Audit Committee(8)
家に入ると腹ペコ怪人と化したユーが待っていたのだ。
「京、お腹が空いたわ」
返って来て開口一番がこれだ。せめて『ただいま』くらいは言ってほしかったものだ。
「今日は特に空いてるの、能力の使い過ぎできっとカロリーが消費されてしまったに違いないわ」
「両者に関係性はない」
「京」
「今から作るから、これでも食べてろ」
コンビニの袋からさっき買ったシーチキンのおにぎりを出す。
それにユーは飛びついた。
「流石、話がわかるわ」
「随分偉そうだが、まあいい、それ食って黙って待ってろよ」
と言っている時にはもう既に食べ始めていた。まるでリスのように大事そうにおにぎりを両手で持っている。
「私は部屋で寝ているわ。できたら起こしてね」
「おう」
シルはトボトボと寝室にゆっくりと歩いて行った。
買ってきたキャベツとティラミスを冷蔵庫に入れてついでに、夕食のメニューを考える。豚バラ、キャベツ、にんじん、ピーマン……。
「生姜焼きにしよう」
その瞬間ユーの目がキランと光った気がした。
米朝のうちに研いで予約炊飯にしてあったので、後もう少しで炊き上がる。
さっきコンビニで買ってきたキャベツを千切りにして、ササッと豚バラを焼いた。時間がなかったが味噌汁も作った。ユーは味噌汁がないとすごく残念そうな顔をするからだ。
俺はシルを起こすために寝室に入った。
寝室にはキングサイズのベッドとパソコンデスク、本棚、これと言って変わったものはない。その大きいベッドの真ん中で丸くなって寝ているのがシルだ。
「シル、ごはんできたぞ」
「……zzz」
「おい、シル!!」
「もうちょっとだけ」
仕方ない、最終手段だ。俺は毛布をシルから剥がし取った。だがそれと同時に美しい真っ白な肌が見えて来る。
「おい!!」
「……おはよぅ」
「いや、おはようじゃないから」
シルはなぜか下着になって毛布に包まっていたのだ。しかも黒のランジェリとか大人っぽ過ぎるだろ、だがとても似合っているというか、白い肌と黒い下着がとてもマッチングしている。かなり色っぽい感じだ。
よくベッドの周りを見ると、さっきまで着ていた制服が散らかっている。
「パジャマ着て来いよ」
「それで下着の感想は?」
もう完全に目を覚ましたらしいシルは悪戯っぽく聞いてきた。
俺の素直な感想は色っぽいだが、これじゃ俺がそういう目で見ているように思われそうだ。
「可愛いぞ」
俺が選んだのは無難な言葉だった。
「嘘を付くはよくないけど、大丈夫よ、本当の気持ちは十分伝わってるから安心してね」
「安心できねぇよ、というか無駄口叩いてる暇があるなら早く着て来なさい」
「は~い」
まったくいつの間にあんなにませてしまったのやら、女の子は心の成長が早いとかいうが、それは本当だったようだ。体は小さい癖にあんな下着付けるとか、いつも夜になったら下着だから見慣れてるといえば見慣れているが黒は流石に強烈だったというか、こんな思考をしてしまっている時点で強烈であると言える。
夜になり、俺たちはあのキングサイズの大きなベッドで3人川の字になって寝る。それが俺たちの日常だ。壁側にユー真ん中にシル、そして俺という順番になっている。
シルは仕事があるためここで一緒に寝ることの方が少ない。仕事というのは風紀省からの依頼がほとんどだ。シルは風紀省特別治安維持科という部署に学生であるためアルバイト的な形式で依頼を受けているが、その部署というのも特別治安維持科だ。また風紀省には治安維持科がある。この両者の違いは裏の仕事か表の仕事かということである。治安維持科が表の仕事つまり日本でいうところの警察だ。また特別治安維持科は裏の仕事つまり大日本帝国でいえば秘密警察にあたる。
シルの戦闘能力を買ってのことだが、そのうち飼い犬に手を噛まれるような事態になるような気がする。
シルの収入の一部を生活費として使っているので、止めなさいとも言えない。
3人ふとんに入るとシルは必ずと言っていいほど俺を抱き枕代わりにするのだ。
「お兄ちゃん、温かいわ」
「そうか」
シルは俺たちだけの時はそう呼ぶのだ。いつからだったかは覚えていない。いつの間にか自然に呼ぶようになった。
そしてユーのことはお姉ちゃんと呼ぶのだ。
「お姉ちゃんは今日怪我とかしなかった?」
「大丈夫よ、乃ノ花が守ってくれたから」
「今度稽古つけてあげるわ、自分の身は自分で守らないと」
「ついでに俺にもつけてくれないか?」
最近、俺は残念なほど役に立ってないどころか足引っ張るっている。俺は能力者だから九戸兄妹みたいに無敵のシールドにもならない。
「別にいいけど、お兄ちゃんのことは私が死ぬまで守ってあげるから大丈夫よ」
「それでもだ」
「わかったわ、そこまで言うならお姉ちゃんと一緒に扱いてあげるわ」
「ああ」
「シルもう眠いわ」
フワァァ~ッとあくびをしながら目を擦り、さらに俺の胸に顔をこすり付けるような仕草をして、いいポジションも見つけたらしくそこでさらにぴったりくっついた。
「じゃあもう寝るか」
「そうね、おやすみ」
「……おやすみ」




