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私が聖女? いいえ、そもそも男です。  作者: 東雲うるま


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フロアボス戦

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ありがとうございます。


 次回はもうちょっと早めに投稿するので、

少々お待ちを~。


 オレとライトはルーをジュリアたちに預けた後、いつも通り暗くなるまでギルドで過ごす事にした。ギルドは城壁の門が閉まってからしばらくすると食堂だけの営業になる為、いられるのはそれまでなのだけど……。


「今日はどこで寝る?」


「いつもの橋の下でいいんじゃないか?」


「…………でも、最近、あそこも人が増えてきたからな……」


「まあ、行ってみてから決めればいいんじゃないか?」


「うん、まあ、そうだな……」


 人が多いと大勢でいる安心感があるけど、その分、トラブルも増えるからライトが他の場所に行きたい気持ちも分からなくはない。でも、オレとしては後から来た奴らに追い出されるみたいで、何かすんなり受け入れられない。


「オレたちも早く、宿に泊まれるようになれたらいいんだけどな」


「武器が買えたら報酬の高い依頼も受られるようになるし――」


「――助けて下さい! 仲間が」


 話の途中だったが、突然の大声に話を止め、そちらに振り向く。すると勢いよく開いた扉の前には同い年ぐらい三人の冒険者が立っていて、真ん中のやつの顔が真っ青で両側の二人が支えていないと今にも倒れそうだった。


「何があった? とりあえずここに寝かせろ」


 数名の冒険者が駆け寄り状況を確認する中、オレとライトも何事かと野次馬に加わる。どうやら両側から仲間に支えられているやつが魔物に襲われたらしく、右足の太ももの辺りが真っ赤に染まっていた。


「お前たち! この布を使っていいから、傷口をしっかり押さえろ! もっと、強くだ! こりゃ、中級以上のポーションでも使わなきゃ無理だな……誰か中級以上のポーションを持ってないか?」


 この言葉に周りのやつらは何の反応も見せない。多分、持っていても、こんな見ず知らずのガキに渡したいなんて思うやつがいるわけがなかった。


「お願いします。お金は必ず、働いてお返しします。お願いします」


 そんな必死な願いもむなしく、誰もその願いに応えてくれる様子はなかった。確か中級ポーションを買うには金貨が何枚も必要だって聞いたことがあった気がする。それをポンと渡してくれる程、余裕のある冒険者は今いる中にいるようには見えないし、本当に誰も持っていないのかもしれない。


「そうだ! ギルドに借りればいいんじゃないか?」「そうか! ギルドなら中級ポーションぐらいなら、置いてるだろう」「そうなのか? 中級ポーションなんて買う機会が無いから、気にも留めてなかったな……」


「すみません! 通して下さい! 残念ながら中級以上のポーションは今、ちょうど在庫切れで注文中なんです。気休めにしかならないかもしれませんが、これを……」


 騒ぎを見ていた受付の女の人が野次馬をかき分けてあらわれ、持ってきた低級ポーションを手当をしていた冒険者に手渡す。


「駄目だ! 出血が止まらない。少し遠いが教会に連れて行ったほうがいいかもしれん」


 どうやら傷口に低級ポーションをかけたみたいだけど、余り効果はなかったようだ。


「でも、これって動かしていいのか?」「じゃあ、どうするんだよ」


「おい、お前ら、どっちかが急いで神父さまを呼んで来い!」


「オ、オレが呼んでくる!」


 仲間の一人が立ち上がり、ギルドを飛び出していく。


「……この傷って神父さまの神聖魔法でも難しいんじゃないか?」


「神聖魔法? あ~~~~~っ! オレ、魔法が使えるやつ、知ってる!」


 みんなの視線が一斉にオレに向く。


「近くのやつか?」


「うん、ここのすぐ隣の宿に泊まってる。急いで呼んでくるよ! 行くぞ! ライト!」


 オレとライトは大急ぎでギルドを飛び出し、ジュリアたちを呼びに向かった。


「「「えっ!」」」「隣?」





 ♦ ♦ ♦ ♦





 そこにいた冒険者たちは驚いた顔でその少年たちの背中を見送る。確かあの子、ジュリアちゃんたちに助けられた……。


「エリンちゃん、隣の宿って初心者向けにギルドが紹介している宿だろ? 何でそんなところに神聖魔法が使えるやつがいるんだ?」


「私に言われも……」


「まあ、ガキの言う事だから、どこまで本当かって話だな」


「そ、そうですね……。ところで、あなたのお友達はどうして、こんな事になったか教えてくれるかしら?」


 年配の冒険者が止血をしようと奮闘してくれているのを、呆然と見下ろす少年に話しかける。少年の話では薬草採取の帰りに一角ウサギを見つけて、試しに倒してみようとして返り討ちにあってしまったそうだ。周りの冒険者たちの中にはそれを聞き、不謹慎にも笑っている人もいるが、意外と初心者の死因の中で一角ウサギによるものは割と多いと聞く。被害にあった子たちは可愛らしい見た目に油断して、角による一撃をうけてしまい大けがや命を落としてしまったそうだ。


「呼んできたぞ! 道、開けて! どけって! 通せよ」


 先程の少年が目に黒いレースの布を巻き、デザインはシンプルながら高そうな生地で作られたワンピースをまとった少女? の集団を引き連れて戻ってきた。見た感じ、もの凄く若く見えるが人間とは違う種族なのかもしれない。


「こいつなんだけど、治せるか?」


 少年が友達の様な口調で質問すると、近くにいた人たちの足元を黒い生き物がすり抜けていき怪我をした少年の近くを歩き回る。あっ! あれってジュリアちゃんたちの……っていう事は……。


「うわっ! なんだ、こいつ! あれ? この猫! 確か仮面のやつが連れてた……」「ああっ! って事はこいつら、仮面の……」


「大丈夫だそうです。じゃあ、治しますね。…………聖なる癒しを『ヒール』」


 そう言って、杖を持った女性が傷口に手をかざすと空中に薄く緑がかった光を放つ文様が浮かび上がり、みるみる傷口がふさがっていく。あっ! 確かあの杖は……という事はあの神聖魔法を使ったのはマヤちゃん?


「え~と、傷は治しましたが血を多く失っているので、しばらくは安静にして眠らせてあげて下さい」


 喜びよりも驚きが勝つと声が出ないと聞いた事があったけど、まさに今がその状態で私を含めたここにいる全員が何が起きたか理解できずにその光景を無言で見つめる。


「えっ? あ、あの……治しました……」


「…………うお~っ! すげぇ~あの傷が一瞬で治っちまった」


 誰も返事をしないので不安そうにもう一度、治したと告げるマヤちゃんの声で、我に返った一人の男性が大声で叫び、それに続くように賞賛の声と大きな拍手が巻き起こる。


「本当に冒険者さんを助けていただいてありがとうございました。怪我人はしばらくギルドに泊まれるように手配いたしますので、誰かこの子を運ぶお手伝いをお願いできますか?」


「…………じゃあ、オレが運ぶよ! どこに運べばいいんだ?」


「ありがとうございます。こちらにお願いします」

 

 手伝いを買って出てくれた男性が他の職員に案内されて、少年を奥の部屋へと連れていってくれた。


「あんたら、教会の関係者だったんだな」


「えっ? ……ち、違います」


「そうなのか? でも、あれだけの回復魔法が使えるなら、そこら辺の聖職者なんて目じゃないんじゃないか?」「うんうん、前の神父さまでもあれだけの回復魔法は使えなかったからな」「おい、止めとけ! 教会関係者に聞かれたらただじゃ済まないぞ」


「……はいはい、みなさん、それぐらいにして下さい。助けて下さった皆さんにはお話をお聞きしたいので、奥の部屋にお願いできますか?」


 冒険者さんたちに質問攻めにあっているマヤちゃんたちをここから引き離す為に、適当な理由を付けて奥の部屋へと連れて行く。


「ふ~っ! 凄い騒ぎだったわね……マヤちゃん、本当にありがとう! 助かったわ!」


「えっ……」 


「……バレちゃってるね!」


「うふふ、そういうあなたはジュリアちゃんね! 多分、一部の人しか気づいてなかったと思うけど、すぐに広まってしまうと思うわ」 


「エリンさんは何で分かったの?」


「最初は着ている服も違ったから、私もどこのお嬢さま? って思ったけど、私も含めてそのネコちゃんで気付いた人が多かったと思うわ。あと、マヤちゃんは杖で分かったかな!」


「あ~っ! ニャンニャンと杖か……! でも、みんな、私たち、お嬢さまに見えたって!」


 それを聞き、女の子たちが顔を見合わせて笑い合う。顔を隠しているわりには神聖魔法が使える事や素性がバレた事に関しては、それ程、気にしていないようだ。


「それでみんなをこの部屋に呼んだのは野次馬から引き離す為でもあったんだけど、ちょうど嬉しいお知らせもあったからしておくわね! 多分、今ので確実に条件は満たしたと思うから……」


「えっ! なになに?」


「今日、あなたたちに助けられたって報告があったのと、今の一件でマヤちゃんは確実にアイアンランクに上がれると思うわ! 今日はもう暗くなってきてるし、それについては次回、来た時に手続きをしたいと思うのだけど、どうかしら?」


「えっ! 私だけ? ……ですか? みんなと一緒の方が……」


「今回は一人だけだけど、パーティーなら上のランクの人が一人いると他のみんなも一つ上のランクの依頼まで受けられるようになるから、今より稼ぎやすくなるわよ! それに上のランクの依頼をこなしていれば他のみんなのランクもすぐ上がると思うし、ランクは上げといて損はないわよ」


「なら、アイアンランクになっちゃいなよ」「うんうん」「なっちゃえ、なっちゃえ!」


「う~ん……みんながそういうなら……」


「でも、助けられた報告ってことはキースたちが報告してくれたのかな?」


「そうそう! その子たちだね」


「やっぱり! あれ? そういえばルーは?」


「お兄ちゃんたちに服を見せてくるって言ってたよ」

 

「そういえば、そんな事、言ってたね……。でも、どうしようね? 呼びに行ったら、また、質問攻めに合いそうだし……」


「そうね……その子には私が宿に戻るように伝えるから、みんなは裏口からこっそり帰りましょう」


 その後、みんなを裏口に案内して帰らせた後、わたしはその子を探しにギルドの広間へと戻った。





 ♦ ♦ ♦ ♦ 





 さすがに最初のボスであまり強くないと聞いても、初めてのボス戦で分からないことだらけだったので、経験者のミドリンから話を聞き作戦会議も念入りにし、咄嗟の指示が出しやすい様にミドリン以外にも名前を付けた。ちなみに火魔法をつかうゴブリンは烈火からレッカ、弓のゴブリンはどこかの国の言葉で弓がルークだったという定かではない記憶からルーク、槍の二人はそのまんま、スピアとランスと名付けた。それだけだと、まだ不安だったのでみんなの今にも壊れそうな武器を作り直して、革の胸当ても全員分作って装備してもらう。


「ふ~っ! これだけ、やれば大丈夫かな? よし、みんな、集まって」


 そして、全員に祈り、加護、プロテクションを掛けなおす。リフレクションはそれだけで倒してしまう可能性もあるので、まずは実戦経験を積む事を優先して、危なくなるギリギリまで奥の手として取っておく事にした。


「よし! 行くぞ!」


「「ギィギィ~」」


 ゴブリン特有の鬨の声をあげると、槍持ちの二人が石の大きな扉に寄りかかるように体重をかけ押し開く。そして、その二人の間をオレとミドリンが武器を構え、先陣を切って部屋に入って行き、すぐに五つの光の球を飛ばし部屋を照らす。マジでこの部屋、光源無いじゃん。魔法使えない人たちはどうやって戦うんだ? 

 

 広めの円形の部屋をそんな事を考えながら観察していると、後ろで扉が閉まる音が響き、振り返ると扉に魔法円が浮かび上がる。こうなることは事前に聞いていたので想定内であり問題ない。ミドリンの話では、ボスを倒すまでは開かなくなる効果があるそうだ。そして、こちらも事前の話通り部屋中央に新たな魔法円が浮かび上がり、でかいムカデが地面からせり上がりだす。


「よし! 予想通りムカデだ! 作戦通りに行くぞ! レッカ! ルーク!『アースウォール』」


 その声に反応して左右に遠距離攻撃担当の二人が走り出し、オレが作り出した土の壁に飛び乗り攻撃態勢に入る。作戦としては高所から攻撃して体を起こさせて弱点である腹を攻撃するという単純なものだ。


『ファイアーランス』


 あれ? 魔法に弱いのか? 結構、効いてる? 着弾部位から煙が上がる。そしてよく見ると牽制の為の矢も刺さっている。ん? 外皮が硬いんじゃなかったっけ?


「…………何か良く分かんないけど、思ったより外皮は硬くないのかも! オレたちも行くぞ」


 近接の三人を引き連れて、オレも剣を持ちムカデに向かっていく。魔法を使えば簡単かもしれないけど、剣でどのぐらい出来るか知る為にも今回は剣で挑む事にした。一番、最初の階層で使えないならこの先、ほとんど使えないだろうしお試しで……まあ、危なくなったらすぐに魔法を使うんだけどね……。 


 武器が届く間合いに近づくと大ムカデはこちらに頭を向け、触覚を激しく動かしその下の剝き出しの鋏の様な牙を鳴らし威嚇してくる。しかし、近づけば分かるその驚きのデカさ! のしかかられただけで大怪我はまぬがれないだろう。


「ギィ~~」


 そんな中、躊躇なくミドリンが斧を振り下ろし、大ムカデの足を一気に何本も斬り落とす。


「さすが、ケイさまが作り直して下さった武器だ。果実のように刃が通るぞ」


 それを聞いたランスとスピアも槍を大ムカデの胴体に突き刺し、硬いと言われていた外皮をいとも簡単に貫く。おっ! マジか! オレが作り直した武器が通用したって事か? ならオレも……。


「おら~っ!」


 出遅れたものの、オレも上段の構えから剣を一気に振り下ろす。すると外皮を切り裂き黄色い液体が飛び散る。おおっ! 剣でもいけそう! しかし、そう喜んだのもつかの間、噛みつき攻撃を仕掛けられ、剣で防いだものの吹き飛ばされ地面に転がる。


「ケイさま!」


『ウォール・オヴ・ファイア 』


「だ、大丈夫! ……ありがとう! レッカ!」


 急いで立ち上がると大ムカデとオレの間に炎の壁が作り出されていて、大ムカデの追撃を防いでくれていた。どうやら、レッカがとっさに炎の壁を出してくれたようだ。やっぱり、これだけサイズ差がある相手の攻撃は普通にブロックしちゃ駄目だな。まるでボーリングの玉を思いっきりぶつけられたみたいだった。今の所、回避が最善かもな……。


「オレが引き付けるから、みんなはしっぽ側から攻撃をお願い!」


「「「ギィギィ~」」」


 返事と共にみんなが大ムカデの後ろ側に散らばる。


「おら~っ! こっちだ!」


 ムカデに聴覚があるかは知らないけど、オレは大声を出して必死に注意を引いた。すげ~怖え~……でも、毒の耐性が一番高いのオレだし、仕方ないか……。







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