オークとの戦い
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オレのネイティブな発音のゴブリン語のおかげで、オレの事を人間とも疑わずにゴブリンは仲間の所に戻って行った。何か山を越えた先のウンナントカさんを呼んで来て欲しいと言われたが、四方に山があるこの場所で一体どの山の事なんだか? それに海外の人の名前は覚えにくいんだよね。もう一度聞きに行くわけにもいかないし……。 取りあえずあのオークを倒せばいいんだよな?
ウォーターカッターの威力だったら、木を何本も切り倒したのを考えれば真っ二つにできそうだけど、効かなかったらほぼ詰むのでは……。相手のレベルも自分より上だし何か他の手段もいくつか考えた方がいいかもな。
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準備を終え大きく深呼吸をする。
「い、行くか!」
震える体に気合を入れる為に両頬を叩き、気持ちを奮い立たせる。やる事はやったし駄目だったら部屋を出して逃げ込もう! さすがに何日もその場で待ってはいないだろうし、いなくなった時を見計らって村に戻れば問題ないだろう。でも気掛かりは帰ってこないオレを心配して村人が探しに来ないかだけど、そうならない為にもできるだけ倒したい。
覚悟を決めてゴブリンとオークのいる死の大地に一人で歩いて行く。それに気付いたゴブリンたちがこちらに顔を向ける。
「人間ここから逃げろ! ここは危ない!」
驚いたことにゴブリンは人間の言葉を発した。その言葉に何故かゴブリンの言葉で返す。
「大丈夫! みんなを助けに来たよ!」
ゴブリンも自分たちの言葉を話す相手に驚いたのか唖然としていた。昔、海外の人に流暢な日本語で話しかけられているのに、混乱して片言の英語で返した事を思い出し少し恥ずかしくなる。
「ブオォォ~~!」
オレの存在に気付いたオークは、空気が揺れるほどの大きな咆哮を上げた後、ゆっくりとこちらに向かって歩き始める。どうやらオークは自ら戦う気満々のようで、ゴブリンたちに命令をして、オレを捕まえるような気はないようだ。よっぽど自信があるか、そこまで考える頭がないかのどちらかだが、後者である事を願いたい。
「人間の女、うまそう!」
オークも何故かゴブリンと同じ言葉を話した。その言葉を理解した瞬間に魔法を放つ!
「ウォーターカッター!」
水の刃がオークの首元へと飛んでいく! しかし『バキン!』と大きな音を立てて、水の刃がその場で消滅してしまった。ヤバい! 効かなかった……。鑑定ではそんなスキルや魔法は持って無かったハズだが……。
「水の魔法! ウンディーネ様だ! みんな目を覚ませ! ウンディーネ様に加勢するぞ!」
多分さっき話したゴブリンが呼びかけたのだが、また大きな咆哮を聞き他のゴブリンは戦意を失い蹲ってしまった。
「魔法使い! 食う! オデも魔法使えるようになる!」
オークが何やら不穏な事を言い始めた。誰が食われるかよ! しかし、魔法が効かない! どうする? オークは何故か顔の前に斧を構えたまま近づいては来ない。魔法を警戒しているのか? 効かないハズなのに何故防御する必要があるのか?
「ウンディーネ様! 微力ながら助勢いたします」
短剣を構えたゴブリンが一緒に戦ってくれるらしい。短剣じゃ明らかに相手に届く前に、あのデカい斧の餌食になるよね。
「何か策があるの?」
オークに目を向けたまま質問すると、ゴブリンは『ありません』と清々しいほどキッパリ答えた。何も言わずに祈りと加護をかけてあげる。
「おお! 力が湧いてくる! これなら勝てる気がします!」
そう言うとゴブリンはオークの方に走って行った。え~~~! ちょっと! 止めようとしたが、もうオークの所に行き戦い始めた。あれ意外と強い! 確かあのゴブリンは俺と同レベルだったか……。素早い動きで斧を避け、足に短剣を突き刺している。だが徐々に劣勢になっていき、短剣が砕かれゴブリンの頭に斧が振り下ろされる。
「プロテクション」
もの凄い音とともにゴブリンは輝く半球に守られ、どうにか助かった。
「ありがとうございます! ウンディーネ様」
「これを使って!」
戻って来てお礼を言ってきたゴブリンに、練習で作ったスケルトンが柄に抱きついている石のナイフを渡す。
「こ、このようなものを私に……」
「いいから、そんな物でも武器がないよりはマシでしょ! それよりオレに付いて来て!」
先ほど作っておいた落とし穴にオークを誘導することにする。魔法が効かない時の為の保険だ。かなり深く掘った上に底には尖った杭も突き立ててあるので、さすがに生き物が落ちたら一巻の終わりだろう。逃げると思ったのかオークは追いかけてくる。足はそんなに速くないらしく、かなり距離をあけることが出来た。
「足元に気を付けてね! 落とし穴があるから落ちたら命がないよ!」
オークが近寄ってくる前に、落とし穴の場所と作戦をゴブリンに伝える。
「なるほど、ここにおびき寄せた理由はそれでしたか!」
そこに息を切らしたオークが現れ、足元に敷き詰められた草の束を見てブヒヒヒと笑い声を上げる。そしてそれを避けるように横に回り込もうとする。意外と知性はあるのかもしれない。それを見たゴブリンが叫ぶ!
「そこには落とし穴はない! 真っ直ぐこっちに来い!」
「ちょっと!」
「あっ! 申し訳ありません!」
オレの声にゴブリンが、口を手で押さえしゃがみ込んでしまった。
「立って! 逃げるよ!」
ゴブリンの腕をつかみ必死に立ち上がらせようとするが、項垂れて立ち上がろうとはしなかった。オークは追い詰めたオレたちを見て、下卑た笑み浮かべていた。




