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いのち短し潜れよ乙女~ダンジョン道は乙女のたしなみ~  作者: 瘴気領域
第四章 宝探し x 天然ダンジョン x チームワーク

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第25話

 それからも探索を続け、何回かの戦闘をこなした。

 宝箱のドロップもあり、素材はぜんぶで3つほど入手できている。


「できればもうちょっと欲しいところだね」

「だな。姉ちゃんは最低3つありゃ足りるっつってたけど」


 修理代までタダにしてもらうのだ。

 最低限のギリギリで済ませてしまっては申し訳ない。

 幸い、時間はあるはずだ。

 スマホで確認すると、まだお昼を過ぎたくらいだった。

 しかし、ダンジョン内じゃ圏外だし、時間を見るためだけにいちいち取り出すのは面倒くさいな。

 ダンジョン用に安い腕時計でも買おうかなあ。

 あれ、こういうのもダンジョンギアで揃えた方がいいのかな?


 きゅ~~~……


 あ、時間を意識したらお腹が鳴っちゃった。

 そういえばダンジョン内での食事ってどうするんだろう。


「もういい時間だね。そろそろお昼にしよっか」

「誰かさんの腹の虫も我慢できねえみてえだしなー」

 と、言った鬼嶋のお腹からも「くるるる……」と音がした。


「い、いまのは(ちげ)えからな」

 鬼嶋はほんのり赤く染まった顔を逸らす。

 ふふ、貴様だってお腹が空いていたんじゃあないか。


 各自のリュックサックからお弁当を取り出す。

 わたしはコンビニで買ったパンとお菓子。

 キリ先輩は手作りのサンドイッチ。

 鬼嶋はお弁当箱に入った俵型おむすびとタコさんウインナーと唐揚げと卵焼きとプチトマトとブロッコリーと……


「って、おい」

「あン? なんだよ?」

「キャラじゃないだろ」

「ハア?」

「おまえはっ! 手作りお弁当とかっ! そういうっ! キャラじゃっ! ないだろっ!!」

「ンだよそれは……」


 わたしの涙ながらのツッコミに、鬼嶋は素で引いていた。


「い、一個食うか……?」

「う゛ん゛っ!」


 俵おむすびはわかめの混ぜご飯で、具材にシャケまで入っていた。

 卵焼きも甘くて美味しい。

 はあ、手作りの味だ……。

 じいちゃんちではろくに食べられなかったし、寮のご飯もおいしいんだけどどこか味わいがないっていうか、こう、なんていうかね、作り手の愛がこもった料理と言うのはよいものだよね……。


「だ、大丈夫かおまえ? だいぶキメエぞ……」

「ア、アカリちゃん? わたしのサンドイッチも食べる?」

「う゛ん゛っ!」


 ハムサンドとツナサンドをもらう。

 キリ先輩に合わせてか、かわいらしい一口サイズだ。

 こちらもコンビニのサンドイッチにはない滋味を感じる。


「ありがてえ……ありがてえ……。お代官様、よかったらこちらをお収めくだせえ……」

 御礼として、涙ながらにパンやお菓子を差し出す。


「き、気にしないで。シェアするつもりで多めに作ってきたから」

「オ、オレのもあんま食い過ぎなきゃかまわねえぞ」

「ありがてえ……ありがてえ……」


 そんな具合で、お昼はお弁当交換会の様相を呈した。

 わたしもお弁当ぐらいは作れるようになった方がいいのかなあ。


「あ、そういえば、ダンジョン内で食べたものってどうなるんです?」

 水筒から注いだ食後のお茶をすすりながら、ふと気になったことを聞く。


「おいおい、そういうのはふつー食べる前に聞かねえか」

「あはは、ボクたちが食べてたから気にならなかったんでしょ」

 鬼嶋は呆れ顔だが、キリ先輩がフォローしてくれた。


「ダンジョン内で食べたものはプラーナだけがなくなって、形は残るよ」

「おお! じゃあ出入りを繰り返せば食べ放題!?」

「ううん、一旦プラーナが抜けちゃうと、もうダンジョンに入っても具現化されないんだ。それに、プラーナが抜けた食べ物は味も栄養もなくなるから、リアルでも食べられなくなっちゃうね」


 へえ、なんだか不思議だが、食べ物がそれ自体のプラーナで具現化していると考えれば辻褄が合うのかな?

 もし食べ物までわたしたちのプラーナで作られてたら、タコが自分の足を食べてるようなものだもんなあ。


 * * *


 お昼休憩を終えて、わたしたちは探索を続行した。

 油断するつもりはないが、だいぶ慣れてきた。

 このダンジョンに――というより、先輩たちとの連携にだ。


 進行中の適切な距離。

 キリ先輩が罠の解除や宝箱の解錠をするときは周辺の警戒。

 戦闘ではわたしと鬼嶋が前衛で、キリ先輩が遊撃。

 こういう配置が声掛けなしでもできるようになってきたのだ。

 キリ先輩と鬼嶋のコンビネーションにはまだまだ及ばないが、なかなかサマになってきたんじゃないだろうか。


 おかげで探索のペースも上がり、そして徐々に深層に進んだおかげか戦闘の頻度も増え、素材を6つ追加で手に入れていた。


「全部で9個。どーせならキリよく10個集めてえな」

「そうだね。時間的にもちょうどよくなりそうだし」


 そんな気持ちが通じたのか、これまででもっとも広い空間に出た。

 線路はその中央付近で終点を迎え、すぐ脇に赤錆びたトロッコが横転している。


 その奥には、熊笹で覆われた小山のように大きい何か。

 うずくまっていた何かが、ゆっくりと立ち上がる。

 猪に似た頭が、天井につきそうだ。

 見た目は猪笹(いざさ)と大差がないが、縦にも横にも倍はでかい。

 違うところもある。

 武器は石槍ではなく、金属製の巨大なつるはしで、纏う熊笹の蓑も金属質の鈍い輝きを放っていた。


猪笹王(いざさのおう)……!」

 キリ先輩がつぶやく。

 苺心さんから聞いていた、このダンジョンの上位モンスターだ。


「へえ、最後にレアモンとはわかってんじゃねえか」

 鬼嶋はバイクを具現化し、それにまたがりエンジンを吹かす。


「それじゃ、一丁仕上げをやったりますか!」

 わたしは右の拳を左の掌に叩きつけ、にっと笑って気合を入れる。


 坑道を丸ごと震わせるような雄叫びを上げる猪笹王を囲み、戦闘態勢に入った。

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