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19+2.幽霊男爵は御入用ですか?後編

※前日12/22日も投稿しておりますので、見落とし無きようご注意を。

  ◆◇ここから当事者はホラーです◇◆


 裏口の扉は何の問題も無く開き、こちら側も一見荒れています。

 ですが水漏れや草木の痕跡は全くありません。単に古いだけ。窓から風が吹き抜ける様で、埃は殆どありません。


「皆さん、魔力の気配が。」

「ギィエッ!ギィエッ!ギィエッ!ギィエッ!ギィエッ!ギィエッ…………!」


 廊下に入った一同の前を、頭が逆さになったダンサーが通り抜けます。


「「「…………。」」」


 無言で通り過ぎた先を見ると、ダンサーに見えたのは女性型のブリキ人形。

 但し壁に到達して戻って来た人形は恐らく女性型だったのでしょう。

 頭部が壊れて顎から折れており、長い髪が地面を引き摺っているのが今の笑い声の様な軋んだ異音の原因の様です。


 何故か両手は踊る様に伸ばされ、振り回されていましたが。一通り目に付く床を走り終わると胸を開き、腹からゴミ袋を取り出して窓の外に中身を捨てます。

 ブラ付きです。ゴミ袋は赤でした。

 ゴミを捨て終わった女性ダンサーは、袋を腹に装着すると、そのまま服型の扉を閉じて、頭を正位置に起こしました。

 最後に一礼すると、自分から近くのロッカーの中に入って行きます。


「「「…………え?今の何。」」」


 魔法の気配はバンバンしておりますが、確認する勇気はありません。


 全員で頷き合って、先ずは魔法の気配の無い、従者達の雑魚寝部屋に。

 ここは複数人が寝られるベッドがあったのでしょうが、今は壁に台が並ぶだけ。

 どうもこちらは半人前や身分の低い従者達が生活する空間だったようですね。


 さて。気になる部屋を見つけました。一つは階段部屋と思しき南京錠のかかった狭い扉付きの場所。物置程度の幅です。

 もう一つは恐らく倉庫。こちらも鍵付きですが、壊れています。


「あのお嬢様、倉庫に魔力の気配は。」

「ありませんね。先に見ましょうか。」


 〔遠見〕だと暗い部屋の様子は分からないんですよね。輪郭はある程度見当は付くんですけど、細かな仕掛けや構造はちょっと。

 私が知っていれば大体分かるんですが。


「「「…………。」」」


 山積みのゴミと人形の残骸が幾つか。まるで死体置き場の様に放置されてます。

 ブリキ人形の部品でしょうかね。バラバラの四肢と胴体の部品が壁一面の棚に、所狭しと並べてあります。


 ボロボロの服も、動物の皮も。全て壁に無造作に並べてありました。

 年代物です。室内全て埃だらけです。

……なので、男爵の時代からあっても不思議はありません。


「……次に行きましょう。」


「そうだな、そうしよう。」

「「あ。」」


 ギクシャクと扉に手を伸ばしたバルベルド卿は、南京錠の事を忘れていたらしく派手に取っ手を握り潰して?とにかく叩き付けるように壊してしまいました。

 今凄い音立てて壊れましたね。何というか、気まずい空気が流れます。


「と、とにかく先に進もう!」


 壊れた扉を退けながら私達に弁解するバルベルド卿の後ろには、巨大な舌と大口が開いていました。


「伏「あン!」……。」


 とっさの抜刀中、横にいた筈のカードックが足を滑らせて悲鳴の様な声を。

 後ろでは物凄い形相で腰をヒクヒクさせながら地面で泡噴くカードックが。

 その。足の付け根にね?蹴り飛ばしたと覚しき生首がね?確かピンボールって言うんじゃないかな?こう言うの。

 うん。剥げた頭がこっち見ながらめり込んでいるの。


「おぐぁがぎゃぎゃぎゃぎゃがぁッ!!」


 振り向いてカードックの状況を把握した瞬間。

 またも背後というかさっきのバルベルド卿が、おかしな悲鳴を上げながら遠ざかります。頭が真っ白になる暇もありませんでした。


「えちょ?!」


 振り向くと巨大な謎物体?巨大なカンテラっぽい何かの舌に全身を絡め取られた事に、背筋を舐められる恐怖を感じて悲鳴を上げている青年。

 いや何で器物の口の中に収まった姿のバルベルド卿が?勢い良く開け放たれた扉の向こうで飲み込まれると、ぺっと裏庭で吐き出されました。


 あ。うん。不味かったのかな?

 ていうかあの舌紐代わりだったんだね。先っちょの火って必要かな?


「あ、〔火球(ファイア)〕ね?」


 とりあえず戻ってきそうだった謎カンテラは、その場で焼却致しました。

 いや考えてみれば燃えるのもおかしいかな?もうほぼ炭だけど。


「さて。取り敢えずお二人とももう大丈夫ですね?」


「「心以外は。」」

「あの光景見せられた私が無事だったと思いますか…………?」


 こっち、見ろ。


 取り敢えず壊れた扉の先は、階段が下に続いていました。

 幻痛が残っているという両手の塞がったカードックは最後尾。

 流石に今の後でバルベルド卿に先頭を進ませる気にはなれません。

 下の階に降りるまでは私が最初に降りさせて頂きました。


 両脇は手を付ける程に狭いですが、急勾配という程ではありません。

 そうですね、両手で荷物をもったまま上り下りは普通に出来るでしょう。

 階段の下にはやはり扉が。こちらは鍵も無く、〔遠目〕で見ても廊下と分かれ道しか有りません。

 扉というか、床一体に魔力の残滓を感じつつも、何事もなく開けました。


「近い方と奥に、同じ方向に曲がり角、ですか。

 家の地下と考えれば、奥の方で一階の吹き抜けに届かない辺りでしょうか?」


「玄関ホールの真下が埋まっている感じか?」


「曲がった先に扉が無ければ恐らく。」


 近い曲がり角は、恐らく裏口区画との境界線。本来で有れば、見習いと客の世話が出来る従者の境界線だったのでしょう。

……いや。男爵の趣味部屋と化していた可能性がありますが。


 もしかしてこちら側が隔離されていた理由、不審者じゃなくて男爵の趣味が隔離されていた可能性もあるのでは?


「お二人共、此処から先は注意して下さい。

 この階は部屋どころか廊下全てにすら魔力の気配を感じます。」


 魔法の知識の少ない私では、これが範囲を指定した結界なのか。それとも単なる罠の痕跡か。一切の区別が付きません。


 慎重に廊下を進み、最初の曲がり角を曲がると。

 真ん中辺りに扉があって、その奥にも扉と曲がり角が。曲がり角は後ろと同じ、玄関側ですね。もしかして四角い9の字型かも。

 予定通り、離れた場所から扉を開けます。


「これは……畑?」


 入り口から見えたのは、まるで温室の様なランプの灯りに照らされた野菜畑。

 不自然な程に整い、瑞々しい食材が育っていました。

 今迄で一番の不自然に、私は慎重に足を踏み入れます。


「近くには何も無さそうで……。」

「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャッッ!ゥシャシャシャシャッッッ!!」


……中に入った私の前で、巨大な犬の生首が大声で()()()います。


「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャッッ!ゥシャシャシャシャッッッ!!」

「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャッッ!ゥシャシャシャシャッッッ!!」


 魔力の手。影の両手を伸ばしますが、触れません。

 幻燈の様なものなのでしょう。

 繰り返し繰り返し。同じ笑い方で目の前で。

 涎を跳び散らしながら、舌なめずりして。何度も何度も。


「お、落ち着くんだ!アザリア嬢!」

「ホラ手を増やさないで!〔鬼火〕握らないで!

 熱い!熱いですから!お願い止めて!?」



「「「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャッッ!ゥシャシャシャシャッッッ!!」」」



 増えた三つの生首をそれぞれ全力で殴ってみました。

 分かっていたけど手応え全く無いんですよォォぉ…………。




 心がささくれ立った私達は、適当に畑を確認した後で部屋を出ました。

 屋根のある部屋で野菜が育つなど、本来であれは詳しく知りたい話です。


「「「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャッッ!ゥシャシャシャシャッッッ!!」」」


 〔黒雲〕に包み込めば一応この不快な犬は消せました。

 ですがこの犬は、あの部屋にいる限り何度でも復活するのです。

 部屋を出た後で辺り一面を〔黒雲〕で埋め尽くすと、流石に今度は復活しませんでした。恐らくあの部屋限定の仕掛けなのでしょう。


 私は力一杯深呼吸して、気持ちを切り替える事に致しました。


「さて。先に進みましょうか。」

「「ははぁッッッッ!!!!!!」」


……土下座せんでも。そんなに私怖かったですか?


「いえ、まぁ。別人でした。」

「今のアザリア嬢はむしろそそる位可愛いぞ?

 でも流石にさっきのアナタは勘弁だ!」


……うん。深く考えないようにしよう。一旦奥まで進んで扉を確認。


…………隣から予想は出来ましたけど。

 ここ農具部屋、物置ですね。中の扉は畑に繋がっているのでしょう。中に入る気はしないので、次々。


「大体最初の曲がり角と同じくらいで曲がってますね……。」

「次の扉は私に入らせて下さいお嬢様。」


「構いませんが、もう大丈夫ですか?」

「ッぅ!問題ありませんので、お忘れ下さい。」

「「はい。」」


 触れない優しさを胸に、次の扉はやはり畑と同じ方角に一つのみ。

 ですが先程と違うのは中から明りが漏れていて、扉が開いていた事でしょう。

 これは本番かなと息を潜めながら扉に近付き。


「ぅいぃぃぃい、ぅぇッぷ!ヴぁぁあぁァ~~~ッく!お客さんかね?

 構わないから入って来なさい。こっちまで警報が聞こえていたよ!」


……顔を見合わせて、取り敢えず中に入る事にしました。

 今()()って言ったかな?ん?


「お嬢様。その笑顔怖いです。」

「……コホン。とにかく入りましょう。」


 声のした部屋に入るとそこは辺り一面本だらけの書庫でした。

 本は幾度か崩れた様で、順番も積み方も滅茶苦茶でした。ですがその程度で本に傷が付く事は無いのでしょう。

 この部屋にある全ての本は、魔力を帯びていました。

 恐らくは補強か修繕の魔術を。


 部屋の奥には巨大な本棚付きの机と、脇には金属補強された扉。

 この状況だと奥は実験室に類する何かでしょうか?机の中央には胡坐(あぐら)を掻いて座れそうな椅子が一つ。

 椅子は私達が近付いたところで回転し、その座り主の姿を見せました。


「やあ御機嫌よう諸君。

 君達はこの階を訪れた久々の客人だ、歓迎しよう。」


 そこに居たのは人では無く。等身大の喋る()()だったのです。


  ◆◇ホラーここまで◇◆


 まるで歩く様に椅子の脚を進ませ、人形は一同の前に降り立ちます。

 その姿は一言で評するなら白衣の初老男。マントというよりは作業用に一枚防水性の高い服を羽織った感じでしょうか?

 けれど人形で後頭部に白髪を残しているのに頭部が剥げている意味は一体……。


「これは単に実験で燃えただけじゃ。

 髪が必要になったら頭部を交換するわい。」


「はぅ!……そんなに分かり易かったですか?」


「全身で聞くのを我慢しているのが伝わって来たぞい。

 それでお前さん達、ここへ何しに来たんじゃい?」


「ええと。要約するとここで起きている幽霊男爵騒動を解決して、麓の工事を円滑に進めるために来ました。

 あなたは元々のここの持ち主から、正式に土地を引き継いで居ませんね?」


「ふむ。幽霊男爵?色々聞きたい事はあるが……。

 お前さん、ワシと交渉する事に何の疑問も抱かんのか?」


 初老の人形はさも生きているかの様に首を傾げます。ですが、ええ確かに本来はその通りなのでしょうね。

 この時代に限らず、人形が喋り出すというのは本来ホラーになります。


 離れた相手と会話する魔法は存在しますが、現状で狼煙や手旗信号を上回る通信手段はありません。壁に囲まれた部屋で可能かと言われれば更に別の話。

 ですが隣の部屋から人形の口を使って話す事は、魔導具なら不可能では無い。

 であれば。私は、彼に出て来る様に要求するのが正しい対応でしょう。


 この点に疑問を抱いたからこそ、バルベルド卿とカードックは口を挟めませんでした。私が当たり前の様に人形と応対していたから。

 では何故それをしなかったのか。それは単純。


「あなたの魂はその()()()()にあるでしょう?」


「「?!」」

「ほう!君はこのワシに魂が宿っていると言い切るのかね?!」


 驚愕の表情を浮かべる二人とは対照的に、人形は弾力のある顔の肌を歪めて嬉々とした声で理由を訊ねます。


「実は私、とある事情でこの通り怨霊と一体化しておりまして。

 魔法に限らず呪詛や呪いもはっきりと認識出来るんです。生き物の気配も鮮明に感じ取れますよ?勿論、魂の有無も見れば判ります。」


「ふむ。だが何故ワシを警戒しない?

 君の主張通りなら、人形に魂が宿っているワシは死霊そのものだろう?」


 コクコクコクコクコクコクコクコク。

 物凄いそうと、後ろの二人が訴えます。


「私、この屋敷を調べていてずっと違和感を感じていたんです。

 この屋敷からは魔法の気配こそすれど、全く幽霊に必須の呪詛や未練などの負の感情が感じ取れないって。

 今、あなたを見てその疑問が確信に変わりましたわ。」


「ほう!それは一体何故?!」

 彼は面白そうに問いかけ。


「あなたは正しい意味でまだ死んでいません。

 あなたの魂は錬金術で、生きた人間から移し取ったものですね?

 どの様な原理かは知りませんが、あなたはその作り物の体で生命を保つ事に成功している。違いますか?」


「ふぁははははははは!素晴らしい!そうか、ワシは成功しているか!

 何分ワシは自分が死者の意識を複製したのか、意思があると錯覚しているだけの人形なのか、確認する手段が無かったのでな!礼を言うぞ嬢ちゃん!

 そう、その通り!ワシこそ人形に自分の魂を封じ込めて自由に操る事に成功した稀代の錬金術師、ピタゴラス・イッチじゃ!」


「それでは改めまして、グロリエル地方支配者一族が長女。

 辺境伯令嬢アザリア・グロリエルと申します。以後お見知り置きを。」


 改めて事情を聴いたところ。

 噂の男爵に付いては知らないが、ここ百年以上はこの館を根城にしており近隣の町や村で目撃された黒甲冑の騎士なら彼の旅路用人形だそうです。


 今の彼の体では食事を楽しむには専用の体が必要で、結果的に食事は贅沢行為になってしまったそうです。

 ので月一くらいで軽食を買いに来訪していたのだとか。


「会話機能は予算不足でな。戦闘用の人形の方には付けておらんのよ。

 此処は人が来ないし今の儂には食事の代わりに魔石が必要でな。魔物を狩るために戦闘が得意な人形は必要不可欠じゃった。」


「お話をまとめると。

1.幽霊騒動は館へ侵入した連中なら裏口から入った者以外無関係。

2.ここは研究場所と魔石の確保の為に定住していただけ。

3.甲冑人形は専用の出入口から出入りしており、何代前かの領主に許可を取って以来更新はしていなかった。

 以上で間違いありませんか?」


 アザリアの問いにその通りじゃと頷くピタゴラス老人。


「何なら御令嬢がワシのスポンサーになってくれるなら、ワシの発明品を色々融通してやるぞぃ!」


「ちょ、お待ち下さいアザリア様!この男、危険にも程があります!

 そもそも魔力で動く人形を作れる錬金術師など非常識です!不可能です!

 巷で噂のホルムんクルスは未だ完成したとは終ぞ聞かぬ、錬金術師の夢。有名な与太話の類ですし。

 ゴーレムというのは単なる魔物、錬金術師が作ったというのは都市伝説です!

 先に何か、その者の錬金術の腕を見せて貰うべきです!」


「ふむ。道中にあったワシの発明品では証明にならんか?」


 ガタリ。思わず三人武器を抜きかけました。

 落ち着いて再び席に座り直して。


「じゃあ鞄の内容量を超えて収納出来る、この魔導鞄なんてどうじゃ?」


 ざわり、と全員が脂汗をかきました。

 肩に担ぐサイズの鞄から、話に出て来た黒甲冑の騎士人形がゴトリ。

 二人曰く「「国宝級の魔導具。」」だそうで。そうだね、兵站狂うね。


「後は小物なら何でも粉砕分解して肥料化する事に成功した掃除機とか。」

 びくり。


「太陽の光を溜めた期間分使える、太陽代わりになる水晶球とかは?」

 ビクビク。


 危ない。この人危ない。私にも分かる位常識的な錬金術師の枠を超えてます。

 質が悪いのは間違いなく有益な発明品だという事です。正直欲しい。


「というかいっそ、私の魔法の先生になってくれませんかね。」


「別に構わんぞ?ワシもこの身体になってから、ちょいと弟子の存在が欲しくなったところだしの。

 御令嬢のその、魂が見えるという力にも興味がある。」


 思わず目が合い、スパァン!と小気味良い音を立てて手を握り合います。


「そこ!意気投合する前に雇用条件を確認する方が先です!」


 くぅ。まあ当然ですか。実際危険物も作ってそうですし。




 取り敢えず全員で町に戻って翌日。


「幽霊騒動が解決した、ですか?」


「ええそうなんですよ。

 実は御令嬢の出立後、とある魔物討伐を引き受けていた冒険者パーティがあの近くで別の魔物に襲撃されたと報告に来まして。

 それで死体を確認したところ、討伐された魔物は最近話題の新種B級モンスターのゲーターサウルスだと判明したんです。

 男爵の幽霊に襲われたと言ってた連中も、死体を見てコイツで間違いないと証言が取れました。」


 ゲーターサウルス。一見して二足歩行の蜥蜴ですが、頭部が鰐の如く長くて口を開けば鉄を噛み砕く数々の牙が、顎の長さと同じくらいまで伸びるという。


……成程。この外見なら納得ですね。

 あの笑う犬やカンテラに追い出された後でその鰐蜥蜴と遭遇したら、私も普通に館内の同類だと思ってしまいそうです。

 危険度は段違いですが。



 微妙な徒労感を覚えつつ、町長宅を後にしました。


 隠し通路の所在も把握しましたし、今回の一件は間違いなく収支上ではプラスに転じている筈です。

 幽霊男爵の件はこれで完全に解決したのだと、自分を慰め気を紛らわそうとしてふと、何か軽口を叩きたい気分です。


「ところで何であんな外見の番人ばかり用意したんですか?」


「流石に状況判断が出来る様な魔導具なんて作れないからのぅ。

 だからなるべく格好イイ奴を厳選しておいた!」


「注文する時は中身よりデザインに注意を払う必要がありそうですね……。」


「「えー。」」


 まさか同意があるとは思わず、慌てて振り向いたのですが。どちらも驚いた様に首を傾げ、残念ながらどちらの呟きだったのかは分かりませんでした。


……?いや何で二人反応してなかったんだろう。

 え?あれ?同行しているのは三人、ですよね?

 ピタゴラス老、バルベルド卿、家令カードック。

 え?もしかして候補全員?いやまさかまさか……。




 尚。この時アザリアは何も気付いていなかった。


 錬金術師ピタゴラスに仕事を依頼する際、最初に遭遇するのが技術者集団随一の変わり者グレムリン一族の一人、セメクト・グレムリンである事も。


 セメクトは今、一切金属を使わずに組み上げる物見櫓という時代を超えた代物の設計図に狂喜乱舞しているという事も。

 ジェメシスの刀匠達と鍛冶職人達が意気投合し、教え合い競い合っている中。

 そこに設置されるバリスタやカタパルトも予算に影響を与えない範囲で自由改造を許可した結果、起こり得る化学反応も。


 そこに。ピタゴラス・イッチという錬金術師が参加する事で、自腹で彼女の知らない新技術が注ぎ込まれてゆくという事実も。


 彼女は未だ、何も気付いていない。

※前日12/22日も投稿しておりますので、見落とし無きようご注意を。

※次の閑話は三分割で、12/29~31日を予定しております。


 か~ッ!ここに魔法知識と盗賊技能持ちが両方揃った人材が居ればな~!

 お姫様じゃ透視や感知は出来ても判別出来ないからw!

 因みにカードックは罠は発見出来ましたよ?ええ、俗にいうファンブルを引いただけでw


 追伸。実はヤバい技術を使われていたカタパルトやバリスタ。実は連弩や爆発物を混ぜようかと思ってたけど後のテンポが悪くなるかな、と省きましたw

 割と機械仕掛けだったのはこの所為ですw

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