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いのち短し潜れよ乙女~ダンジョン道は乙女のたしなみ~  作者: 瘴気領域
第九章 夏大会 x 後半 x 宿命の対決

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第64話

 全国高校女子ダンジョン道神奈川県大会決勝戦。

 二本の白線を挟んだ反対側には、聖マグダレナの三人が並んでいる。


 中央は剣城(けんじょう)勇奈(ゆな)

 鎖帷子にサーコートを羽織り、斧槍(ハルバード)の石突きを石畳に突き立てて端然と佇んでいる。その整った顔に気負いはない。さすがは県内最強チームの主将と言ったところか。


 左にはブランシュ・ド・セレスティエ。

 プラチナブランドの巻き髪をびよんびよんと伸び縮みさせ、全身鎧をガチャガチャ鳴らして飛び跳ねている。雪のように白い肌。その顔には満面の笑み。やはり緊張など見られない。たぶん何も考えていないせいだろう。こちらはこちらで大物である。


 右のフード付きローブを羽織った人物は初対面だ。

 名前は初里(ういざと)麻凛(まりん)と云う。

 聖マグダレナのエーススカウトで、今大会では堅実なプレイでチームを支えている。平均解錠タイムは30秒を切り、キリ先輩と同じく全国レベルってやつだ。そりゃ県大優勝校のメンバーなんだから当たり前か。


「へへへ、半年越しのリベンジだな」


 こちらでは鬼嶋がバイクのエンジンをふかし、木刀で自分の肩をぽんぽんと叩いている。その顔に浮かんでいるのは不敵な笑み。緊張とは無縁なようで何よりだ。対剣城さん向けに様々な対策を仕込んできているようだけれど、それが奏功してくれることを祈るばかりである。


「うん、今回は簡単にやられてたりなんかしないよ」

「おいおい、そこは絶対に勝ってやる! だろ」

「ははは、そうだね。絶対に勝ってみせるよ!」


 キリ先輩は真剣な顔だ。つなぎに仕込んだ投げナイフや胚珠(インスタンス)を指先でしきりに確認している。落ち着きがないように見えるかもしれないが、これは試合前のルーティンだ。気負いすぎず、緩みすぎず、いい状態だろう。


『ええ試合期待しとるで~。悔いがないようにがんばりや! あ、あとワイの血と汗と涙の調査が無駄にならんようにしてな~』


 スピーカーを通してミノさんの声が響く。

 会場の音声を中継しているのだ。準決勝からの演出で、会場の声援を届けて盛り上げるらしい。なお、試合が始まったらオフにされる。相手チームの動向なんかが筒抜けになっちゃうからね。


『うちらはどちらも応援しておりますぞ~』

『私たちを負かせた聖マグダレナが優勝しても、草大会で勝ったことがある桜吹雪が優勝しても、どちらにしてもうちらの格が上がりますからなあ』

『お互いの健闘を高みの見物させていただきますぞ~』

『なるべく手札を明かしてくれると、冬大会がやりやすいですなあ』


 応援ともなんとも言い難い声は久能井(くのい)四姉妹のものである。合同練習もしたし、心情的にはうちの応援をしてくれたっていい気もするのだが、そんな素直なタマじゃないのもよく知っている。せいぜい彼女らを驚かせる試合を見せてやろうじゃないか。


『ニコー! ぬるい試合したらもうバイクのチューニング手伝わねえからな!』

『君たちの成長を見せてくれよ!』


 続けて聞こえてきたのは苺心(いちこ)さんと羽々霧(はばきり)さんの声援だ。

 苺心(いちこ)さんは鬼嶋の姉で、鬼嶋のバイクだけでなく部室のイミテーションの調整などでお世話になっている。

 元プロの羽々霧(はばきり)さんは苺心(いちこ)さんから改めて紹介してもらい、何度か練習を見てもらった。元日本ランカーの実力は伊達ではなく、よく久能井(くのい)姉妹はこんな人に勝てたなと驚かされたものだ。


【まもなく試合が開始します。選手は所定の位置についてください】


 アナウンスが響き渡り、ダンジョンを静寂が包む。

 会場の音声がオフになったのだ。

 わたしたちは開始線の前に整列する。


「やっと試合で戦えますね」

「へへっ、去年のオレたちと同じだと思うなよ」

「そうか、でも私たちだってもっと成長しているんだ。お互い、全力を出し切れることを期待してるよ」


 キリ先輩、鬼嶋と剣城さんの視線がぶつかり合ってバチバチと火花を散らしている。今さらわだかまりはないだろうが、試合となれば話は別だ。きっちり決着をつけ、リベンジを果たしたいところだろう。


「こちらも決着をつけるデスよ!」

「こっちこそ望むところよ!」


 真っ直ぐ向けられたブランの視線を正面から受け止める。

 あのギアショップでの出会い以来、わたしにとってのダンジョン道は、このブランという天才を倒すために歩んできたようなものだ。生まれて初めてぶつかった高い壁。なんとしても乗り越えて、壁の向こうの景色を見てみたい。


【桜吹雪高校対聖マグダレナ、試合開始ッ!】


 ブザーが鳴り、試合が始まる。

 さて、向こうはどう出てくるか。

 と言っても、こちらの作戦は決まっているのだが――


「OuarrRAAAHHH!!」

「ぬおおっ!?」


 なんて、考える暇もなく巨大ハンマーが眼前を通り過ぎ、轟音とともに石畳にクレーターを作り出す。ぎりぎりで退いていなかったら今頃車に轢かれたカエルみたいになっていただろう。


「疾ィッ!」

「おらぁぁぁああああッッ!!」


 隣では鬼嶋の木刀と、剣城さんのハルバードが激突していた。

 バイクの加速を利用して打ち掛かる木刀と、生き物のように踊るハルバードが激しく絡み合っている。


 試合開始早々の強襲(チャージ)

 へっへっへっ、奇遇ですねえ。うちの作戦と同じじゃないかッ!!

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