EP10
翌朝、領主館の裏手側にある、鍛錬場に来る。
ここも、やはり一部崩れていたりと、影響を受けているが、問題なく使えそうだ。
(まずは素振りからかな)
そう考えて、レオンハルトの記憶を頼りに素振りをする。
「1.2.3.4…1.2.3.4…」
こう言うのは集中するのがいいのだろう。
ただ無心に剣を振る。
しばらく振り、フッと意識が戻ってくる。
そして次は、レオンハルトの記憶にある型を試してみる。
流石は王太子、色んな武器の使い方を知っている。
いや、身体が覚えているという感じか。
だけれど、それを実行しようとすると、上手いこといかない。
「よっす!レオンハルト!」
「うわぁ!?」
いきなり目の前に飛び出てきたので、驚いて振ろうとした剣を引く。
「お前は……」
飛び出してきた人物の顔をよく見て名前を思い出す。
「アーノルド……」
アーノルド・ヴァン・ランドレイン。
ルークともう一人の幼馴染だ。
ルークは次男坊で比較的自由なため、レオンハルトの側仕えとして近くにいたが、アーノルドは嫡男ともあり、母親を幼い頃に亡くして、唯一の跡継ぎなのであまり自由がなかった。
その反動か否か、とても自由人で飄々としていてとても軽い。
「お久しぶり〜元気してた〜?」
「久しぶりだけど、君は……ほんとう、危ないじゃないか……」
その態度と妙な懐かしさを感じて、ここでは人の前では無理して被っていた王太子としての皮が剥がれてしまう。
(多分、レオンハルトの記憶の影響だろうけど……)
「わりぃ!にしてもどうしてここにいるんだ?」
「あれ?お父上からは聞いていない?」
「あんのクソ親父、敢えて黙ってやがったな?覚えてろよ……」
「それで、一昨日昨日と一体何処に……あぁ。支援か」
「おお。流石は王太子殿下。ご明察。まぁ、俺はたまに外に出て獣狩りしてくるだけだけどな!」
「なるほど」
「それで?どうしたレオン?ショートソードはそんな振り方しないだろ?力み過ぎだ。もうちょっと力を抜いて、身体の近くで使うはずだ。お前らしくないな?」
「え?あはは。久しぶりで間違えた」
「ふぅ〜ん。じゃ、俺と模擬戦してもらおうか」
「望むところだ」
「じゃ、相手からどこでもいいから1本取ったら勝ちだ」
「分かった」
互いに木の剣を持って少し離れて、構える。
「お前……構え方も変わったのか?」
「え?」
剣を身体の前に構えている
(これ、剣道だと、中段の構えって言ったっけ……)
「まぁ良い。じゃ始めるぞ!」
アーノルドから攻撃を始める。
右振りをしてくるので、軽く受け流す。
そのまま自分は振り降ろす。
アーノルドはすぐに剣を引き込め、それをガードする。
「……力つよっ…!?」
カンッ!!と良い音が響き、アーノルドの剣が軽く弾かれる。
「でも、力みすぎだと言ったぞ?だから胴体がガラ空きだ」
アーノルドは弾かれた反動を利用してそのまま突きをしてくるので身体をずらして避けた。
けれどちょいっと軌道をずらして攻撃してきた為、脇腹に当たる。
「……なっ」
「こういうことだよ。あまりにもレオンハルトにしてはお粗末すぎる。お前……本当にレオンハルトか?お前の正体を言え。場合によってはここで殺す。大丈夫。父上には偽物で悪意があったから殺したと伝える」
強い圧を感じる。
(これは完全に疑われているね……)
剣を捨て、両手を上げる。
「実は……」
ここまで経験してきたこと、自分の正体、レオンハルトの行方などを話す。
「そうか……レオンハルトは……」
「黙っていたいわけじゃないんだけど、信じられない話だろうからね……」
シン……と場が静まる。
「うん。分かった。信じるわ」
「え?」
あっさり信じてくれることに驚く。
「レオンがお前に、ハルトに身体を託すというのならそうなんだろう。それに、ルークがそれを理解している。というのなら安心出来る。あいつは俺以上にレオンのことを知っているからな。なんてったって側仕えだからずっと近くで見ているからな!」
「だとしてもなんかおかしくない!?ルークいないよ!?ここに」
「勘だよ。勘。嘘をつくならそんな堂々と言えねぇっての」
「えぇ……」
なんかこっちがモヤモヤするが気にしないのが正解なのだろう。
「よし。分かった。ハルトに付いていく」
「はい?ここの復興は大丈夫なの?」
「大丈夫。大丈夫。あのクソ親父に任しとけば大丈夫だっての。それに……道。開通するんだろ?」
「まぁ、時間は掛かるだろうけど坑道は開通できたからね。他の道も開通するのは時間の問題だと思うよ」
「なら大丈夫だって。聞くにこの街は人的被害が少なかったからな。職人の街だぞ?人数いればすぐに直るって」
「そういうものなのかなぁ……」
「そういうもんだ。じゃ、分かったら受け取りの時間まで一緒に稽古するぞ。そのメドゥーサとやらと戦わせるまでに、身体が覚えている動きと考えている動きを一致させようか」
「えぇ……まぁいいや……」
それから夕暮れ時になるまで一緒に稽古をした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、夕暮れ。
兵士に案内を頼もうとしたら、アーノルドが案内すると言ったので、お願いする。
「ハル……殿下、目的の鍛冶屋はここになります」
「助かった。ここで待っていてくれ。私1人で行ってくる」
2人きりだと軽いが、人が見ているとしっかり貴族の嫡男としての立ち振る舞いをする。
カチャっとドアを開けてなかに足を踏み入れる。
「いらっしゃいませ。あっ王太子殿下!目的のものは完成しているでっせ!!」
「おぉ。ありがとう。助かった」
「これでさぁ。鞘はおまけです」
そうして差し出されたのは鞘にしっかり入った剣と、しっかり光を反射し、自分とその後ろが映る盾だ。
受け取ろうとして、ここでハッと思い出す。
(そうじゃん!お金!持ってない!)
無一文なのを思い出す。
王太子なのに、お金が無くて受け取れないなんて笑いものでしかない。
「あ……」
「お代は結構でっせ。こんな状況じゃ、お金をもらっても使う場面がないですからな!それに、王太子殿下からは受け取れねぇよ。我々の生命線でもある坑道の開通の立役者ですからな。恩人からは受け取れねぇですよ」
「そ、そうか。それなら遠慮なく頂こう」
そういって、剣と盾を受け取る。
気前のいい職人に感謝しかない。
「非常に助かった。ありがとう」
「いい、いいんでさ!王太子殿下も頑張ってくれさ!!」
「あぁ」
そう返事をして、外に出る。
「殿下、目的の物は受け取れましたでしょうか?」
「あぁ。受け取れた。これだ」
剣と盾を示す。
「それは良うございました。では、領主館へ戻りましょう」
2人で戻る。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、翌朝。
「ギセロス殿。本当に助かった」
「いえ。こちらこそ、道開通のご助力ありがとうございました。あとは私目にお任せを」
「あぁ。貴殿ならこの街をしっかり復興できると信じている。そして……本当アーノルドを、大事な嫡男を、連れて行ってもよろしいのだろうか?」
「えぇ。是非愚息を連れて行って下さい。こやつを少々閉じ込め過ぎてしまいましたからな。そろそろ自由に行動させてやるのも良いのかもしれません」
「分かった。では、大事な嫡男を預からせてもらおう」
「お願いします。殿下。ご迷惑をお掛けしたら厳しく躾けてやって下さい」
「ハハッ。では、また。貴殿のご健康を心より願っている」
「殿下も健康で頑張ってください。ありがとうございました」
そう会話して、街に背を向ける。
「あんのクソ親父言いたいことズケズケ言いやがって。覚えてろよ」
「まぁまぁ。あれでも親としてはとても心配してると思うよ」
「んなことわかってるての。でも言わなくてもいいことを言いやがるから腹立つんだよ」
「じゃあ、次に会うときは元気な姿を見せてあげないとな」
「あのなぁ……はぁ……まぁいい……」
本番はこれからというのに、まるで緊張感がない会話。
でもこれくらいで良かったのかもしれない。
そして、来た場所と同じ、グレストからは良く見えないところで変身する。
(やっぱりこの痛さには慣れる気がしない)
今回もやはりと言うべきか、とても身体中が痛かった。
「おぉ!!それが竜の姿か!?」
「うん。背中に乗って」
しゃがんで、乗せやすいようにする。
「おう!」
ルークは優しく乗ったが、アーノルドはワクワクを隠しきれない感じでズシッと乗る。
「おぉっ!高いな!」
「じゃ、飛ぶよ!しっかり捕まってて!」
「分かった!」
そう言ってルークが作ってくれたロープをしっかり握る。
「出発!!」
待っていろメドゥーサ。
待っていてルーク、ジェイクさんたちサイドベールの人々。
必ず、決着をつける!!!
そう決意を新たに飛び立つ。
ランドレイン領グレスト編一旦完結!




