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太陽と月の魔力をもって。〜日蝕により崩壊した世界で生きる〜  作者: 紅弥生 
Chapter-3 復興

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EP8


Side:女性


 窓の外を見ると、エクリプスの後に突然なぜか巨大化した蚕の成虫と、おそらく何も知らずにこの街に来た旅人さんが戦っているのが見えた。


 しかも、火を使わずに倒しているので、どんどん仲間を呼ばれて時々捌ききれずに攻撃を受けている。


(まずいわ。これでは旅人さん達が死んでしまうわ!)


 そう思うと居ても立ってもいられなくなって、松明をもってそれに火打石で火をつけ呼びかける。


 そして、角を生やしている男の人がこっちに気づき、攻撃を続けながら問いかけてくるので、それに対して答えを返すと、心得たと顔をしたと思ったら苦虫を噛み潰したような顔を一瞬した。


 しかし、すぐに近くにいる別の男性に指示をすると、突然、何もない空間から旅人さんたちを囲うように石のかけらが現れた。


(は?なにそれ?)


 どんな原理かは分からないけど、そんなことができるのなら、さっさと火を出して追い払えばいいのにとは思った。


 それでまわりの巨大蚕を追い払うと、角の生えた男が先頭に一気に駆け出し、私の家に入り込む。


 そして、角の生えた男が息を整えながらお礼を言うので、何故こんなところに来たのか聞こうと思い、角の生えた男に向き合う。


「いいのよ。それで、あなたたちは旅の……」


(レオンハルト王太子殿下!?な、なんでこんなところにいるのよ!?)


 この国の王太子で、私たち平民からしてみると雲の上にいるような存在が目の前にいた。

 慌てて取り繕ってへりくだった態度をとる。


「王太子殿下!?その、お怪我はありませんか!?」


「あぁうん。僕は大丈夫です。まずはこの街についてはお話をお聞かせ願えませんか?」


 随分慣れた態度をされたので、おそらく散々似た反応をされてきたのだろう。

 

 ただ、普通でいいとも言われていないので、そのまま続ける。

 

「エクリプスが起きたあと、何故か分かりませんが、養殖していた蚕達が突然巨大化しまして……人々を襲うようになってしまったのです……」


「蚕……ですか……魔物化したのかな……」


 最後の方はボソッと呟かれたが、近くにいたので聞こえた。


「魔物……?」


「あぁ。同じくエクリプスの後に現れた人々を襲う動物です」


 蚕以外に遭遇したことがないので想像が付かない。


(でも、そんなのがいるのなら、死傷者が増えているの……?)


 チラッと頭の片隅にそう思う。が、自分が見ている範囲でしか手当てができないので、どうか無事で居られますようにと願う。


「そうだ、蚕は火を嫌うんでしたね?」


「そうです。何か対抗出来るのがないかなと街のみんなで探したら、火の近くには近寄らずむしろ離れていったので……」


「なるほど……1つお願いがあるのですが、ステータスというのを見てもらえませんか?」


「ステータス?」


 そこからステータスについての説明と、魔法というのは、先程の無数の石のかけらの正体を説明された。


 正直、この世のものとは思えないぶっとんだ内容だったが、石のかけらの件と、目の前でクールそうな男の人が目の前で魔法を披露してくださったおかげでなんとなく想像はできた。


(私の魔法は昼間も夜中も回復……人を癒せるのかな……?それなら助けられる人が多くなりそうで嬉しい……)


「私の魔法は回復のようです」


「回復!?」


 とても驚かれた反応をされたが、おそらく殿下が求めていたのは火属性の魔法だろう。と思っていたので謝る。


「申し訳ありません……ご期待に添えず……」


「……?何のことですか?」


「火属性の魔法を求めていらしたのでは?」


「いえ、火属性魔法は僕が使えるのですが、生憎現在使えないので、あわよくば……とは思いましたが、どんな魔法でもがっかりはしませんし、いかようにも使い方はありますよ」


(殿下はとてもお優しい方ね……)


「そうですか……それで……回復魔法はどんなふうに使えるのでしょうか?」


「うーん……怪我を癒す魔法でしょうか?」


「怪我を癒す……」


 想像がつかないが、人々の怪我を手当てしている時に、一瞬で治ってしまえばいいのに。怪我で苦しまなければいいのに。と思ったことはある。

 そんな感じなのだろうか。

 うーん……


「ヒール」


 蚕からの攻撃を受けていた殿下に向かって、なんとなくそう唱えてみたがなにも起こらなかった。


「……起こりませんね……」


「申し訳ありません……」


「もしかしたら、僕には大した怪我がなくて使えないのかもしれませんね。彼らにもかけてみてはくれませんか?」


 そう言われたので、お二人にもかけてみるが、なにも起こらない。


「なにも起きませんね……誠に申し訳ありません……」


「何が原因なのでしょうか……また今度、怪我人に試してみませんか?」


(怪我人……)


「この街には蚕に襲われて怪我を負った人々がいて、私はそれの手当てに数度行っていたので、そこで試してみたいです!」


「そう……ですね。それがいいかもしれないです」


 同意されたので、怪我人のところに行く準備をする。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


Side:ハルト


 彼女を先頭に街へ出る。

 今度は彼女が松明を持っているので、蚕が近寄ってこない。


(ほんとに火が苦手なんだな……)


 松明を持っている彼女だけが狙われず、僕たちは狙われてしまうのかと思ったが、火が近くにあるなら、そこまで離れなければ狙われないということに気付く。


 そして、彼女に名前を聞くのも忘れていたし、彼女に名前を言うのも忘れていたことに気付く。


(まぁ僕の名前はおそらく察しているんだろうけどね……)


「そうだ、すみません。名乗るのを忘れていました。僕はお察しの通り、レオンハルトと言います。そして、こちらが……」


「ルークです」


「アーノルドだぜ、よろしくな!」


「れ、レオンハルト王太子殿下に加えてその側近様とランドレイン辺境伯のご子息様!?先に名乗らせてしまい、申し訳ありません!私はレルーナと言います!」


 最初の気の強さは何だったのかというくらい萎縮している。


(まぁ、本来は僕もその立場なんだろうけどね……)


「普段通りで大丈夫ですよ」


 一応言ってみるが、慰めにもならないだろう。


 そう思った通り、道中は失礼なことを言わないようにとレルーナも喋ろうとしないし、僕も変に喋りかけたら気を遣わせるだけだろうと思って無言になってしまった。



「殿下、こちらになります」


 そうして、案内されたのは元領主の館だ。

 現在は市民が自由に使えるようにと解放されている。

 なので、怪我人を集める場所にしているのだろう。


「陛下がここを使えるようにしてくださっていてとても助かりました」


「こういう非常時に国民がこうして安心できる場所を造れたのは幸いです。崩れず残っていて良かった」


 前はダンスホールとして使われていたのだろう。

 そこに怪我人が集まっていた。


 腕を怪我した人物、足を怪我した人物。などなど多数いた。


「あら、レルーナさん。もう片付けできたの?」


「いえ、ナナさん、ちょっと試したいことが出来て……」


「試したいこと?誰に?」


「怪我してる人に……」


「なんで?……まぁいいわ。私に手伝えることはある?」


「とりあえずは大丈夫です。またお呼びしますね」


「わかったわ。あら?そちらの……レオンハルト王太子殿下!?も、も申し訳ありません!!気づかず!!」


 その大きな声でホール中の全員がこちらを向く。


(うっ……視線が痛い……)


「大丈夫ですよ」


 そこからはガイアの街でやっていたように対応をした。


 そうして皆さんがステータスを確認して、魔法を使えるようにするのはまた今度。ということにする。

 一通り終わるのに1時間くらいはかかっただろう。


「すみません……お待たせしました……」


「いえ。では試してみようと思います。……出来ないかもしれないので期待はしないでください……」


 レルーナは怪我人しゃがむと、祈るようにして。


「ヒール」


 そう唱えた。


「……」


「……」


「……」


 しかし、しばらく経っても何も起きない。


 怪我人が怪我したところを見てみたり、レルーナがもう一度魔法を使おうとしたがなにも変化はなかった。


「申し訳……ありません……」


「いえ。大丈夫です。気を落とさずに。何が足りないんでしょう……」


 今までの魔法は(空間は難しい方ではあると思うのだが、アーノルドがあれなので……)比較的現実に基づいていたので発動しやすかったが、怪我を魔法で治すのはなにかが違うのかもしれない。


(原因がなにか分からないので何とも言えないけれど……)


 先程ステータスを確認してもらった際に、回復魔法は誰もここにはいなかったので、その他の属性で同じように使えない人がいるかもしれないと思い、魔法の特訓を始めようと思った。


 だが、その前に怪我人の手当てが最重要なので、僕たちも含めて全員で手当てをした。


 王太子殿下の手を煩わせるわけには。と断られそうだったが、何とか説得して手当てをさせてもらった。

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