ピグマリオン
ピグマリオンはあの彫刻をどうしたのだったか。確かピグマリオンの彫刻に与える献身を見た神が、その彫刻を人間にしたはずだ。そのあと結婚したとあった気がする。彫刻のときに献身を受けていたことを知っていたからだろうか。もしくは生まれたばかりの鳥が、最初に見たものを親と思うのと一緒だったのだろうか。後者ならば、人として生き始めた彫刻にはたくさんの刺激があるであろう。様々な人と出会い、彫刻が初めての恋をするかもしれない。そのときピグマリオンはどう思うのだろうか。ピグマリオンは憎悪を抱くだろうか。それでも彫刻を許すことはできるだろうか。人間になってもらうべきではなかったと、嘆くのだろうか。
ぼくの失恋は、このピグマリオンほどではない。最初から脈のなかったことなのだから。けれども。もし、彼女が、堂美春が生きていたならどうだろう。生き返ったならどうだろう。振られたことで諦めることは出来るだろうか。それともより知りたくて、より知ってもらいたくて、動くのだろうか。そうなると、いわゆるストーカーと同じなのだろう。純粋な感情なのだろう、相手に恐怖を与えなければ。相手のことを知りたいという気持ちだけならば、ストーカーになり得ない。ストーカーは自分も知って欲しいから、どこかに痕跡を残す。少しでも自分を晒す。純粋な恋心なのだ。相手には伝わっていないから。ああ、そう思えば映画などに出てくる怪盗も同じか。自分の存在をアピールするのだから。
「そう考えたら面白いね。ぼくもストーカーに近いのかな」
ぼくは彼女の目の前にいる。彼女の気持ちはわからない。彼女はぼくを許すだろうか。




