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月の輪Memorial!!  作者: Yuki乃
EP06 Mind Control
40/52

Mind Control(1)

 ここは美咲市新月区にあるカジノ『ホテル LEGEND』、月代学園のバックである『LEGEND』が経営する日本で唯一のカジノだ。

 もうすでに日は落ちた夜八時過ぎ、俺たちはある能力者と対峙していた。

 カジノ内のピラミッド近く、西門との間にある木々が生い茂るエリア、突如出現した超能力者、足守ミレアと名乗る、同じ月代の制服を着た、見た目は俺たちよりの上の学年、三年生であろうか。

 高身長で長い茶髪、鋭い瞳が特徴的な女子生徒、月の光をわずかに浴びてわかるのはその程度だ。

 装備はスカートのベルトに『IMI MINI UZI』が収まっているが、マガジンの部分だけがすっぽりと抜け落ち、地面にその残骸と9mmパラべラム弾の薬莢が大量に散らばっているのが確認できる。

 そして彼女はこう言うのだ。

「いいわ、教えてあげる。私は『REVIVE』所属、足守ミレア、『煉獄(Purgatory:ペガトリー)』の能力者、『討滅の炎剣(Crimson Destroyer:クリムゾン デストロイヤー)』の使い手よ」

 重要な情報をさらりと口にする余裕がある。

 現に武器を構えていない。

 銃口を向ける俺、攻撃姿勢のユー、対称的な光景だ。

 ユーはミレアと名乗る女子生徒の言葉を聞くなり口を開く。

「……知っているわ、『REVIVE関東支局所属』、ランクA+、炎操る能力者、危険能力保持者リストにも載っているA級犯罪者よ」

 ランクA+これはユーの上を行く値だが、能力はランクだけでは決まらない。相性というものがある。

 それを俺は良く知っている。

 この眼の能力のおかげで、

「犯罪者とは聞きづてならなわね。『REVIVE』の崇高な目的を理解できない尻の青いガキ共が私を犯罪者よばわりとは」

「あなたは日本各地で超能力犯罪を繰返しているわ。犯罪者以外の何者でもない」

「ハッ、それはあの無能な警察が悪いんだろうが、私がやったっていう明確な証拠を見つけられないんだから。見つかっても、『手から火を出してました』何て証拠が裁判所で通用するとは思えないけど」

 バカにしたように笑い混じりで愉快そうに話す。

 だが今言ったことは概ね正しい、超能力による犯罪行為が法律に反していない限り現場を目撃しても捕まえることができないのが現実だ。

 例えば器物損壊をしたとする。その行為が超能力によるものであった場合、実際にその本人が壊したかどうかはわからない。

 ユーの能力を使ったのなら、突如発生した刃により壊れてた自然現象に過ぎないことになる。

 また警察、大きく言えば国家、さらに拡大すれば世界的に超能力者を隠す傾向にあるため、もし事件が発生しても捕まえることをせず黙認する場合も多い。

 そんな能力者がどうしてわざわざ北海道まで来たのかは分からない。

 今の俺には青っぽく足守が見えている。

 そう奴は『煉獄(Purgatory:ペガトリー)』の能力者だと自称しているがまず間違いないだろう。

「あなた私と同じ制服どうして?」

「そんなの私もそこの生徒だからに決まってるでしょ。二年の癖に生意気だな久遠悠里!! 『次元振動刃(ディメンションカッター)』の能力者だから警戒しろなんて言ってたけど、何あの攻撃? 遅すぎてあくびが出る。でもヨーコはボコれたらしいな。あんな狭い空間に追いやって、階段に仕掛けた爆弾を台無しにしやがって、あれは別の作戦で使う奴だったってのに」

 詳しい経過までは知らないようだが、あれは勝手に追い込まれただけで、俺たちがまるで卑怯なことをした風な言い方だがそうではない。

「あれはあんたがやったのか?」

 俺は睨みつけたまま問う。

「そうよ、私が仕掛けた。けどヨーコの奴勝手に使いやがって、後言葉遣い気をつけろって言ったばっかだよな!!」

「犯罪者を先輩と呼ぶことは一生ないわ」

 足守はその台詞にかなりイラつかせている。

「あんたの目的は何々だ? どうして学園に潜伏している?」

 そんな有り触れた質問に、

「それ今説明する必要ある? 私はあんたらと慣れあうために来たんじゃない。こっちも仕事何でね。邪魔するなら即効でゲットアウトしてもらうかな!!」

 俺はてっきりベルトに数本あるナイフを使うものだとばかり思っていた。

 それからいきなり超能力を使ってくるか二択であると、

「さようなら~」

 足守は片手を高く上げる。

「何をする気だ!!」

「『次元振動―――』」

 ユーが能力を発動させようとした時、俺が引き金を引こうとした時だ。

 振りかざした手を下され、制服の袖から手榴弾が、『手榴弾』が飛び出したのだ。

「――――何!!!」

 カランカランと暗くてよく見ええないが、手元で一瞬だけ見えた。

 あれは手榴弾だ!!

 落下したのは俺の方だ。

 前方、距離はわからないが、近くではない。だが着地後地面を転がったことを考えると落下地点よりも近くにあることは明らかだ。

 本能的な俺は後ろに下がるが、林の中だ。

 俺は木の根につまずいて尻もちを着く。

 またか、またなのか!!

「――――京!! 逃げて!!」

 ユーが声を荒げながら、カッターの方向を俺に向けた。

 ――――シュン!!!

 という風を斬るような音が聞こまだ地面を転がっているだろう手榴弾の横をかすめるように発射したのだろう。

 誰もいない左方向の茂みで爆発音とそれに伴う爆発の光が見える。

 カッター通過時の風圧で左に吹き飛ばしたのだろう。

 実際には暗くてほぼ透明なカッターの存在を目では確認できなかったのであくまでも予測だ。

「まだまだあるから楽しんで言ってね」

 ニヤァッと悪魔のような微笑みを浮かべる。

 ジャラジャッと音がするくらい大量の手榴弾を制服の袖から両手を左右に大きく伸ばす動きの遠心力でばら撒いたのだ。

「狂ってやがる!!」

 俺は恰好何てもうどうでもいいというくらいの逃げ腰、敵の背を向けてなるべく遠くへ逃げようとする。

 ユーは小さい腕の動きで複数の『次元振動刃(ディメンションカッター)』は発生させ、空中で爆破させつつ、バックステップで十メートル程度後ろの木まで後退する。

 その他多くの手榴弾は予定通り爆発し、足守の姿も見えなくなるほどの爆風と閃光の壁を数秒の間作り出す。

 中は炸薬ではなく焼夷系のものつまりマグネシウムなどを多く含んでいたのだろう。

 爆発よりも熱、光が強い。

「おまけに花火もあげましょう」

 眩い光に遮られよく見えないが手に持っているアンテナ付きの何か、無線機に違いない。

 でもあの感じは……まさか!!

 花火という単語で連想される空、つまり俺は上を見上げる。

 すぐ近くの高さ五、六メートルくらいの木の上の幹に何かが取り付けてある。

 四角い箱からしてあれは、

「――――C4か!!」

「ピンポーン、せいか~い」

 カチッと無線機のスイッチが押されると同時に頭上で爆発した。

 それを合図に次々に時間差で様々な場所で爆発する。

 ランダムに木の上に仕掛けられていたのだ。

 一瞬で頭上は爆発の閃光で埋め着くされる。

 足守の言った通りまさに花火だ。

 上から下へ下降気流が発生し、制服がバタバタと振れる。

 だが、炸薬が少量であったため俺にダメージはない。これは本来とは別の目的で設置されたものだろう。

 俺は爆風に驚きながらも闇雲に走り続けた。

 こんな場所にいられるか!!

 命が何個あっても足りない。あの女は頭のネジの飛んだ奴だ。俺何かで空いてできる範囲を大幅に超えている。

 キャパシティオーバーだ。

 それから一分足らずで開けた場所に出た。

 ライトアップされた巨大噴水が見えるので、ホテルの中央部に出たことがわかる。

 広場は閑散としており、客の一人もいない。

 遠目に見える南門の付近に風紀省の部隊だけしかここにはいない。

 だが銃声は向いの林の奥から聞こえる。

 決して静かな場所にはなっていな。

 ユーを置いて来てしまった。

 今まで全力で逃げたせいで、俺はゆっくりと膝を着きしゃがみ込んだ。

 やはり俺は何の役にも立たなかった。

 ユーに拳銃まで借りておいて、一発も当てられなかった。

 それどころか尻持ちついて、爆弾のビビッて、仕舞には女の子を置いて逃げ出してしまった。

「どうしていつもこうなんだ!!」

 気が付けば俺無意識のうちに叫んでいた、閑散とし広場に向かって。

 俺の能力が役に立ったことはない。

 俺の能力がもっと別の能力なら良かったのに。

 今から戻るか?

 それも意味はなさない。

 どうする、どうしたらいい?

 ユーはたぶん今までの経験上、大丈夫だろう。いつもユーは俺の助け何かなしにすべてやり遂げている。

 でも何かしたい。

 これが俺の中で無現ループに陥りなにもできない。

 ただ地面を眺めているだけだ。

 わかっていたことだった。

 俺に何もできないことくらい。

 たった二年間拳銃の基礎と戦い方の基礎を学んで来ただけで実戦経験が薄い以上、俺が活躍できるはずもないことくらい。

 後方、俺が逃げて来た方はとても静かで、戦闘を行っている様子がないことに情けなくもホッとしてしまう。

 俺がユーを守りたかったな。

 俺は後ろに丁度良くあった針葉樹に腰を預けた。

 黄昏てる場合じゃないことくらいわかっている。

 でも何をすればいいのかが浮かばない。

 どうしようもなく空を眺めるばかりだ。

 そんな空から少女は舞い降りた。

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