、夜の中でずっと泣いているみたいだ。
だから今日は、コトハの中にある“本当の声”を見つけてあげたかった。
コトハが「音楽がやりたい」って言ったとき、その声はとてもまっすぐで、きれいだった。
ああ、この子は大丈夫だって思った。
夢を持っている子は、ちゃんと自分を知っているから。
ただ、少しだけそれを思い出すきっかけが必要なだけ。
ぼくは星砂をひと粒わたした。
あれはね、勇気を思い出すためのしるしなんだ。
コトハはすぐに全部を変えることはできないと思う。
でも、小さな一歩を踏み出した。
それでいいんだ。
自分の人生を選ぶって、とても大きなことだから。
ふわぁ……。
夜の空には、まだ見つかっていない涙もある。
だからぼくは、また次の夜へ行く。




