↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/23

第十五話「生活の形」

■フィロニィ

数日が、そのまま過ぎました。

朝、一階を開けます。ツムギさんが仕込みをします。私とメルセミュ様が手伝います。

昼前に二階へ上がります。リュバン様に食事を持っていきます。傷の確認をします。

午後、また一階に戻ります。夕方、店を閉めます。

それが、繰り返されました。

気づいたら、当たり前になっていました。


■メルセミュ

ある朝、リュバンが言った。

「一階へ行きたい」

フィロニィが少し考えて言った。

「支えれば行けます。ただ、階段が」

「二人がいる」

私はフィロニィを見た。フィロニィが頷いた。

三人で、ゆっくり階段を降りた。リュバンが手すりを持つ。私とフィロニィが両側を支える。

一段ずつ。


■フィロニィ

一階に降りた時、リュバン様が少し止まりました。

店の中を見ていました。

棚のパン。テーブルと椅子。カウンターのツムギさん。

ツムギさんが振り返りました。

「いらっしゃいませ」

いつも通りでした。

リュバン様の表情が、少し動きました。なんと表現すればいいかわかりませんでした。でも、良かったと思いました。


■メルセミュ

リュバンが椅子に座った。店の中を、もう一回見渡した。

「変わってないな」

「変えてないから」

リュバンが私を見た。何も言わなかった。でも、目が少し動いた。

客が来た。リュバンを見て、少し驚いた顔をした。

「大将、いたんですか」

「ああ」

「足は」

「少し不自由だが」

客がパンを買って出ていった。リュバンがその背中を見ていた。


■フィロニィ

夕方、店を閉めました。

リュバン様がテーブルに座ったまま、外が暗くなるのを見ていました。

私は奥で煎茶を淹れていました。メルセミュ様が椅子を引いて、リュバン様の近くに座りました。

店の中は静かでした。ツムギさんは十八時になると、いつも通り自室へ戻っていました。

「フィロニィ」

リュバン様が呼びました。

カップを持って、テーブルへ行きました。

「メルセミュ」

「うん」

二人を呼んだのは、珍しかったです。

「世話になっている」

「なってない」

メルセミュ様がすぐに返しました。

「なってる」

リュバン様の声は静かでした。

メルセミュ様は何も言いませんでした。

リュバン様が煎茶を一口飲みました。

「パーティーはどうする」

少し間がありました。

「まだ、決めていません」

私が答えました。

リュバン様は頷きました。

それ以上は聞きませんでした。

店の外で、風が通りました。

ヴェレフェーヌの夜が、静かに始まっていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。