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いのち短し潜れよ乙女~ダンジョン道は乙女のたしなみ~  作者: 瘴気領域
第七章 受肉 x 家元 x 四つ子再び

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第50話

 無事連勝はしたものの、切光(きりみつ)桐子(とうこ)は素直に喜べてはいなかった。


「キィィィイ! 何なんざますかッ! ダンジョン道に必要なのは気品と礼節ッ! あなた方にはダンジョン道の精神はございますのッ!?」


 消失(ロスト)から速攻で復活した志乃美林顧問の綾小路先生がヒステリックに荒れ狂っているから――ではない。先程の試合の内容が気にかかっていたのだ。


(指揮役のつもりだったのに、アカリちゃんにフォローされちゃったな……)


 膠着した状況を打開するためにいち早く動いたのは後輩の火ノ坂(ほのさか)朱莉(あかり)だった。桐子にも戦況そのものは見えていたのだ。目の前の敵に対応しつつ、隙あらば打開の一手を打とうと伺っているところだった。


 反応が遅れてしまったのは、自分が仕掛けることばかり考えていて、他の誰かが動くことを想定できていなかったからだ。集団戦で指揮を執るのは自分であるという思い込みがあった。


(いや、思い込みというか驕りだな。もっとしっかりしなきゃ)


 パンと自分の頬を張り、気合を入れ直す。


 ――余計なことを考えずに全力を尽くしてみよ


 師匠から言われた言葉が脳裏をよぎる。

 まだどういう意味かはわかっていないが、少なくともうじうじと考え込むのはこの教えから外れているだろうことはわかる。


「フォフォフォ、まったく桜吹雪高校のみなさんは邪道で困ったものですよなあ。ここはひとつ、対戦経験のある私たちが様子見をするのはいかがでしょうか?」


 荒れ狂う綾小路先生に、久能井(くのい)姉妹の誰かが声をかけている。すでに装備を復号(アンジップ)して、サイバーパンク風忍び装束に代わっている。ヘアピンも外しているから姉妹のうちの誰なのかはわからない。


「いいでしょうッ! 卑劣な情報戦にしてやられはしましたが、向こうがその気ならばこちらも遠慮することはありませんッ! 久能井(くのい)さん、綾小路流の、そして志乃美林の実力を見せてあげなさい!」

「承知しましたぞっ!」


 久能井(くのい)さんが悪い笑みを浮かべて、こちらにこっそり親指を立ててくる。これまでの流れはほぼ予定通りだ。作戦を持ちかけてきたのは久能井姉妹の方で、狙いは桜吹雪高校の強さを見せつけることで自分たちの評価を上げることだという。


 草大会の優勝で見せた久能井姉妹の実力は確かなものだったが、礼儀作法にばかり重点を置く志乃美林では評価がされず、このままではレギュラーにも選ばれない。そこで一計を案じ、桜吹雪高校のメンバーに合同練習を持ちかけたのだ。


 プライドの高い綾小路先生のこと、部員が次々に負ければ平静を失い、久能井(くのい)姉妹が実力を示す機会が回ってくるだろうと企んだわけである。


 なお、この企みはニコちゃんやアカリちゃんには伝えていない。二人とも腹芸が出来るタイプではないので、教えてしまうときっと不自然になるだろうと考えたからだ。


「さあ、久能井姉妹ッ! 下品なガキどもをぎったんぎったんにしてやりなさいッ!」

「了解しましたぞっ!」


 まあ、若干やりすぎた気はするが。

 これで悪評が立ったら、今後他の学校と合同練習や練習試合が組みづらくなる。練習が終わったら、ちゃんとフォローをしておこう。


「では、よろしくお願いしますぞ」


 開始位置に整列し、久能井姉妹と向かい合う。

 今回は「財宝争奪戦」のような複雑なルールではないが、正攻法で来るとは思えない。十分に注意をしなければ。


「たぶん、初手は煙玉で来ると思う」

「了解!」「おう!」


 ニコちゃんとアカリちゃんに小声で警戒を促す。

 久能井姉妹の手には、すでに何かが握り込まれているようだ。大きさから言って何かの胚珠(インスタンス)だろう。久能井姉妹との直接戦闘はしていないが、正面から直接打ち合うタイプではないのは確かだ。初手は撹乱を狙って来る。攻撃系の胚珠(インスタンス)もあるが、それは考えにくい。威力が低い上にプラーナポイントが高く、至近距離では自分たちを巻き込む可能性もある。


「試合開始ッ! ぶっ殺せェッ!!」


 殺気を孕んだ物騒な合図とともに、煙玉が炸裂する。

 こちらもすかさず〈つむじ風〉の胚珠(インスタンス)を発動。

 巻き起こる突風が視界を塞ぐ白煙を晴らしていく。


「フォフォフォ、〈つむじ風〉は読み通りですぞ」


 続けて、氷雪が巻き起こり、突風に乗って急速に体を冷やす。

 だがそれも――


「〈乾燥〉!」


 こちらも対抗の胚珠(インスタンス)を発動し、吹雪を打ち消す。

 煙玉から始まる応酬としてはここまで定石通りだ。

 さて、次は何を仕掛けてくる?


 視界が晴れる。

 久能井姉妹はこちらを囲むように展開していた。

 それぞれの手に握られているのは鎖鎌。

 鎌の柄に接続された鎖分銅を回しながら間合いを測っている。


「フォフォフォ、初手で崩れていただければ楽だったのですがな」

「さすがにそう簡単には参りませんなあ」

「しかし、これもまた読みの範疇ですぞ」


 ふおんふおんと独特の風切音を立てながら、久能井姉妹が三方向から同じ声で話しかけてくる。四つ子(の内の三人)だと知っていても幻惑されてしまいそうだ。アカリちゃんじゃないが、この子たち、本当に忍者なんじゃないだろうか?

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