探索魔法で捉えたもの
作品タイトルが変わりました。僕が聖女? いえ、そもそも男です(仮)→私が聖女? いえ、そもそも男です(仮)。 理由としては、主人公は一人称で僕とは使っていなかった為です。
子供たちと別れ、森の一本道を探索魔法で周囲を警戒しながら進む。動物もチラホラ探知に引っかかるが、危険がある動物は近くにはいないようだ。そういえば杖もそうだけど帽子も忘れたな、正直ツバが大きすぎて前がみえづらいんだよね。新しい服をつくるかな! 次のコスプレ……ではなく、洋服を考えながら進んで行く。
「ん? 何かこの匂い知ってるな!」
匂いにつられて近づいてみると、椿のような白い花と実がついた低木が密集していた。その木を鑑定してみるとチャノキと言う名前でお茶に適していて、実からは油がとれるらしい。分かりやすい名前だな! 確かにこの匂いは微かだけど紅茶か! 何の匂いか思い出してスッキリする。
「毒はないようだし、後で飲んでみよう」
適当に収穫しながらふと疑問が浮かぶ。そういえば植物も探索魔法で見つけられないかな? 試しに食べられる植物をイメージして探索魔法を使ってみた。ほとんどの植物のシルエットが白く浮かび上がる。確かに食べようと思えば食べられるか……。もう少し限定しないとダメだな。今度欲しい植物があったら試してみよう。一旦、探索魔法の検証は終わりにして一本道に戻り先に進む。
「結構遠いな……」
しばらく歩いて気付いたのだが、この世界の人の言うすぐ近くと自分のすぐ近くには、かなり認識に違いがあるのではないだろうか。動物との遭遇も増えたし、かなり森の奥まで来たようだがまだ着かないらしい。これだけ動物がいるのに、みんなの話では狩りはほとんどしていないという。武器を持つ事が禁止されているのに、逆にどうやって狩りをするのかって話か……。罠猟とかもやってないのかな? それに武器もないのに魔物や盗賊が来たらどうするんだろう?
考え事をしながら、しばらく歩くとやっと少し先に開けた場所が見えて来た。確かに白っぽい大地がみえる。
「ふ~! やっとか!」
探索魔法で確認しながら進んで行くと、人型の白いシルエットが浮かび上がる。あれ? 一つだけ他よりも大きくて赤いシルエットなんだけど。何か嫌な予感がする! そこからは見つからないように道を外れて、草むらを息を殺してゆっくり進む。かなりの数の生き物が探索魔法の範囲に捉えられ始める。川みたいな所で何かしているな……。やっと見える範囲まで近づくと、人間の子供ぐらいの緑色の生き物が、浅い川で何かを洗っていた。
うは~! 鑑定するまでもなくゴブリンじゃん! だよね……? 一応、鑑定してみると白いシルエットに見えていた生き物は全部ゴブリンでLv5~Lv7だった。赤いシルエットはオークでLv9、顔は豚のようで体は相撲取りのようだ。そして手にはデカい斧を持っている。えっ! 格上じゃん! どうしよう。というか敵だよね……隣の村の住人って事はないよね? 人間以外の国もあるって言ってたけど、どこまでなんだ?
いきなり攻撃して国際問題とかシャレにならないからな。モンスターではないのか? オークは明らかに殺意が溢れているし、ゴブリンも頭が大きく邪悪な顔に灰色の髪の毛で長いあごひげがある者もいる。見た目は明らかに悪者なんだよな。でもゴブリンは意味なくオークに暴力を振るわれていて、怯えている感じもする。なんだか可哀想。
ゴブリンじゃやっぱり勝てないのかな? 詳しく鑑定してみるとゴブリンは、個体にもよるが家事のスキルを持っている物がチラホラいた。見た目に似合わず意外にも家庭的? 一瞬、目が点になったが気を取り直してさらに鑑定すると、種族スキルの変身と金属加工などを所持している者もいた。種族スキルといいながらも全員が持っていないのは、条件とか素質やセンスが必要なのか、絶対取れるものではないのかもしれない。
オークも詳しく鑑定してみると、斧術と種族スキルの咆哮。ユニークスキルの隷属だった。心が折れた者を自分の支配下に置くことが出来るらしい。ゴブリンたちは一回襲撃されたかなんかで、支配されてしまったのか? 君子危うきに近寄らずって言うし、ここは大人しく帰りましょう。オークたちを警戒しながら、ゆっくり後ろに下がっていく。
その時『バキッ!』と大きな音がなる。息をのんで足元を見ると木の枝を踏んでしまったようだ。近くにいたゴブリンの一匹が、反応してゆっくりと近寄って来る。声を出さないように手で口をおさえて、近くの木の陰に身を隠す。見つかってはいないはずだが、何か小声でこちらに向かって話かけてきた。
「もしも仲間なら早く逃げろ! 自分以外はすべてあいつに支配されてしまった」
人間の言葉ではないが理解できた。言語理解Lv10のおかげか?
「あなたはどうするんですか?」
ゴブリン語? かよくわからないが質問してみる。ゴブリンは本当に仲間がいた事に、少しビックリしたが話を続ける。
「なんだその気取った喋り方は? 都会の屋敷しもべでもしていたのか? まあいい、私は隙を見てあいつを倒そうと思う。お前は早く逃げろ!」
えっ? 屋敷しもべってゴブリンなの? それともゴブリンジョーク的なヤツ? 何か見た目は怖いけど良い奴っぽい。なんだか助けてあげたくなった。
「手伝いましょうか?」
「ゴブリンが何匹いても残念だが結果は変わらないだろう。ならば少し遠いが山を越えた先の湖に住むウンディーネ様を連れて来てくれ!」
そう言ってそのゴブリンは気付かれるからと、また元の場所に戻って行ってしまった。ゴブリンが想像よりもかなり知的な事も驚いたが、情報が多すぎてもうわけワカメだよ。