スライム
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自分の商会を建て終わり、休憩がてら工事の進み具合を見て回る。仕事が早いゴブリンたちはすでに中水と下水の配管に取り掛かっていて、土魔法を使い、岩や石を配管に変化させ、トンネルのように次々につないでいっている。
「ケイさま、何かございましたか?」
みんなの作業を上から覗いていると、ミドリンが小走りで駆け寄ってきた。
「いや、ちょっと休憩がてら、見てただけだよ。みんな凄い優秀だね! あっという間だ……」
「……いえ、そんな事はありません。これもすべて、ケイさまにお借りした腕輪のおかげでございます。私たちの中で土魔法が使えるものは、それ程、多くはありませんでしたから……」
確かに土の変化、操作を付与した腕輪を渡したけど、ゴブリンさんたちのそれを使いこなせる応用力と魔力量も仕事が早い要因だろう。
「それにしたって、凄いよ……。でも、これだけの距離だから完成しても、浄化を付与した魔石の用意は間に合わないだろうな。依頼を出してはいるから、街が臭くなる前に集まると良いんだけど……」
「ケイさま、それならスライムをはなしてはいかがでしょうか? スライムは自然界の掃除屋と呼ばれるぐらい何でも分解してくれますし、スライムが生息する付近の池の水は綺麗で安全だと言われています。確か人族の王や高位の貴族は排便をする場所の下にスライムを飼っていると聞いた気がします」
「スライム? スライムってあのドロドロした粘液みたいなやつ?」
「……そうです。ですが一つだけ問題があって、分裂、増殖することがあるので定期的な間引きが必要だという事です」
「なるほど……それって普通の人間でも出来そう? っていうか、スライムって強いの?」
「魔法が使えれば比較的、簡単に倒せると思いますが……物理的な攻撃があまり効かないので、魔法が使えない人間には最初は大変かもしれません」
「マジか~!」
「……ええと、まじかとは? 前に教えていただいたかもしれませんが……申し訳ありません」
「ああ、マジは……え~と、本当とか本気って意味かな……」
「なるほど……マジです」
「あ、うん、そっか……でも最初はって事は、慣れれば出来る感じ?」
「はい、スライムの体は透明で弱点である核が丸見えなのですが、その核を破壊するか体内から取り除けば倒すことができます。万が一、体に取り込まれても、その核さえ破壊すれば液体になり崩れ落ちるので、その知識だけあれば何とかなるかと……」
「えっ! 取り込まれるとどうなるの?」
っていうか、その前にそんなに大きいのか?
「川で溺れた感じになり、その後は少しずつ溶かされていきます」
「うげっ」
窒息かよ……。その後もスラリ……じゃなかったミドリンに話を聞くと、どうやら、その核がスライムを倒すと魔石に代わるらしく、慣れると手で引き抜く事も可能なのだとか……。コツは腕を溶かし始める前に核を抜き取るのだそうだ。多少はピリッとするらしいが……。これには何らかの道具の開発が必要そうだが、浄化の魔石が用意できるまでのつなぎとして良さそうだし、何だったら併用も良いかもしれない。
♦ ♦ ♦ ♦
私たちはケイさまに頼まれた荷物を領主さまに届け終わり、みんなで宿に戻ろうとしていた。今日はケイさまがお仕事で帰ってこれないという事で、ニャンニャンちゃんも私たちの宿に一緒に泊まる予定だ。
「今日はニャンニャンちゃんもいるし、ルーちゃんも泊まりに来るから楽しみだね」
「ねぇ~! 何しようか?」「お絵描きとかは?」
「いいね~! あとはお手玉とかも良いかも?」「ああ、それも良いかも!」
「あと、あと、髪の毛を結んであげたりとかも良いよね~?」
「マヤ、それ最高、一番、良いかも! ルーも喜んでくれそうだし」
私の提案に他のみんなも賛成してくれて、意見を出し合ってルーちゃんを綺麗にする計画がどんどん進んでいく。その後もみんなで盛り上がっていると、ニャンニャンちゃんから念話が入る。
『あっ! そういえば面白いものをケイさまから貰っていたのです! 本当はロージーと最初にやるはずだったのです。でも、みんなにもやらせてあげるのです』
「えっ? 何々?」
『後でのお楽しみなのです』
「「「ええ~っ」」」
そこで、ある事にふと気が付き、質問してみることにする。
「でも、ニャンニャンちゃん、ルーちゃん、来るけど平気なの? しゃべれないよね?」
『そうだったのです。ガーンなのです』
みんながニャンニャンちゃんの変な言葉に一瞬、固まる。
「何、言ってんの?」
『ケイさまに習ったのです。ショックを受けた時とかに使うのです。ガーンなのです』
「わぁ~、今度、私も使おうっと!」「わたしも~」
「あははは」
『まあ、それについては念話を使うから別にいいのです! あっ! あとはルーの前では、魔法が使えるのはマヤだけという事にするのです。魔術師が複数いるパーティーは珍しいし面倒事の元なのです。噂になったら困るのです。それと魔導具の事も内緒にするのです』
「ええ~っ! 魔法円、見せてあげたかったのに~。でもさ~口止めすれば――」
『――ケイさまに迷惑をかける事になっても良いのです?』
「……分かったわよ……あっ! ガーン!」
ジュリアちゃんが突然、恥ずかしそうに『ガーン』と言ったので私たちは大笑いした。
♦ ♦ ♦ ♦
「戻りました。あのこれ、よかったらお土産です」
ルーナちゃんが宿屋の女将さんにイノシシの肉を手渡す。
「あら、あんたたちかい! なんだい? これ! えっ? イノシシの肉! あら~新鮮だし良いお肉じゃないか……本当にいいのかい? …………えっ? 今日、このネコと友達を一人、泊めたい? いいよ、いいよ! 何日でも泊めてやりな! 追加料金? そんなのいらないよ~! 何か必要な物があったら言うんだよ! うんうん、また、よろしくね~。は~い」
肉を見てからの女将さんの余りの変わりように、みんな、無言で視線をかわしながら部屋に向かう。
「みんな、あのおばちゃんの凄い変わりよう見た? 本当にケイの言った通りだったね」
「本当に無理を聞いてくれたね。しかも無料で……」
お肉を渡しているから無料ではない気もするけど、確かにケイさまは宿屋のおばちゃんみたいなタイプは、お土産にお肉でも渡しておけば、多少の無理は聞いてくれるって言ってたけど、ここまで効果があるなんて……。
「まあ、お肉は貴重だもんね! じゃあ、そろそろ、ルーを迎えに行こうか! あっ! 他の用意もあるし、半分にわかれようか?」
「それなら、一番、懐かれてたマヤちゃんがいいんじゃない?」
「えっ! わたし?」
「うん、ケガを治してあげたから憧れの目で見られてたし、ずっと質問されてたよね?」
「……本当はわたしじゃなくて、ニャンニャンちゃんが治したんだけどね」
わたしは魔法円を出して、ケイさまが教えてくれた詠唱をしただけだし……。それなのに感謝されて、ましてや憧れられるなんて、なんか凄く悪い事をしたような気持ちになってくる。
『魔法はマヤだけが使えると思われた方が、のちのち誤魔化しやすいのです』
「わかりました……。じゃあ、迎えに行ってきます。マルチナも一緒にお願い」
「うん、いいよ」
「じゃあ、わたしたちは、お湯をもらってきとくね」
「あっ! じゃあ、副リーダーも一緒に行きません?」
『行くのです』
ニャンニャンちゃんは返事をすると、すぐさま、マルチナに胸元に飛びつき、だっこされる。最近はジュリアちゃんの肩の上か、マルチナにだっこされることが多くなってきている。いいな~……わたしも、ニャンニャンちゃんをだっこしたいのに……。
♦ ♦ ♦ ♦
その後、ギルドにルーちゃんを迎えに行くと、すでに男の子二人と一緒に待っていた。
「ルーちゃ~ん! お待たせ! 待った?」
マルチナと一緒にルーちゃんに駆け寄る。
「あのさ……」
「ひゃい!」
急に男の子の一人に声を掛けられて、変な声を出してしまう。ケイさまは優しいから大丈夫だけど、普通に男の子には昔からいじわるされた記憶しかないので、ちょっと苦手だし警戒してしまう。
「あのさ、貰った肉、言われた通り、自分たちじゃ焼けないから売ったんだけどさ、こんなに貰ったんだけど、本当にいいのか? それともいくらか返した方がいいかな?」
差し出してきた男の子の手には銀貨が何枚か握られていた。判断できずにマルチナの方を見てみると、ニャンニャンちゃんに念話で何か言われているのかしきりに頷いている。
「え~と、多分、返さなくていいと思いますよ。ね? マルチナ!」
「え~と、あげた時点で、もうこの人族の子供のものなのですだそうです」
マルチナ、ニャンニャンちゃんから聞いたまま伝えないでよ。人族なんて言う人、聞いた事ないし、変に思われるでしょ、もうっ!
「……だ、だそうです……」
と言いつつ、自分もうまい言葉が浮かばず、説明は諦めて押し切ることにした。
「じゃあ、いいなら、このお金であんたたちの店で、オレたち三人の武器を買いたいんだけど足りるかな? 一番安い武器でいいんだけど……」
『受けていいのです。ケイさまから子供は助けるように言われているのです』
「わ、わかりました。武器はどんなものがいいですか?」
「オレは剣で、ライトは槍、ルーは、え~と、あんたらの誰かが使てた棒の先に球がついてて……」
「ああ、ジュリアちゃんとルーナちゃんの武器ですね! 分かりました。ケイ……え~と、リーダーが帰って来たらお願いしておきますね」
「うん、よろしく。じゃあ、これ代金! …………ルー、オレたち行くから! 明日な!」
「ルー、明日の朝、ギルド集合な! 妹をお願いします。じゃ!」
「あっ! わたしたち、そこの宿に泊まってるんで何かあったら……」
「わかった!」
男の子たちは手を上げると駆け足で去っていった。
『お金貰っちゃったけど、良かったのかな?』
『いいんじゃないのです?』
「じゃあ、ルーちゃん行こうか! 二人も待ってるよ」
「はい」
その後、すぐにルーちゃんを連れて帰り扉を開けると、そこには床にへたり込む二人の姿があった。
「ただいま~ルーちゃん、連れてきたよ~って、二人ともどうしたの?」
「お湯を二人で運んだんだけど、大きい桶でもらったから思ったより重くてちょっと休憩してた。あっ! ルー! いらっしゃ~い」「ルーちゃん、いらっしゃい! 入って入って!」
「は、はい! わぁ~……この部屋、凄く明るいですね……」
「ランタンっていうんだよ! 明るいよね! わたしも初めて見たとき驚いちゃった」
ルーはまた、目を輝かせて私の話を聞いていた。
「じゃあ、全員そろったから、体拭こうか! これ、ルーの分のタオルね、使って」
ジュリアちゃんが自分の予備のタオルを二枚、ルーちゃんに渡す。
「えっ、でも、こんな綺麗な布……汚しちゃうし」
「汚れを落とすために使うんだから、当たり前でしょ! そのタオルはあげるから気にしなくていいよ。最初は濡れたタオルで汚れを拭いて、その後にすぐに水気を乾いたタオルで拭くの……」
「えっ! でも……」
「ルーちゃん、本当に気にしなくていいよ! わたしたち、なくなったらすぐに貰えるし、ねっ! みんな!」
ルーナちゃんがルーちゃんに気を使わせないようにしているのに気づいて、みんなも話を合わせる。
「……うんうん、そうそう」「気にしなくていいよ」「平気、平気」
「じゃあ……貰っちゃいますね。ありがとうございます」
「……じゃあ、時間がもったいないから、急いで体を拭いちゃおう。まず、服を脱いでタオルをお湯につけて絞っちゃって!」
ジュリアちゃんはそう言うと、いつものように仮面も服も全部脱ぎすてて、スッポンポンになって体を拭き始める。
「ほら、ルーも急いで」
「は、はい……」
ルーちゃんもジュリアちゃんに急かされて裸になろうとしたのを、ルーナちゃんが急いでそれを止める。
「ルーちゃん、ジュリアのマネして裸になっちゃ駄目! あれはジュリアだけだから! 他のみんなは拭く所だけ捲ったり、タオルを巻いて拭いたりしてるんだから」
「えっ……」
「だって、脱いだ方が一気に拭けるし、楽じゃん」
「だから、ケイさんに『ジュリアはちょっとはしたない』って言われるんだよ」
「む~っ! ルーナ! それちょっと気にしてるんだから、言わないでよ。『ガーン』だよ」
「あはは、ジュリアちゃん、それ、使い方あってるの?」
「知らない……」
「「「あはは」」」
みんなのやり取りをみて、ルーちゃんも笑顔を見せ始めてきたし、やっと緊張がほぐれてきたみたい。よかった、よかった!




