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私が聖女? いいえ、そもそも男です。  作者: 東雲うるま


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死の大地


 どうにか村の人たちに跪くのをやめてもらえたが、それでも気が収まらないらしく何か欲しい物はないかと口々に聞いてくるのだった。


「もう十分ですよ! こんなに頂きましたし」


 そう言って積まれた荷物に目をやる。その時におばあちゃんが持ってきてくれた野菜が目に留まる。


「あっ! トマトだ! おばあちゃん! これ欲しかったんですよ! ありがとうございます」 


「行商人から新しい苗を買って育ててみたら、こんな赤い実がなったんで聖女さまにも食べてもらおうと思ってね」


 他の人は買わなかったそうだが、意外とこのおばあちゃんは先見の明があるのかもしれない。


「このばあさんは、新しい苗や種があったらすぐ買っちまうからな!」


 村の人たちはそう言って笑っていたが、みんなからすると新しいものに手を出す変わり者扱いなのかな?


「ほ~! 凄いですね! 絶対このトマトは人気が出ますよ!」


「えっ! 聖女さま、今、その赤い実が人気が出るって言ったかい?」


 他の村の人たちも急に食いつき出した。


「そうですね。そのまま食べる場合は人によって好き嫌いがあるとは思いますが、ソースとかケチャップっていう調味料を作るのに必要なんですよ! 私は生でも好きですけど!」


「何でも知ってるね~! 流石、聖女さまだよ!」


 おばあちゃんはそう言って関心しているが、なんだかとても嬉しそうだ。自分が買って育てた作物が認められたのが嬉しかったのかな?


「あっ! そうだ! 珍しいハーブとかもあったら売って欲しいんですが!」 


 そう聞くとおばあちゃんは、『聖女さまからお金は取れないよ』と笑って言ってくれた。


「そうだ! 夕方にまた何か作って販売するので、その時にご馳走しますよ!」


「こっちがお礼するんだからいらないって言いたい所だけど、聖女さまの料理と聞いたら断われないね。じゃあ! その時にハーブは持ってくるよ!」

 

 笑いながらおばあちゃんと約束をしていると、他の村の人たちも何か私たちにも出来る事は無いかと懇願される。


「今、欲しい物ですか……。これだけ貰ったしな~」


 考えた結果、いくつかお願いする事にした。みんな嬉々として集めに行ってくれて、その場は解散となった。みんなが帰っていくとアンがまた抱きついて来た。後ろを向くと他の子供たちも近くに集まって来ていて、エマもだいぶ慣れたのか質問してくる。


「ねえねえ! 魔女さま、このコップの底の絵はな~に?」


「気付いちゃった? 私のお店の印! その内、価値が出るかもだから大事にしてね!」

  

 冗談交じりに答えたのだが、みんな真剣に大事にすると誓ってくれた。しばらくは子供たちの質問に答えていたが、その後は神父さまたちも交えて、この村の話や子供たちの話を色々聞きのんびりと過ごした。




 ♦ ♦ ♦ ♦




「――という事はここの領主さまは、湖が干上がった何もない土地を任されてしまったと言う事ですか?」


 みんなと話をしていると興味深い話が聞けた。この村の共有地の森の先に、広大な岩だらけの土地があるらしい。


「白くてね。貝殻が一杯落ちてるの!」


 子供たちが行けるほど近いらしい。白くて貝殻が落ちてるってもしかして……。


「塩はとれなかったんですか?」


「領主さまもそう思い、神に祈る気持ちで家令とお抱えの錬金術師に調べさせたそうなのですが、苦みがありどうやら塩ではなかったそうです」


 そりゃ自分の領地の土地で塩がとれたら最高だっただろうな……。岩塩じゃなかったのか……湖があった場所で白くて苦い? 見てみたいな。そういえば今の話で思い出したけど、家令が来るって言ってなかったっけ? 


「行ってみたいんですが、近いですか?」


「「「わたしが、案内してあげる~!」」」


 神父さまが答える前に子供たちが案内をかって出てくれた。


「神父さま、もしも出掛けている間に家令の方がいらしたら、申し訳ありませんがその旨をお伝えいただけますか?」


 神父さまは了承してくれたが、あまり奥に行くと魔物や肉食獣が出るかもしれないので、お気を付け下さいと言われた。忘れてた~! そんな恐ろしい世の中だった。


「そうなんですね! じゃあ! 危ないから一人で行ってきますよ! 道だけ教えて頂けますか?」


「大丈夫だよ! いつも何もないし!」「一緒に行く~!」「平気だよ!」 

 

 子供たちの猛反対に目で神父さまに助けを求めると、強い魔物はいないしケイ様が一緒なら平気でしょうと言われてしまった。いや、子供に何かあったら嫌だし……。


「じゃあ! みんな途中まで送ってよ! その後はみんな村の人たちにお肉とか売った後に催し物をするから、良かったら参加してくださいって伝えて来て! コップとかも失くす前にお家に置いて来た方がいいんじゃない?」


 子供たちを無事説得して、みんなで手を繋いで移動する。


「魔女さま、杖はなくて平気なの?」


「かざ、かざ、風の精霊が近くにいるから、危なくなったら助けてもらうから平気だよ! 心配してくれてありがとう!」


 ロンの質問に飾りみたいなもんだからと言いそうになったが、適当な事を言って誤魔化してお礼を言うとロンは真っ赤になっていた。可愛い奴め!

 しばらく話しながら進むと、森に繋がる一本道に辿り着いた。


「魔女さま、この道を真っ直ぐ進むと死の大地だよ」


 ええ~! 何その怖いネーミング! どうやら植物も動物もいない場所なので、そう呼ばれているらしい。


「あっ! うん! ありがとう! みんなも気を付けて! 村の人たちに伝えるのもよろしくね! 後でおいしいもの食べさせてあげるから楽しみにしてて!」


 アンだけは心配そうだったが、みんなは大喜びして帰って行った。そのアンに笑顔で頷くと遅れてみんなの後を追う! みんなが見えなくなったのを見届けると、森に向かって歩き始めた。さて行きますか! 死の大地とやらへ。





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