EPILOGUE01
『翠光館』二階の書斎からこの戦場を眺めている者たちがいた。
電気をつけず、暗いままの部屋の中で、月代学園の三年生の帯をしている男と水色の長い髪を持つ同じ一年生の少女、不釣合いな二人は、窓から風紀省と軍事省の戦闘を傍観している。
戦場は『翠光館』のすぐ外、近くで見える場所で行われているが、全く動じることはなく、ただただ見ているだけだ。
その男子生徒は古めかしい『南部十年式自動拳銃』をホルダーにさしている。
それと二本の刀を片側に二本とも装備している。
流れ弾が館に命中し、一階の窓ガラスが割れる。
さらに館裏にも風紀省が来たが、逆に笑みを見せた。
「おもしろくなってきた。やはり、僕の読みは正しかったようだ」
その傍にいた少女は喋らず、手に持っていた電子メモパッドに何かを書いている。
『逃がして良かったの?』
「かわないさ、あれは地形的不利があったようだからね。翼ある者を閉じた空間で戦わせるのはフェアじゃない。今度こそ真の実力を見せもらうことにするよ」
それに対して何かを書くことなかった。
「そろそろ時間だ。向こうへ移動しよう」
少女はその男子学生の後についていく。
書斎を出て廊下を挟んだ空き部屋に入る。
窓からは『G3』を持った風紀省の部隊が遠目に見える。
――――ガラ、ガラッ!!!
そのすぐ隣の部屋の窓が開く音がする。
そしてどこかわからない制服の少女が窓から飛び立つ。
だが重力の影響を受けることなく、ふわりと持ち上がった体は、空気を滑るようにどんどん高く上昇していく。
その姿は、籠から飛び立つ鳥のように自由に大きな空へ飛んで行った。
やがてその姿は小さくなり、夜空へと姿を暗ましたのだった。
「さて、これで彼らの作戦は失敗だよ」
彼はその程度のことは何の躊躇もせずやる男だった。
「後の一人はどうなるか、とても楽しみだ。僕たちも見ていたいけど、仕方のない事だ」
彼は笑顔で言う。
少女は答えない。
「三人目もいるようだけど、僕は知らない。君は知っていたかい?」
『知ってる』
「へぇ」
『私と同類だった』
その意味は不明だ。
「なるほど、これはさらに激化の予感がするよ。一般客は避難させた方が良いかもしれないね」
少女は答えない。
「彼らにはミッションの終了撤退を伝えておいてもらえるかい?」
それは少女に向けられて言葉ではなかった。
じゃあ誰に?
部屋の扉によりかかるように立っている男子生徒が一人いた。
「了解した」
すぐさま携帯のメールで一斉送信する。
数十秒で打ち終えて送信する。
何ともラフなやり方だ。
普通は無線やせめて電話でやりとりするものだろう。
それを有ろうことかメールで行ったのだ。
「それで、本当にあれで良かったのか?」
「君も似たような事を言うね、不満かい?」
「そうでもねぇけど、一応捕まえてきた俺としては勿体ないというのが率直な意見だな」
「確かにそうだね。僕もそう思うよ。でも彼女をもっと見てみたいとは思わないかい? 彼女の本気をね」
まるで全てがゲームであるあのような言い方なのだ。
全ての言動に置いて楽観的に物事を見ている。
また簡単に捕まえられる。そう言いたいのだ。
そうとしか取れない。
「その時君なら倒せるかな?」
「この銃弾が届く限りは、負けることはないぜ」
制服の上着の内側のホルスターから世界最大の自動拳銃『DE』がその巨体を表した。
「この質問は野暮というものだね」
「そうだ、そろそろ時間だから俺は来たんだった。遅刻はよろしくないんだろ。用事はもう済んだんだし、サッサと引き上げようぜ」
「そうだね。それじゃ行こうか」
彼女は無言で頷く。
部屋を後にした彼らは、夜の暗闇に姿を消したのだった。




