EP10
※描写注意です※
虫が苦手な方は注意してください。
「うっわぁ……」
ダンジョンの中に入ると、周りに森が広がっていた。
「…キモっ……!!」
多分みんな同じ感想だろう。
何故なら森の木々には大量の蛹と、幼虫が群がっていたからだ。
ただ、やはり、松明を持っていると近寄ってこないようだ。
(というか……蚕もそうなんだけど)
「なんか、暑くない?」
「は?ハルト何言ってるんだ?」
「え?」
じわっと汗を書くほど身体がなんか熱い。
「ハルト、大丈夫か?体調が悪いんじゃ?」
「いや、そんなわけではないんだけどね?」
「やっぱり引き返しませんか?、殿下がその様子じゃ……」
「大丈夫です。そのうち慣れると思いますから行きましょう」
身体は全然ダルくはないしむしろ、軽いくらいだから大丈夫だと判断する。
「まぁ、ハルトがそこまで言うなら行こうか。とりあえず怪しい魔力は奥の方に続いてるようだぜ」
「ありがとう」
周りになるべく目を向けないように進んで行く。
トラップもなく、ファンタジーなら、トレントなどの木の魔物もいそうなものなんだが、そう言ったのも出てこない。
「ちょっと待て。ハルト」
順調に進んでいたのだが、突然ルークが引き止める。
「ん?ルーク?どうしたの?」
「左手どうした?」
「は?」
左手といわれたので左手を見てみる。
爪が伸びて、鱗が出てきている感じがする。
「竜化してきてる?なんで?自分で使ってるわけじゃないのに?」
「やっぱり引き返したほうがいいんじゃないか?」
「ごめん……そうしたほうがいいね」
レルーナとアーノルドにも伝えようとすると、聞こえてなかったのか、どんどん先へ進んでいる。
「レルーナさん、アルト!ちょっと待っ!!」
慌てて追いかけて、大きな声を出して呼ぼうとしたが、突然目の前に蚕が現れる。
「ちっ!!ルーク温存してて!!レルーナさん、アルト!!戻ってこい!!」
それでも、冷静に2人を大きな声で呼び戻しながら交戦する。
とりあえず、目の前の蚕を真っ二つに切り落とす。
しかし、やはり群れていて大量に現れて、再び防戦一方になってしまう。
「めんどくさいねホント!!」
なんとか攻撃を受けないように、ルークを守りながら捌いていく。
その中の1つに何やら模様が違う蚕がいたが、問答無用で切り裂くが、避けられた。
(はっ?)
その蚕がいた場所に鱗粉が舞っているのが確認できた。
その瞬間。ドクンッ!!と一際強く脈打つ感覚がして、攻撃が鈍る。
「ハルト?おい?ハルト!!?」
異変に気付いたルークが呼びかけるが、僕には届いていない。
ドックンともう一度脈打ったのと同時に、意識が暗転した。
--------------------------------------------------------------
Side:ルーク
「おい、ハルト!?聞こえてるか!?」
突然、ハルトが攻撃を止めて動かなくなる。
アーノルドとレルーナさんが来るまではあと少しだが、数が多くて、自分もどんどんHPが削られていくので、魔法は温存しろと言われていたが、使うしかない。
「『ウッデンウォール』!!」
ここらへんは木々が多く生えているので、地魔法よりも自然魔法で壁を作って蚕とハルトを分断する。
「こいつのせいか!?『ウッデン・ジャベリン』!!」
1匹だけ模様が他と違う蚕がいたので、木の槍を召喚して攻撃する。
「うっ…!!」
その模様が違う蚕の鱗粉が舞う。
それを吸ってしまう。
若干身体が熱くなる。が、何ともない。
気にせず、自分も壁のなかに入りこむ。
「ハルト?おい?ハルト?」
何度呼びかけても反応しない。
「おい、ルーク、ハルト大丈夫か!?」
「すみません、止まってたのに気付かないでしまって」
そこでアーノルドとレルーナさんが合流する。
レルーナさんの持っている松明の火が近付いたからか、蚕が散っていく。
「私は大丈夫なんだが、ハルトの様子がおかしい!!」
「何!!」
「私が見てみまっ!!」
突然バギっ!!とデカい音がして木の壁に穴が空く。
「は!?」
そこからハルトが一気に駆け出していく。
「止まれ、ハルト!!」
しかし、その声は届かず、奥に進んで行く。
「おい、あいつ何してんだ!?」
「私も分からない!」
「とりあえず、追いかけましょう!!」
そうしている間にもどんどん奥へと進む。
道中、道を阻む蚕は薙ぎ倒していく。
「なんか、あいつ早くねぇ!?」
「ハルト、こんな速度出せるんだな」
どんどん引き離されて行くと思ったらピタッと止まった。
「お?止まった」
こちらが追いつくまで止まっていてくれ。と思うと幸い、止まっていてくれてすんなり追いつく。
--------------------------------------------------------
Side:レルーナ
「ハルト?おい、ハルト?大丈夫か?」
アーノルドが、後ろから声をかけて様子を確認している。
目が覚めたのか、ハッとしてキョロキョロと周りを見渡す。
そして、こっちに向き直す。
「本当にごめんなさい……」
謝ったかと思ったら、突然私の方向に一気に距離を詰めて。
「きゃっ!!」
突き飛ばされる。
何をするんですかと言う言葉は飛び出てこない。
何故ならば、レオンハルトの身体から。
心臓の部分から1つの木の枝が貫通していた。
「……え?」
(なんで?どうして?どういうこと?)
頭がそれを理解するのを拒む。
しかし、現実は無情に。
レオンハルトの身体はそのままバタっと力なく倒れる。
「レオンハルトぉぉ!!!!!!」
そのことに、アーノルドは咆哮する。
「レオン!!!!『ロックブラスト』!!!!『ロックウォール』!!」
ルークは冷静の様に見えて、怒りを押し潰している顔をしている。
「そ、んな?なんで?」
「レルーナさん!!あなた回復魔法が使えるんですよね!?ゆっくりでいいので落ち着いて、使ってください!!」
「いや、私使えない。使えないんです!!!」
使えるのならば。使いたい。けれど、魔法はピクリとも反応しない
「『ヒール』 !」
もう一度挑戦してみても。
「『ヒール』!!」
ただ眼の前にいるレオンハルトを治癒するだけなのに。
「『ヒール』!!!」
魔法は1ミリたりとも応えてはくれない。
「『ヒール』!!!!」
光りもしない。
「大丈夫です。レルーナさん!!レオンが教えてくれたことをもう一度思い出して!!」
その言葉にハッとする。
魔法を使うイメージではなくて。
眼の前にいる人を。レオンハルトを。
治すイメージで。
「『ヒール』!!!!!!!」
----------------------------------------------------------------
Side:ハルト
身体が先に反応してしまう。
レルーナの奥からレルーナに攻撃しようとしている木の枝が見えて。
一気に駆け寄ってレルーナを突き飛ばす。
剣で切り飛ばそうと思っていたが。
その攻撃は空振りした。
単純に。鞘にしまっていたから。
(あぁ。僕何してんだ。ほんと)
その瞬間。
木の枝に心臓を貫かれた。
(あっ死んだ)
はっきりそう思った。
これはもう助からない。
「カッハッ……」
身体に力が入らない。
掠れていく視界で、ステータスだけははっきり視認できて。HPは0になっておらず、ものすごいスピードで減っていくのが見えた。
(死ぬのがいつか分かるなんて。心が抉られるな)
なんて。軽口を叩きつつ。
本当は死ぬのがとても怖い。
この世界に転生してきた時にも死んだのは死んだのだが、あのときはよくわからないまま倒れて。
いつの間にか転生していたため、死んだという感覚が薄かった。
(あぁ。いや、本当に死ぬのか)
じわじわと自覚していくごとに恐怖心が増していく。
(いやだ。死にたくない)
HPの数値はそれでもすごい勢いで減っていく。
(まだみんなと、やれていないことがたくさんある)
肺に血が入っていったのか。
呼吸も次第に苦しくなる。
(みんなとお別れ言えてない)
まだ死にたくないと、醜く足掻き続ける。
けれど、無情にも、かすれていた視界は暗くなっていく。
(やだ。やだ。やだ)
その瞬間。暗闇の中に1つの光がピカッと輝いた。




