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第2話「我が夜の春、終了!」

 憧れだったんだよなぁスローライフ。

 のんびりまったり行きましょや


 我が世の春、スタート!!


「そなた」

 キャスパリーグが声をかけてくる。

「国王から手紙が来ておるぞよ。なんでも、王国最強のギルドに招待されておる」

「断ってよ」

「断ったら死罪じゃとよ」


 我が世の春終了───!


「……国王を倒せば解決か」

「早まるでない」

「いやでも横暴だろ!なんの権限があってそんなこと!」

「国王の権限じゃろ」

「やだやだやだやだ!やりたくない!助けてキャスえも〜ん」

「確かにわらわは猫じゃが、そんな便利な存在じゃないぞよ。ほれ、ここに書いてあるが、籍を置いておくだけでも良いらしいぞ」

「ほんとだ」

「それと、認承会が来週末あるから王都に来るようにと」

「認承会?」

「そうじゃ。そのギルドの面々がそなたを直々に審査して、籍を置くことを許すかどうか決めるらしい」

「ほーん。つまりそこで盛大に失望されればスローライフ返ってくるんだな」


 我が世の春、再開の兆し。


 そして週末。

 スローライフってほんとに言及することなんもないのね。

 スローなライフだったよ。


 馬車に揺られて運ばれること小一時間。道は土くれから石畳へと変化した。

 王都へ立ち入ったのである。


「うひょ〜ここが王都か。テーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるな〜」

「なんじゃここ。人も物もいっぱいじゃな。ちょっとばかし窮屈じゃ」

「キャスパリーグ、こういう所初めて?……と言うか、キャスパリーグって名前長いな」

「キャスでええぞ」

「じゃ、それで」

「そうじゃなあ。わらわはずっと洞窟か草原におったからの」

「ここ美味しいご飯いっぱいあるし一緒に行こうよ」


 そして、入口からさらに進んで王都の中心へ。ついに闘技場へと到達した。


 中に入ると、客席に10人程人が座っていた。

 個性的な見た目の方々である。

 これがその「認承会」で俺を審査する人。

 つまり、招待されたギルドのメンバーか。


 1人が「とう!」と言って降りてきた。

 ズシンと着地の衝撃で地面が揺れる。

 金色の甲冑をガッチャガッチャ言わせながら歩いてくる。

「やあ、俺はアーサー。このギルド、「サウザンド・オブ・ペイン」通称TOPのメンバーだ」

 そう言って金ピカの腕を差し出してくる。

「俺はライオネル・サファリ。しがないテイマーさ」

 そう言って、俺は彼と握手した。

 すると、彼はキャスの方を向いて言った。

「すまないがお嬢さん、部外者の立ち入りは禁止していてね」

「部外者じゃない。キャスは俺の───」

「嫁じゃ」

 キャスがそう言って、ギュッと俺の腕に抱きつく。胸元のモフモフが当たって気持ちいい。

 と言うか嫁……?娶ったおぼえはないぞ

「へぇ、美人な嫁さん連れて。やるなぁ!お前」

 アーサーはそう言ってバシバシと俺の背中を叩いた。

 甲冑着てやるな。痛てぇよ。

「まぁ、でもやっぱり今は離れてもらわないと困るなぁ。一応これはライオネル君の認承会だし。彼の実力を見るには、彼一人で色々やってもらわないと」

「ふむ。それもそうじゃな。すまんの、ライオネル。応援しとるぞよ」

 そう言って腕からモフモフが離れた。


「で……えーっと、何をすれば……?」

 俺がそう言うと、座席に座っていた赤い髪のツインテの女の子が意地悪そうに言った。

「あんたそんなことも分かんないの?本当にバカね。国王もなんでこんなやつ呼んだのよ。時間の無駄だわ!」

「スカーレット。言っていいことと悪いことがあるよ。たとえ本当のことでも、馬鹿だなんて」

 黒いローブを着た男が続けてそう言った。

「そうね。こいつを表すのに使われる馬と鹿が可哀想だわ!」と、スカーレットとやらが言ってクスクス笑っている。嫌な奴らだぜ。全く。


 まぁスローライフに戻れるならこのまま認承会を落第で終わらせて良いんだけどさ。

 腹は立つよな。やっぱり。

 だからこいつらを驚かせてやることにした。


「俺はただのテイマーじゃないぜ!世界中、全ての生物を従えられるんだ!」

 どうだ。ビビったろ。世界中だぜ。作品タイトルにだって「200兆種の生物がお前らの的になるけど大丈夫そ?」って書いてあんだろ。


 すると、ボサボサの浮浪者みたいな格好をした中性的な声のやつが言ってきた。

「素人質問で申し訳ないんだけどさぁ。それって世界中回って全ての生物に試したの?」

 していない。が、大体こういうのは直感で分かるもんだぜ。それに……。


「ステータス、オープン!」

 そう俺が叫ぶと目の前にブウン、と画面が表示される。俺のステータスが全てここに記載されてるぜ。住所とかまで乗ってるからめちゃくちゃ個人情報の塊なんだが、この際仕方がない。


「ほら、ここ見ろよ!」

 俺はそう言って、スキルの所を指さした。

 そこには「ベーススキル:テイム」

 そして、「固有スキル:手のひらを(オールオーバー)太陽に(ザ・ワールド)(レベル100)」と書かれていた。


 固有スキル:手のひらを(オールオーバー)太陽に(ザ・ワールド)

 テイムする生物に制限のないS級固有スキル、ガチャで言うところの星5だ!

 そのレベル100なんだから当然、全ての生物を何不自由無くテイムすることができるぞ!


「ふむ。それじゃあ、今ここで何か特異な生物をテイムしてみてくれ」

 真ん中に座った、白い髪のこけた頬をした男が言った。

「それならここに特異な生物を連れてきてください!」

「何言ってんのよあんた。バッカじゃないの!一休さんやってんじゃないのよ!それくらい、自分でなんとかなさい」

 赤髪の女の子がそう言った。

 ふと、キャスに目をやると首を横に振った。さっきの嫁宣言と言い、「キャスパリーグ」であることをバレたくないのかもしれない。


 どうする。

 こんな闘技場にテイムできる生き物なんて……


 その時だった。

「ぎゃおおおん」

 上……空から叫び声がした。

 さらに、

「きゃあああああ」

 と、民衆の叫ぶ声も聞こえた。


 TOPの奴らが一斉に席を立つ。

「認承会は一旦中断だ。総員、戦闘配置!」

 真ん中の白髪の男が言う。

「この声。僕らが長年追ってきたサラマンドラドラゴンだね」

 浮浪者風の奴が言った。


 サラマンドラドラゴン……?

 これだ!!


「待って!認承会は継続だ!」

 俺は叫んだ。

「何言ってんのよあんた!非常識よ!」

 赤髪の女の子が叫ぶ。


「非常識なんかじゃない」

 胸を張って、俺は言った。


「そのドラゴン、俺に任せてくれ」

 TOPの奴らがギロリと鋭い目で俺を見た。

「やめといた方がいいよ。相手はSSS級だ。僕らTOPでも手を焼いてるんだからな」

 浮浪者みたいなやつが言う。


「上等だ!!そいつを従えられれば、TOPに入るには十分ってことじゃねぇかよ!」

 そう言って俺は駆け出した。

「キャス!」

「嫌じゃ。」

「まだ何も言ってないだろ!」

「どうせ動物形態になれって言うんじゃろ!」

「そうだけど!?」

「それが嫌なんじゃ!」

「なんで!?」

「察しの悪い小僧じゃの!わらわはキャスパリーグ、あれと同じSSS級の幻獣で討伐対象じゃ!こんなヤツらの前で正体がバレたらおわれてしまうじゃろ!」

 俺はキャスの元に駆け寄って、壁ドンした。

「今は緊急事態だ!お前、俺に服従してんだろ!?いいから黙っておれにしたがえ!!」

 驚いたような顔でキャスは頬を赤らめる。

「それに、俺がTOPに入れば、そんなこと絶対させない!」

「本当に仕方の無いご主人様じゃ」


 そう言うと、キャスは動物体の巨大な猫に変化した。

「キャスパリーグ!?あいつ、SSS級なんて従えてたの!?」

 赤髪の女の子が叫んだ。

 闘技場から出ると、空には大きな赤いドラゴンが飛んでいた。

「行け!キャス!」

 キャスは建物の壁を走り、空へ飛ぶ。

 俺はそこから更にキャスの背中から飛んで、ドラゴンの背中に張り付いた。


「うおおおおおおお!手のひらを(オールオーバー)太陽に(ザ・ワールド)!!」

 すると、ドラゴンはみるみるうちに大人しくなった。


 TOPの奴らが遅れて闘技場から顔を出す。

「どうです?俺にかかればこんなもんだ!」


「すごいな……。君は天才だ」

 浮浪者風のやつが言った。

「是非TOPに入らないか!」

 アーサーが俺に駆け寄って言う。

「ほんと、バカにしてすみませんでした」

 黒いローブの男は土下座した。

「あたしはあんたなんか認めないんだからね!」

 赤い髪の女の子がそう言った。

「認承会は終了だ」

 白い髪の男がそう言う。

「あの……それって」

 俺が聞くと、彼は言う。

「TOPへようこそ。これからも頼むよ」



 夕暮れ、美味しいご飯を食べて、キャスと俺はサラマンドラドラゴンの背中に乗って帰ることにした。

「それより、良かったのか?」

 キャスが聞く。

「何が?」

「いやほら、スローライフしたげだったじゃろ」

「うーん。週末までスローライフ地味たことはしたけどさ」

 少し溜めて、俺は言う。

「正直、やること無くて暇なんだよね。それに……展開が無い……」

「本当にそなたって奴は……そういう所も好きじゃ。ご主人様」


 家に着くと、突然ドラゴンから煙が放たれた。

「なんだぁ!?」

 その煙が晴れると、これまたスタイルのいい鱗が体にところどころ残った、角と翼の生えた赤髪の女性がたっていた。


「ご主人様〜!」

 そう言って、彼女は俺に体を擦り付けた!

「君はもしかして……」

「そうだよ。サラマンドラドラゴン!よろしくね!ご主人様!!」

 元気にそう言った。

 キャスがサラマンドラのことを睨んでいた……ような気がする。

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