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いのち短し潜れよ乙女~ダンジョン道は乙女のたしなみ~  作者: 瘴気領域
第五章 草大会 x 元プロ x 忍者軍団

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第29話

 この状況がマズイのは、わたしにもわかる。

 解錠には制限時間があるのだ。

 解錠権を確保してから2分が経過すると、解錠は失敗。

 わたしたちのチームにマイナス1点が課されることになる。


「くそっ……、固まって後をつけてくるなんて妨害特化の定石なのに、あからさま過ぎて油断した……!」


 言いながら、キリ先輩がナイフを投擲する。

 防御の隙間を狙ったそれは、ほんのわずかに盾をずらしただけで弾かれた。

 ただ盾を並べているだけじゃない。

 練度の高さがうかがえる無駄のなさだ。


「ボクはガーディアンを引き付ける! 突破できたらすぐ飛び込むから!」


 じりじりと近づいていたストーンゴレームを、キリ先輩が宝箱の逆方向へと走って引き付ける。ガーディアンは解錠権を得たプレイヤーを狙う。のんびり一箇所に留まっているわけにはいかないのだ。


「小手先じゃ通じねえ! 突っ込むぞ、一年!」

「お、おう!」


 バイクを復号(アンジップ)した鬼嶋がアクセルをめいっぱい吹かし、わたしも全力で地面を蹴る。

 一気にトップスピードへ達したバイクが、盾の城壁に突き刺さる。


「ぶっ飛べやぁぁぁあああああ……ああああああああっ!?」


 バイクが盾の城壁を飛び越え、空中にすっ飛んでいく。

 斜めに構えられた盾に乗り上げ、ジャンプ台よろしく飛び出してしまったのだ。


「きゃはははは! 見事なジャンプねえ!」

「金メダルものよ~」

「でも競技が違うんじゃないかしら~」

「くそがーーーーっ!!」


 偶然ではない。明らかに狙っていた。

 突っ込んできたバイクをそんな手段でいなすなんて、一体どんな練習を積めばできるんだよ……!

 とはいえ、感心してばかりではいられない。

 わたしも仕掛けなければ!


「だぁぁぁぁああああしゃあっっっ!」


 全速力からの跳躍。

 バイクを受け流した盾は、斜め後ろに傾いている。

 盾の裏では無理な姿勢を取っているはずだ。

 ここで盾の上辺を思いっきり踏みつけてやれば……!


「踏み潰して……あいったあっ!?」


 しかし、足裏に走るはずの衝撃はなく、代わりにふくらはぎに激痛が走る。

 空中でバランスを崩したところを盾で突き飛ばされ、もんどり打って石畳に転がった。


「きゃははは、温故堂のみなさまは空中プレイがお好きなのお?」

「見事なバック転だったわねえ」

「でも着地は零点だわあ」


 ぐぎぎぎぎ、してやられた……。

 バイクをいなした後、盾を傾けたままだったのは誘いだったのだ。

 わたしの飛び蹴りに合わせて角度を戻し、盾の上端でふくらはぎをかち上げたというわけだ。


 痛みを堪えつつ、追撃に備えて体勢を整える。

 しかし、城壁はその場に留まったまま動かない。


「徹底して守りの姿勢みてえだな」

 鬼嶋のバイクが、わたしの隣で甲高いブレーキ音を立てた。

 見事な大ジャンプをした鬼嶋だが、きっちり着地してリカバリーしたらしい。


「押してダメなら……わかるな。合わせろ」

「おう!」


 鬼嶋が目配せしたのは左端の盾。

 バイクを降りた鬼嶋と同時に飛び出し、盾の縁を掴んで引き倒そうと力を入れる。


「あいったぁっ!?」


 しかし、またしても激痛。

 今度は指。

 右の縁を掴んだわたしの指を、隣の盾が挟んだのだ。


「ぐああああっ!?」

「ぬわあああっ!?」


 おまけに鬼嶋と悲鳴をハモってしまう。

 引く力に合わせて押し出された盾が、我々の顔面を思いっきり殴りつけたのだ。

 続けて、わずかに持ち上げられた盾が、その下端でつま先を潰さんと振り下ろされ――


「て、撤退!」

「ぐえっ」


 鬼嶋の襟首を掴み、ぎりぎりのところでバックステップを踏んだ。

 ついさっきまでつま先があったところには、鋼鉄の盾の下端が石畳にめり込みひび割れを作り出している。

 いくら安全靴を履いていると言っても、何十キロもありそうな鉄塊を叩きつけられてはひとたまりもない。


 もしもかわせてなかったら――


 想像が脳裏をよぎり、冷や汗が流れる。

 つま先への踏みつけはうちの流派でも多用する技だ。

 神経が集中するその箇所への打撃が、どれだけ痛いかは身にしみて知っている。


「……ちっ、助かったよ」

「えっ?」


 あれ、いま鬼嶋が何か変なことを口走った気が……。

 鬼嶋の口から出るはずもない、感謝の言葉的な何かが……。


「呆けてる場合じゃねえぞ! 次はこれ使うぞ!」

「は、はい!」


 鬼嶋が取り出したのは鉤付きのロープだ。

 これで引っ掛けてわたしと鬼嶋のバイクで引っ張れば――


「きゃははは! そんなもの、素直に引っ掛けさせてあげるわけないでしょお」

 しかし、鉤縄はあっさり外されてしまう。


「この盾はぜ~んぶ鋼鉄製なの~。鈎が食い込むわけないわ~」

「裏側はツルツルのパ・イ・パ・ン。引っ掛けるところもないの~」

「ちいっ……」

「きゃはははははははははは!」

 鬼嶋の舌打ちに返ってくるのは、けたたましい哄笑。


 ぬうう、打つ手なしだ。

 そうだ、キリ先輩は――

 視線を向けるが、ストーンゴーレムの誘導で手一杯になっている。


「そうだ、ストーンゴーレムをおばさんたちに誘導すれば……」

「意味ねーよ。そこからゴーレムを引き剥がして解錠しなきゃなんねーんだから」


 うう、そうだった。

 すっかり盾おばさんたちに意識を奪われてたけど、ただあの城壁を崩せばいいってわけじゃなく、その後に解錠できなければ意味がない。


 ――ビィィィィィィィィィィイイイイイイイイ……


 そのとき、無情なブザー音が響き渡った。

 視界の端に浮かぶ半透明のミニマップ。

 その得点ボードに、【-1点】が刻まれた。

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