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月の輪Memorial!!  作者: Yuki乃
EP03 Audit Committee
20/52

Audit Committee(7)

 教会の周りにはまだ誰も来ている気配はないが、シルはゆっくりと教会前の開けた場所のど真ん中に立ったまま、来るのを待っている。

 俺はこの場所を特定するのに時間がかかると思っているが、シルはまったく逆の考えだ。話によればこの林に関係者以外が入れるようになっている場所はこの教会だけで、他には何もない。『光明館』は閉まっているし、第二部室棟に行くとも思えない。それに加え校舎に続く道は図書館前から丸見えで、寮には通学生は基本的には入れないようになっているらしい。よって残るはテニスコートか教会となるらしい。

 俺はあまり学園自体には興味がなかったので詳しく校内案内を見たり、校内を歩きまわったことがないので、その辺の立地条件とかを知らなかった。

 それで正解はシルの方だった。彼女が出てすぐに捜索隊と思われる四、五人が現れた。

 まだ距離があるため俺の腕では狙えない。

 だがシルは『Colt M1877 Lightning』をスッとしなやかな動きで手に取りそのままダンスをするようなステップで回転する。

 制服のスカートとネクタイがひらひらと舞いあがり、髪がフワッと持ち上がる。そして両手を広げてトリガーを引いた。

 バァン!!

 古い銃独特の発砲音が静かな教会前に響き、遠くの影が倒れて見ななくなった。あの距離で命中したのだ。俺の目ではそれくらいの情報しかわからない。

 バァン!!バァン!!

 左右交互に撃っていき、影は次々に倒れていく。

 バァン!!バァン!!

 一発が木に命中し食い込んだ。一人だけ木の裏に隠れて助かったらしい。

『何が起きている!?』

 無線から音が入る。

『こちらAC3-4th、吉村以外全滅です』

『こちら監査委員会作戦本部、何があった?』

『教会からの狙撃だと思われます。こちらからははっきりとはわかりません』

『吉村はその場に隠れていろ、増援をそちらに回す』

『了解』

 それを盗聴していたシルはニッと笑った。それは悪魔の微笑みだった。

「さて、応援は吉村君に間に合うのかしら?」

 そう呟きながら、林の中に一本の木に向かってバンバン弾を撃っていく。銃弾の雨だ。木がバキッと悲鳴をあげている。弾切れになるまで撃ち続けた。木には穴が開いていないもの、クレーターだらけで銃弾が何発か刺さっている。

 そして『空中装填(Handless Reload)』しようと銃と銃弾を宙に投げ出した時だった。

 第二部室棟屋上からキラッと一瞬光った気がした。やばいと思ったがここからできることはなにもなかった。

 バシュッ!!

 鈍い音と共に銃弾がシルの胸に一発命中したが防弾製の制服であるため貫通はしない。

 そのまま後ろに若干のけ反った。

 バシュッ!! バシュッ!!

 さらに2発胸に命中したのだった。

 それでもシルの表情は変わらないどころか悪魔の笑みに変わる。

「みぃ~つけた♪」

 装填完了して落下してきた愛銃を再び手に取りトリガーを引いた。

 ガギィィ――ン!!!!

 とてつもない轟音と共にシルから100mくらい離れた第二部室棟と狙撃手との一直線上で火花が上がった。

 あれは銃弾同士が空中で当たった時の音だ。普通はありえないがシルならばあり得る。ということがさっきは……。

「さっきはわざと当たって上げたのよ」

 やはりそうだ。飛んできた弾道を正確に把握することで狙撃手のいる座標を割り出していたのだ。つまりもうターゲットは完全にロックオンされたのと同じだ。

 そのままフルオートと言わんばかりに十二発、全弾撃ち尽くした。

 狙撃手は初撃で後退したらしく、屋上には誰もいなかった。

「逃げ足が速いわね。これじゃあ撃たれ損ね。私の胸に脂肪が少ないからすごく痛いのに」 などとブツブツ呟きながら埃を掃っている。

 あれを見ると銃弾が当たっても防弾製なので痛くないように見えるのも無理はないが、普通の人があったら悶絶するレベルで痛い。あんなにタフではいられない。現に銃弾が似たような場所に命中した部長は気絶している。

「んっ」

 部長は小さく唸り声を上げて、目を薄く開けた。

「大丈夫ですか?」

 寝かせている部長を静かに起こす。

「ここでどこ……痛っ!!」

 一瞬のけ反った部長を支える。どうやら頭を強く打ったらしい。

「もう、大丈夫だから」

「そうは見えませんけど」

 部長は怯えた目で教会を見回している。すると外から銃声が聞こえてきた。どうやら増援とやらが到着してしまったようだ。

 部長は慌てて俺の肩に手をかけて立ち上がろうとするが、足に力が入らないのか、よろめいて倒れそうになった。

 俺は再び支えるため倒れそうになった部長をこっちに引寄せると、部長はそのまま俺の胸の中に大ダイブするように倒れ込んだ。

 すると少し前までしていた匂いがする。それに柔らかい温もりも、さらさらの髪が顔に当たる。

「京四郎、足に力はいんない」

「いい、座ってろ」

「でも」

 部長が窓を見たとき、そこにはシルが写っていたのだ。

「……シルシィ」

 せっかくここまで見つからずの済んでいたのだが、それを見た部長はすごく怯えているように見える。

「俺たちを守るための戦ってくれている」

「そう」

 と小さく呟いた。

 銃声が止み、シルが正面入り口から戻って来た。

「あら、もう大丈夫そうね、美咲」

「シルシィ」

 俺にギュッと強く抱きつく。

「一つ言っておくけど喧嘩しにきたんじゃないからな」

「わかってるわ、外は粗方は片づけたけど、弾切れね」

 そういいながら薬莢を捨てる。

「ずっと気になっていたのだけど、シルシィと京四郎ってどういう関係なの?」

「ずっと?」

「そう、合同演習の時から」

 どうやら見られていたようだ。

「それは私から説明したいのだけど、お邪魔虫がやって来たみたいよ」

 正面入り口、窓の近くに気配を感じる。

 俺の能力で見る限り、全部白で15人は見える。この建物は文化遺産的な建物なので中でドンパチやることはないだろう。

 と思っていた矢先だった。

 バリィーン!!

 窓ガラスを割って突入してきたのだった

「椅子の間に伏せていてね」

「私も戦うわ」

 そういってガンホルダーに手をかけてるが、銃が入っているわけもなく。

「あれ?私の銃どこ?どこ?」

 慌てた様子で探るが出てこない。

「図書館で落したんだと思う。部長と逃げるのがやっとで銃回収までは無理だった」

 そう告げると、さっきまで慌てていたことを思い出したのか少し赤くなって小さく椅子の間に収まった。

「アイツは弾切れのはずだ、撃て!!」

「その隙に後ろの奴を捕まえろ!!」

「会長に連絡を」

次々に入ってくるなり銃を乱射してくる。時々椅子に当たる音がする。

シルは飛んで来る銃弾を躱しながら、椅子の背もたれの部分を足場にくるくる回りながら移動する。

「バカにしてんじゃねぇよ!!」

 前衛の方に2人が隠していた『Colt M16』をフルオートで撃ってきたが当たる気配はないく、すぐに距離を詰めて銃を蹴り上げた。

「本当に下手ね。それは私がもらうわ」

「チッ、こうなったらコイツを使うしかねぇ」

 一番後衛が閃光手榴弾を投げつけてきたがそれを投げる前に手元で狙撃したのだ。

 閃光手榴弾は後ろで爆発した。

 さらにシルはさっきの舞のような動きで銃撃していく。

 監査委員の銃弾は当たらず、シルの弾だけが命中していく。シルの戦闘力は桁外れだった。俺が知っているシルをはるかに超えていたのだ。

「京四郎、銃貸してちょうだい」

「ああ」

 言われるままに腰のガンホルダーから銃を渡す。

「ありがと、京四郎はそこでジッとじているの、いいわね」

「OK」

 部長は教会の奥へ移動する。

 教会裏の入り口から何人かが入って来る。部長はそれを予測したのだ。何発かの銃声ののちに白い影は倒れていった。

 そして銃声は静まる頃には周りには気絶している監査委員が20人近く倒れていた。

 三人は教会の中央に集まる。結局今回も俺は逃げるばかりだった気がする。男としての情けなさを感じる。

「終わったわ、早くここから逃げましょう」

「そうね」

「そうだな」

 俺たちは一応教会裏から出て大回りに林を抜けて正反対に方向にあるグラウンドに出た。

 不意に俺の携帯がバイブレーターでメールの通知を知らせる。

 どうやら、ユーの方が剣術部に出ていた御影先輩が助けに来てくれたらしく、無事だったようだ。その事は知らせると部長もホッと胸を撫で下ろした。

「追ってもいないし、このまま帰りましょう」

 図書館前にも第一部室棟にも生徒会や監査委員はないなかった。それでも心配だったので部長を女子寮まで送り、シルと一緒に家まで帰ることにした。

「今日はありがとな」

「お礼を言うなんて珍しいわね、いつもは割と素っ気ないのに」

「そうか?」

「そう、でもシルとってもうれしいからいいけど」

 シルは自分のことをプライベートではシルと呼んでいる。

「怪我とかしてないよな」

「したわ」

「どこ?」

「ここよ」

 そう言ってシルは俺の手を自分の胸に当てた。何とも言なえない女の子肌の10倍くらい柔らかい感触と温もりが手に伝わる。

「3発受けたんだったな、後でユーに見てもらえよ」

「そうね、そうするわ」

 時計も見ればもう五時半過ぎだ。

 ユーはお腹を空かせてまっているに違いない。俺は途中コンビニのよってシーチキンのおにぎり一つ買うことにした。

「シルは何かほしいものあるか? 夕食は作るけど何かいる?」

「う~ん」

 デザートコーナーのシュークリームとティラミスを交互に取っては戻してを繰り返している。

「どっちかには決められないわ」

「なら両方買ってやる。家に着くまでに片方食べちまえよ」

 俺はつくづくシルには甘いような気がしてきた。

「立ち歩きは行儀が悪いって怒ったのに、いいのかしら?」

 揚げ足を取るようなことをニコニコしながら言う。

「今日は特別だ。あんまり悪い子なら俺が食べちゃうからな」

「あら結構意地悪なのね。仕方ないからいい子にしていてあげるわ」

 結局、シルにデザート二個、ユーにおにぎり、そしてこれが本命とも言えるキャベツだ。最近ではコンビニに野菜が売っているのは当たり前になりつつある。

 コンビニを出るとシルは早速ビニールを開けてシュークリームを頬張った。

「クリームついてるぞ」

 指でクリーム取り自分の口に持っていく。

「ありがとう」

 その後、俺たちは坂を下りてすぐの所にあるバス停から乗って家に帰った。

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