Enemy or Sister(1)
林の中に道はなく、街灯もなく、あるのは草と木だけで、ひたすらにそれらが陳列されているのだ。
木と言っても全てが針葉樹と言う種類の木で、葉が針のようにとがっていて鋭く細い、主にカラマツやスギであろうが、俺には見分けが付かない。
だがほったらかしの緑々しい自然ということではない。その手の者によって間伐されており、綺麗な形となっている。
管理された自然となっているため、歩き辛いわけではない。
それに対し草は刈られている様子はなく、自然のままに放置された自然の風景として残されているが、これには侵入者妨害の意味があるものだと思われる。
部長の背丈ほどの草も少なくなく、身を屈めることで姿を隠すこともできる。
詰まる所、視界不良である。
それに夜であることも重なっているためなおのこと見えないのだ。
これは相手から見を隠せると言う点では有効だが、逆を言えばこっちからの敵は見えないので、どっちもどっちだ。
部長が向かっているのは方角的に考えて『翠光館』裏であろう。
そこで戦前と合流するつもりだろうか?
弾数的に前線に出たくない俺だが仕方なくついて行く。
表から見た『翠光館』はとても整備されており、花壇には花、草も丁寧に刈られていたため、林の圧迫するような自然を感じることはできなかった。
しかしながらこの館の周りの林広い。
それを今実感させられている。
『翠光館』は東門に近い場所に建っており、その裏側から中央の噴水の通りまでの敷地はすべて林となっている。
それだけではない。
林はそれとは対角の方向にも同じだけ広がっているのでさらに厄介だ。
そんな中を進んでいるのだが、急に部長に足が止まる。
振り返り、そのまま俺は斜め後ろに木の裏まで押して、耳元まで顔を近づけようとするけど届かないので、少ししゃがみ込む。
「誰かいるわ」
木から覗くが俺には良くわからない。
「今、能力使える?」
「忘れてました」
本当に忘れていた。こんな時の使うと超便利な能力があったことを、だが部長との、キス、で少し形態に変化があったような気がしたが問題ないだろう。
速やかに目を閉じて、
……俺の能力は一体なんだった?
おかしい、何かがおかしい、無意識的に能力を使ったが、俺はあの時何と唱えたのか?
……そうだ、たしか『回路解析』だったはずだ。
だが、俺の頭はそれを受け入れようとしない。
直感的に詠唱を思い出してように、
―――――『思考解析(Re-Analyzer:リ-アナライザー)』と唱えるように念じる。
そう、静かに念じるように思考を、頭の中の見えない何かを切り替えるのだ。
目を開いた時には、俺の世界は変化している。
はずだったが、やはりいつもよりも部長の色がはっきりと見えてこない。
ぼやけているのか?
いや、違う、ピント合っていないわけではない。部長の姿ははっきりと見えている。
何かが変わったのだ。
いつも通りの能力ではない。
「京四郎、何ボサッとしているの?」
「してましたか?」
「私に見とれてたんだね!!」
「それは――」
改めて部長の凹凸の少ないからだを見る。
自信満々にない胸を張るが、小高い丘にも満たないくらい小さい。
「――ありませんね」
「即答すんな!!」
「痛いです、部長」
膝に回し蹴りをくらう。
「それで?」
辺りを見回せば白い発光体が三、四、いやそれ以上、距離は三十メートルといったところだ。
それだけならどれだけ良かったことか。
振り返れば、白い発光体、前後左右どこを見ても白い発光体が見える。
気のせいではない。
今の俺にその白いが少し薄れていること気にしている余裕はなかった。
「……囲まれてます」
「嘘でしょ?」
「残念ながら、後ろも風紀ではないですね」
そんなに深くは入り込んでいないはずだがこの数だ。
しかもかなり精密に移動している。
配置も等角度でこっちの動きが完全に把握されている。
「暗視スコープかしら?」
「いえ、違います。特殊装備はしてないようです」
「じゃあ?」
どこからか指示を出しているように思える。
正確のこっちが包囲されている。
「高い場所から見られている可能性が高いですね」
「タワーかしら?」
同時に上を見上げた時だった。
俺の能力が直感的に何かの射線を感じた。
反射的に二人ほぼ同時にしゃがんだ直後に俺たちの横三メートルあたりを『RPG-7』が光と爆音を出して通過して行ったのだ。
着弾は俺たちの後ろの方で爆発した。
囲んでいる奴らが撃った訳ではないようだ。それよりももっと奥の方から館の近くで戦闘している奴らの流れ弾だろう。
そのおかげではあるが陣形が崩れた!!
「あそこなら突破できます!!」
乱れて陣形の中で最も安全そうに方向を指さし走る。
USPを構えたまま周囲を警戒しつつそれでも速く移動する。
能力のおかげで敵を表す白い人型の塊を避けるように進んで行く。
その先で林がなくなり開けた場所にたどり着く。
そこは丁度『翠光館』の裏庭となっていて暗くてよく見えないが花壇になっているようだ。
それにここにも白い人型は多数おり、その中に能力者が多数、あまりにカラフル過ぎることと解析能力の低下により能力の特定が追い付かない。
相手の動きが速くかつ変則的に動いていることも影響している。何かのフォーメーションのような計算された移動を繰り返している。
林から出ずに様子をうかがうと、どうやら右後方にいる五人がフォーメーション攻撃を裏庭中央にいる単体に攻撃しており、その逆サイドから別の部隊が裏庭中央へ銃撃しているようだ。
つまりは中央にいるのが敵の能力者、その両サイドのどちらかが軍事省の部隊、どちらかが風紀省の部隊ということになる。
しばらくの間銃声が響いたのちに左の部隊が裏庭から撤退したのを機に林から飛び出す。




