Mind Control(2)
誰もいなかったはずの方向から突如として視界に入る。
セミロングのアップル・ブロッサムが特徴的な小さな女子生徒、綺麗に俺の前に着地し俺の諦めたようなダメな人間の顔をエンパイア・ローズの吊った瞳で見つめる。
そう、部長が現れたのだ。
でも部長が今戦闘に参加していたはずだが?
「何湿気た顔してんの? また失敗したか?」
適格な指摘に少し同様する。
それと「また」という所から、俺の失敗は複数回見られているようだ。流石は部長と言ったところか。
「……わかりますか?」
「分かり易過ぎよ。そんな顔してたら誰でもわかるわ。何かあったみたいだね。いつもの冷静な京四郎はどこに行ったんだい? 京四郎らしくない」
「そうですね」
俺は濁すように言う。
あまり言いたくないという感情が表に出ている。
「聞かせてもらえないのかい? 私はこう見えても部長だ。部員の相談にはいつでも乗るよ」
「相談しても、俺がダメだってことくらいしかわからないですけど、良いんですか? どうせくだらない話ですよ」
「是非とも聞かせてくれ」
いつになく真面目な部長に思わず話だしていた。
それを真剣に聞いてくれている。
「……大体はそんな感じです」
「そうか、京四郎の技量が足りないことは事実だ。でも京四郎が役立たずなわけじゃないし、最初は弱いのは当然のことだ。何もせずに強くなれば努力何てものは要らない。京四郎の成績が学年トップクラスだ。それはたくさんの努力をしてきた成果でしょ。それと同じよ」
単純に言えばそうかもしれないが、そういうことでもない。
「戦闘経験の浅い俺はいくら努力しても限界があるんですよ。例え銃の扱いがうまくなっても実際に戦場でうまくつかえなければ意味はないんです。」
「それも正論ではある。でも前衛だけが戦闘員ではないよ。後方支援も戦闘員の一人だ。人間には得手不得手がある。京四郎には前衛での戦闘が不向きであったというだけで、能力が低いわけじゃない。むしろ高い方だ」
「それでも前衛で戦いたいんです」
「そうだな、京四郎はまず頭で考えすぎていることが多いんだと思うんだ。私を含めてユーの乃ノちゃんもそんなに思考しているわけじゃなく、直感的に動いている方が多い。だから瞬発的に動くことができる。それをすぐに実践するには戦闘経験が浅い京四郎には無理がある」
結局はそこへ集束するらしい。
部長もお手上げというわけか。それもそうだ。
そんな簡単にそれこそ、ゲームのキャラクターのようにレベルアップができれば、世の中超人だらけになってしまうし、誰も苦労はしないだろう。
「諦めたような顔をするな、まだ方法がないとは言ってないぞ」
部長が今までにないほどの優しい表情で顔を近づけてくる。
何をしようとしているかはわかった気がする。
「少しズルになると思うけど、許してくれよ」
どんどん近づいてくる。
俺は一瞬躱そうかとも思ってが、俺の後ろには背もたれにしていた気があり、後ろの下がることはできない。
やがてその距離は縮まっていき、俺は反射的に目を瞑った。
俺の前髪の右手で上げて、柔らかい何が押し当てられた。
それは間違いなく部長の唇だった。
「よしこれで大丈夫だ。京四郎、君はこれでうまく戦えるはずだ」
おでこにキスされた。
驚いているのは俺だけで、部長はいつも通り……というわけでもなかった。
ほんの少しだけだが顔が赤い。
「おまじないか何かですか?」
「それよりもずっと効果的な行為よ」
「ずっと?」
「そう、ずっとよ」
体には特に異常はないが、……ない、いや、何かがおかしい、頭の中で再生されるさっきの戦闘描写、これを見せて何が言いたいんだ俺は?
『回路解析』を発動する俺『カラーはブラウン系、つまり変化系の能力者ということだ。』と解析する。「いいわ、教えてあげる。私は『REVIVE』所属、足守ミレア、『煉獄(Purgatory:ペガトリー)』の能力者、『討滅の炎剣(Crimson Destroyer:クリムゾン デストロイヤー)』の使い手よ」と高々と宣言する足守、『今の俺には青っぽく足守が見えている。』、俺は何を言っているんだ?
茶色なのか青なのか、意味がわからない。
変化系から物質系へ変動したのか?
俺の思考が加速していく。
それは無いほぼ100%と言ってもいい。
だとすれば、どっちが正解なのか?
変化系から物質系に変わった。それからわかることは後で物質系へ変化したということ、そう変化したのだ。
じゃあ何が変化したのか、特性変化の能力、能力の2つ持ち、能力の一時的なドーピング、そうじゃない、思考を変化させたのか?
思考の変化つまり意識の変化、変化系から物質系へ、潜入感による変化を促した。
俺の思考はどこで変化したんだ?
最初は変化系の認識をしていた。
じゃあどこからだ?
『いいわ、教えてあげる。私は『REVIVE』所属、足守ミレア、『煉獄(Purgatory:ペガトリー)』の能力者、『討滅の炎剣(Crimson Destroyer:クリムゾン デストロイヤー)』の使い手よ』と言った直後、俺には青に見えた。
これは幻影の能力か? いや違う。それでは俺の能力までは騙せない。これは回路自体を解析する能力、外側を見て判断しているわけではない。
それなら蜃気楼、だがそれもさっきと同様で俺には通じない。
つまり相手が変化したのではなく自分が変化させられたのだ。
それから考えられる能力は『洗脳(Mind control:マインドコントロール)』の能力ただ一つだけだ!!
洗脳が意味するのは精神汚染の能力の一種であるということ、俺にしたように先入観を与えたり、言葉によってあらゆる現実を捻じ曲げインプットする力だ。
「部長、急ぎます!!」
「何かわかったのね」
明らかな確信を持った言葉だった。おまじないの効果を十分に把握してるようだ。
「はい」
俺たちは立ち上がり、再び林の中へ、今までにないほどの全速力で駆け出してした。
このままでは……、
「――――このままではユーが危ない!!!!」




