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ゆたかの怪奇列島第11章「紅蓮女」  作者: こうた


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第4話「受容」

炎は、まだ消えていない。

むしろ静かになっただけだ。

“暴れる炎”から、“沈む炎”へ。

紅蓮女は立ち尽くしている。

呼吸が荒い。

「……どうすればいいの」

声は、もう怒りではない。

迷いだ。

ななは一歩動けないまま、呟く。

「これ……ほんまに敵なん?」

ゆたかが低く言う。

「敵やけどな」

一拍。

「壊れとるだけや」

神父が静かに分析する。

「感情の出口が遮断されています」

「怒りが処理されず蓄積した結果です」

人面犬が鼻を鳴らす。

「燃え尽きる前の状態だな」

紅蓮女が顔を上げる。

「私は……間違ってない」

炎がわずかに戻る。

だが——

弱い。

ゆたかが一歩前に出る。

「間違ってへんで」

紅蓮女の炎が揺れる。

「は?」

ななが驚く。

「いや、ゆたかさんそれ……」

ゆたかは続ける。

「我慢してたんやろ」

一拍。

「そら怒るわ」

紅蓮女の動きが止まる。

炎が揺らぐ。

神父が小さく言う。

「……受容が発生しています」

人面犬が目を細める。

「言い方変えたな」

ゆたかはさらに続ける。

「しんどかったんやろ」

一拍。

「誰にも言えんかったんやろ」

紅蓮女の肩が、わずかに揺れる。

炎が弱まる。

だが——

消えない。

「……うるさい」

声は小さい。

「そんなこと言われても……」

ななが一歩前に出る。

怖い。

でも、止まれない。

「なぁ」

紅蓮女が顔を上げる。

ななを見る。

ななは言う。

「怒ってええで」

一拍。

「我慢せんでもええで」

紅蓮女の炎が止まる。

完全に。

ゆたかが小さく息を吐く。

「そこや」

神父が言う。

「抑制ではなく承認です」

紅蓮女が震える。

「……じゃあ」

声がかすれる。

「私は……何をすればよかったの」

ななは答えない。

答えられない。

その代わりに。

ゆたかが言う。

「何もせんでええ」

一拍。

「ただ、感じてええ」

紅蓮女の目が揺れる。

炎が、ゆっくりと縮む。

人面犬が静かに言う。

「燃料切れじゃねぇな」

一拍。

「供給が止まっただけだ」

紅蓮女が崩れ落ちるように座り込む。

「……疲れた」

小さく。

「ずっと……疲れてた」

炎が、消えていく。

だが——

完全には消えない。

胸の奥に、まだ残っている。

神父が言う。

「感情の残滓はあります」

ゆたかが頷く。

「それでええ」

ななが呟く。

「これで終わりちゃうんやな……」

紅蓮女は顔を上げる。

少しだけ。

落ち着いた目で。

「……ありがとう」

炎はもう、暴れていない。

静かに。

揺れているだけだった。

■ 第11章 第4話 終

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